ひさびさに友人たちと集まって、本当に美味しいものを食べたい
2020年11月から続いていた飲食店の利用人数や滞在時間などの制限が2022年5月22日で終了し、都内の飲食店の9割を占める認証店では制限がなくなる。ひさびさに友人たちと集まり、美味しい物を食べたいと思っている人は多いだろう。そんな人にぴったりのお店を紹介したい。
“世界一の朝食”を求めてハリウッドセレブも通う「bills」を始め、時代の最先端を行くスタイリッシュなレストランやカフェを数多く運営しているトランジットジェネラルオフィス。同社が旗艦店として2020年9月「丸の内テラス」にオープンした「THE UPPER(アッパー)」だ。
とはいえ、「パンケーキで有名なbillsなら知っているけど、その店の名は聞いたことがない」という人がほとんどだろう。それもそのはず、同店がオープンしたのはコロナ禍の真っ最中で、オープン後はほとんどまともに営業ができない状態だったのだ。その「THE UPPER」がついに満を持して、再始動するという。同店は9階と10階の2層で構成されているが、2022年7月に9階をグランメゾンのフレンチレストランとしてリニューアルオープン。10階のカジュアルレストランフロアではひと足早く、メニューをこの5月から一新していると聞き、さっそく訪れてみた。
9階のインテリアは「静寂」、10階のインテリアは「活気」がテーマ
9階エントランス。9階は7月から、フレンチのグランメゾンとしてリニューアルオープンする予定
店内インテリアを担当したのは、オーストラリア・シドニーを拠点に、世界的に活躍するデザイン事務所「Luchetti Krelle」で、9階は“静寂”をテーマにと活気”をテーマに、都会の喧騒を忘れられるような落ち着きのある自然素材とダークカラーを基調にした静謐あるエレガントな空間に。10階は“活気”をテーマに、太陽の光が降り注ぐ明るいテラスへと続く開放的な空間を活かし、上質でありながらもモダンで軽快な印象にしているという。
“静寂”がテーマの9階バーコーナーは、天井まで伸びるバックバーが圧巻
“活気”をテーマにしている10階 レストランフロアは、太陽の光が振り注ぐ開放的なテラス席を含む約120席の開放的な空間
あの高田シェフのお料理が、一皿千円台で堪能できる!?
10階レストランのメニューを監修しているのは、フレンチ界で快進撃を続けている大阪「La Cime」の高田裕介シェフ。「Asia’s 50 Best Resaurant 2022」で6位にランクインし、2020年にはアジア圏内のシェフが選ぶ最高の料理人の称号である「シェフズ・チョイス賞」も受賞した注目のシェフだ。今提供しているのは、その料理の原点であるフランス “ブラッスリーメニュー”だという。
高田シェフは、日本のブラッスリー料理はお洒落で見映えはいいけれど、自分がフランスに渡った当時、心から感動したスタンダードで飾り気のない料理を提供する店がひとつもないことに、以前から物足りなさを感じていたという。そこで、日本人好みにアレンジを加えることなく、本場フランスの現地さながら、大衆的かつカジュアルな料理を提供したいと考えたのが、今回展開しているメニューだ。
「THE UPPER」のパートナーシェフとして、料理の監修をしている大阪「La Cime」の高田裕介シェフ
びっくりするほどリーズナブル価格!アラカルト中心なので、ドリンクと前菜だけでもOK
この高級感あふれる空間と高田シェフのキャリアを考えると、「カジュアルと言っても、それなりにお高いんでしょう?」と身構えてしまうが、メニューを見るとコースではなくアラカルト中心なのでひと安心。しかも最も多いのが千円台という、本当にカジュアルな価格で驚く。前菜は千円台が中心で、さすがにメインは3000円以上だが、2~3人でシェアすることを前提としているボリュームなので、本当にリーズナブル。ランチタイムの平均価格帯は3~4000円前後、ディナータイムでも6~7000円前後だという。
ワインのおともにぴったりのアミューズ「クジェール(チーズ風味のシュー)」750円(※税込み、以下同)
おすすめマークがついている冷たい前菜のひとつ「パテ・ド・カンパーニュ(田舎風パテ)」(1600円)は、いかにもブラッスリーらしい素朴な味わい
「サラダ・ニソワーズ(ニース風サラダ)」は、1人ならこれだけで軽いメイン料理になりそうなボリューム。よく見るメニューだが、さすが本場そのままの味にこだわる高田シェフの監修だけあって、塩味と酸味がそれぞれにきりりと立って主張する印象深い一皿に仕上がっていた。
ブラッスリーらしい冷製前菜「サーモンのマリネ」(1700円)上質なサーモンをスパイスや塩胡椒をはじめ、魚介と相性が良いハーブ、ディルでマリネしている
温かい前菜でおすすめマークがついている「シュークルート アルザス風」は、フランス南西部の伝統的な豚肉のソーセージ、チーズでたっぷりと風味を付けたジャガイモピュレ、それにザワークラフト、豚バラ肉コンフィという、メインに匹敵するボリュームの盛り合わせだ。ビッグサイズのソーセージは、ソーセージのイメージを覆す肉肉しさと濃厚さ。ジャガイモのピュレとの相性が抜群で、止まらなくなる美味しさだ。
盛り上がること間違いなしの、ダイナミックな「鮮魚のムニエル」
頼んだら絶対に盛り上がるのが間違いなしなのが、「鮮魚のムニエル・ブールノワゼット」。魚のムニエルというと、小ぎれいに盛り付けられた上品な料理をイメージするが、皿からはみ出てしまいそうなビッグサイズ。そしてそんなビッグサイズのムニエルが“浸っている”ほどたっぷりの焦がしバターソース。この気どらないダイナミックさが、本場ブラッスリーの醍醐味なのだろう。
メイン料理のひとつ、カスベの淡白な味わいとともに、香ばしい焦がしバターとケッパーの酸味を効かせたソースで構成する「鮮魚のムニエル・ブールノワゼット」(3500円)
ブラッスリーらしい素朴なスイーツも、東京スタイルの洗練されたスイーツも
「ババ・オ・ラム」(900円)は、ラム酒が染み込んだクラシックなブラッスリーデザートの定番
デザートの「ババ・オ・ラム」は、ラム酒をたっぷりしみ込ませたブリオッシュ生地に、こだわりぬいた超濃厚生クリームと、瓶ごとのラム酒が添えられている。自分の好みの量のラム酒を好きなだけかけて、デザートと食後酒の両方を楽しめてしまうというフランスらしい発想だ。
「素朴なお料理もいいけど、東京スタイルの洗練されたスイーツも好み」と言う人はぜひ、「東京モンブラン」を注文して欲しい。ドーム型のメレンゲは、口に入れた瞬間に溶けて消え、淡い甘みだけが残る。そして中に仕込まれているのは、和栗のペースト。
そこまでは予想範囲内だが、この和栗のペーストが、隠し味というにはあまりにキックのきいた、塩味なのだ。メレンゲのはかない甘み、和栗の力強い風味と、予想外の甘じょっぱさ…。一度食べたらクセになりそうな強烈なモンブランだ。
フランスでも、ブラッスリーの原点回帰がトレンド
「実はフランスでも、こういうブラッスリーの原点回帰のような料理を提供するレストランが増えているんです。ここで本場そのままの味を知っていただくことで、東京でもそんな店がこれから増えて行けば嬉しいですね」(高田シェフ)。
この店のオープン時のテーマは「旅」だという。まだ海外には旅行しにくいが、この店を訪れてフランスを旅している気分に浸ってみてはいかがだろう。
アラカルトで構成されている「THE UPPER」のランチメニュー。特におすすめのメニューには、鶏のマークがついている
「THE UPPER」のディナーメニュー。前菜は1300円からで、前菜+メイン+カフェで4000円のコースもあり
「THE UPPER」
住所:東京都千代田区丸の内1-3-4 丸の内テラス 9F 10F
営業時間:火-土曜日:11:30-23:00 (ランチLO 15:00 ディナーLO 21:30) 日曜日:11:30-17:30
定休日:月曜日
文/桑原恵美子
編集/inox.