少年たちを襲った“殺人ピエロ”として日本でも有名な、犯罪者ジョン・ウェイン・ゲイシーの異常な心理に迫る。
2022年4月20日より独占配信中の『殺人鬼との対談: ジョン・ウェイン・ゲイシーの場合』は、アメリカで製作されたドキュメンタリー。
ザック・エフロン主演で話題となった映画『テッド・バンディ』、Netflixのドキュメンタリー『殺人鬼との対談: テッド・バンディの場合』なども手掛けたジョー・バーリンジャーが制作。
あらすじ
1970年代後半、イリノイ州シカゴでは少年が行方不明になる事件が多発。
容疑者として浮上したのは、ジョン・ウェイン・ゲイシーという30代の男性だった。
捜査が進むにつれて、ゲイシーは少年たちを誘拐後、おぞましい方法で性的虐待した末に殺害していたことが判明する。
シカゴ郊外で建設会社を経営していたゲイシーは、地元の民主党選挙区幹事や青年会議所の牧師も務めるなど、地元の名士としても知られていた。
そして地元のパーティーやイベントなどでは、ピエロの格好をして子どもたちを楽しませていた。
勤勉で社交的で面倒見が良かったゲイシーは、なぜ猟奇的な殺人事件を起こしたのか。
刑事裁判が行われる前の1979年11月から1980年4月にかけて、弁護団のひとりがゲイシーへのインタビューを行った。
これまで未公開だった肉声テープや関係者への独占取材などから、“殺人ピエロ”の正体と動機に迫る。
見どころ
驚くべきことに、ゲイシーは既婚者であり一男一女の父親でもあった。
最初の妻と離婚した後も、別の理解ある女性と出会って再婚していた。
妻や子どもたちとの家庭生活を振り返り、「穏やかで温かい気持ちだった」「幸せだった」などとゲイシー本人が語っている音声データも残っている。
ゲイシーが妻と幼い子ども達を愛していたことは、紛れもない真実だろう。
一方で、実父や義父との間では、常に問題を抱えていた。
ゲイシーの周りの年配男性たちは、彼を罵倒し暴力をふるい、“過度な男らしさの押し付け”を行ってきたのだ。
そしてゲイシーが恐ろしい本性を剥き出しにするのは、決まって“自分よりも弱い立場にいる若い男性”だった。
経営していた建設会社では経験の少ない若い男性ばかりを雇い、「私は彼らにとって父親のような存在だった」と言ってのけた。
周囲の目には“未熟な若い人材を育成する面倒見の良い社長”と映っていたのかもしれない。
しかし実際には、自分よりも弱い男性を支配下に置くことによって、力を誇示していたのだ。
ゲイシーが経営や政治活動やボランティアに精力的だったのは、元来の努力家でストイックな性格だけでなく、幼少期に期待されていた“男らしさ”“強さ”を獲得して見返すためでもあったのだろう。
しかし深すぎる心の傷は、時が経っても成功しても、簡単に癒えるものではない。
もちろん辛い過去があるからと言って、無関係な人間を傷つけて良い理由にはならない。
しかし彼がもっと早い段階で自身のトラウマを自覚し、自身の弱さを否定することなく受け入れた上で適切な治療を受けていれば、何の罪もない少年たちを傷つけてしまうことはなかったのではないだろうか。
Netflixシリーズ『殺人鬼との対談: ジョン・ウェイン・ゲイシーの場合』
独占配信中
文/吉野潤子