『テンペラ』と聞いて、どんなものかすぐに説明できる人はあまり多くないかもしれません。
テンペラとは、中世イタリアより伝わる伝統的な絵画技法のこと。今回はそんなテンペラ技法を用いて描かれた作品をご紹介します。
SNSで称賛の声を集めた、美しきテンペラ画の世界をご覧ください。
卵の黄身を使った古典技法『テンペラ』で絵を描き続けるアーティスト
時を越えるテンペラ画の世界
テンペラ画は、卵黄などの乳化作用を持つ物質と顔料を混ぜ合わせた絵具を用いて描かれます。
鮮やかな発色と劣化の少なさが魅力で、なんと数百年ものあいだ色褪せず美しさが続くものもあるのだとか。
実際、「ヴィーナスの誕生(サンドロ・ボッティチェッリ作)」など数多くの著名な絵画作品がテンペラで描かれ、今も鮮やかに残っているといいます。この輝きが数百年後もそのままの形で残っているのだと思うと、なんだか一層神秘的に見えてきますよね。
テンペラという耳慣れない技法で表現された絵の圧倒的な美しさは、SNSで見かけた人々を虜にしていたのでした。
テンペラと銅版画
テンペラ画の作者は三浦 康太郎(@miura_kotaro)さん。「刹那・永遠・天体・神話」などの世界観をモチーフに作品を制作しているアーティストです。
様々なモダンな技法があるなかで、「卵黄テンペラ」と「銅版画」という2つの古典技法にこだわり、創作活動を続けている三浦さん。その理由についてお伺いしたところ、こんなお答えをいただきました。
「ギャラリーに勤めていた頃、たくさんのアートやアーティストに出会い、2つの技法ともその時に巡り合いました。古い物が内包している時間の蓄積と余韻…そんなところに強く惹かれます。」(三浦さん)
もともと前職で家具の修復をしていた事もあり、物が溢れ、使い捨てられる現代社会にかねてより違和感を感じていたのだそう。
「テンペラも銅版画も遥か昔から大切にされてきた技法で、先人達の膨大な知恵と努力の結晶です。そんな技法に触れる時、彼らが向き合っていた尊い時間、想いを工程から感じます。モチーフもやはり昔の人々が想像したことや思い描いた世界なのですが、今より遥かに情報がなく、世界が平らだと考えられていたり、星座の物語があったり…その自由な発想は夢に満ちていると感じます。」(三浦さん)
そんなテンペラや銅版画との対話は、不便だからこその心の豊かさ、自由に想像する事の喜びを思い出させてくれるのだと語ってくれました。
■MIU.ART(@miura_kotaro)さん
刹那、永遠、天体、神話、錬金術、古等の世界観をモチーフに中世イタリアより伝わる古典技法の卵黄テンペラと銅版画を中心に制作しています。
■ツイッター https://twitter.com/miura_kotaro
■インスタグラム https://instagram.com/miu.art/
■YouTube https://youtube.com/c/MIUART
■ウェブサイト https://miupaint.base.shop
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.