2005年に株式投資を始めてから、生涯の獲得利益が50億円を超えるテスタさん。岸田政権誕生以降、株式市場には逆風が吹いているものの、今年だけですでに6億円ほど儲かっているという。どうやって難局を乗り越え利益にしたのか、また今後の相場をどのように見据えているのか。
コロナが収束してもUberは使うし、リモート勤務もなくならない。
個人投資家 テスタさん
2005年に300万円を元手に株式投資をスタート。主にスキャルピングで利益を上げ、投資歴6年目で億トレーダーに。2016年からは中長期投資も始める。株の生涯利益は50億円以上に達する。
岸田政権の政策は逆風……相場に合わせた対応が必要
21年は日銀のETF買い入れ基準の変更があったり、日経平均が3万円を超えると重たくなっていた中で10月に岸田政権に代わり、投資家の税金を上げる「金融所得課税の強化」を打ち出すなど、株式市場にとっては逆風が吹いています。
株主配当ではなく、従業員への給与を引き上げた場合に優遇税制を行なう案も、株式市場にとってはマイナス要因。配当をもらっている人よりも給与をもらっている人のほうが多いわけだから「株主配当を給料に回しましょう」と言われれば支持率が上がるのは当然ですよね。この政策は進むと思いますので、株式相場や個人投資家にとってはこれも向かい風です。
今の支持率やそういった政策を見るに、岸田さんは長期政権になると予想しています。それが継続する限りは株価が強く上がっていくイメージはあまり持てず、個人投資家にとっては難しい相場が続くのではないかと見ています。
でも、だからといって株価が絶対に上がらないわけではないし、僕らのような専業投資家は難しい相場だから負けてもいいとはならない。相場に合わせて「売りから入る」など、何かしら考えながらやっていかないといけません。
僕も3月には1日で1億円以上減った日もありましたし、4月には最大8連敗もして累計で1.6億円の負け(確定損)も経験しています。でも、ありがたいことに今年になってからの約4か月の累計では6億円ほどのプラスで、生涯利益は現在50億円以上に増やし続けることができています。
日本郵船の配当利回りから個人投資家の行動を予測
こういう相場環境の中、2~3月にうまくハマった戦略は「個別株の買いと日経平均の売り」です。強い個別株は買いで入るけれど、相場全体が下がるリスクは前よりも高いと思ったのでそのリスクを取らないよう、日経225先物ミニを売り建て(※1)することで相場全体の下落をヘッジしようという考えですね。
2月3日、日本郵船や川崎汽船に好決算の発表がありました。特に増配も発表した日本郵船の株価は上がり、3月中旬まで海運株全般が強く上昇。一方で日経平均は弱かったので、日本郵船を約10億円、川崎汽船を約10億円買って、日経225先物ミニを600枚、約20億円分をショート(売り建て)する「海運株買い・日経平均売り」戦略は非常に有効でした。
日本郵船は3月10日頃にすべて利益確定したのですが、僕が保有していた1か月半ほどの期間で日本郵船は20~30%ほど上がって、日経平均は最大3000円ほど下がったんです。僕は途中で利益確定しながら、トータルで4億~5億円くらい儲かりました。
投資期間を特に決めているわけではなくて、今回1か月半程度のスイングトレード(※2)になったのは結果論でしかありません。買ったその日に売ったらデイトレ(デイトレード)になっていたし、長期で持っていたら長期トレードになるというだけ。同じ銘柄でも、長期的に持っているポジションもありながら短期で売ってしまうポジションもありますし、中長期で買って持ちながら一時的にショートすることもあります。
日本郵船は「1万2500円くらいまでは上がるんじゃないか」と予想して、実際1万2490円まで上がり、高値付近で利益確定しました。日本郵船は期末配当だけで1000円という増配を発表していたんですよね。この時の株価はだいたい1万円だったので、配当利回りは10%。さすがにこの高配当なら買われるだろうなと。仮に株価が1万2500円まで上がると配当利回りは8%になるので、1万2500円をひとつの高値水準として見ていました。
それに2月に増配が発表されて、3月末までの「約2か月で利回り10%」という捉え方もできるので、2か月で10%もらえるとしたらみんながどういう動きをするか、市場がどう判断するか、株価はどう動くかを考えたら、少なくともこの2か月は強いんじゃないかとも思いましたね。配当がもらえる3月末の「権利付き最終日」に向けて、配当狙いの買いも入ってくるだろうという考えもありました。
なぜこういう予測ができたかというと、僕は配当狙いの口座も持っていて、ずっと株価と配当利回りの関係を見てきたから。昔は3~4%で高配当株っていわれていましたが、最近は業績に不安があると思われる銘柄では、配当利回り6~7%のものも増えてきています。そういう下地がある中でも、配当利回り10%は突出して高いから、買いたい人は多いんじゃないか? 株価が上がって配当利回りが7%くらいになってきたら、今度は日本郵船のお得感や優位性はなくなるから、8%くらいが上限では? と予想しました。
別の何かに置き換えられていないか、という視点
今後の見通しについては、「コロナが落ち着いたら元に戻るのか」という点に注目しています。すでにコロナ前よりもよい業績を取っている会社もある一方で、徐々に〝日常〟を取り戻しているのに全然回復してない会社もある。ここが分かれ目になるんじゃないかと思っています。
全く回復してないところはもう単純に顧客が離れてしまったとか、何か違うものに置き換わってしまったことが考えられます。
例えばコロナ禍で自宅で食べたりお酒を飲んだり出前を頼む習慣ができましたよね。仮にコロナ禍が完全に終わったからといってその習慣がなくなるかというと、たぶんそうではない。Uber Eatsや出前館はやっぱりみんな使うし、家で食べたり飲む機会はコロナ前より増えますよね。
リモート勤務もオンライン会議も、たぶんなくならない。コロナが落ち着いてくれば今よりは海外に行きやすくなって「リベンジ消費」は一時的には盛り上がるかもしれません。でも、これだけリモートが当たり前になったら国内の出張需要はもう戻らないし、航空業界がどんどん成長していくようなイメージは持てないですね。どうしたってコロナ禍の影響を受け続けざるを得ない業界はしんどいと思います。
コロナが終わったらすべてが元に戻るのではなくて、元に戻る業種と元には戻らない業種があって、その選別が大事になります。
客が取られていない業界としてはカラオケに注目しています。密になるし、コロナの影響をすごく受けましたよね。でも、カラオケって家ではできないし、やっぱりカラオケしようとなったらお店に行くしかない。だから、コロナを本当に誰も気にしなくなったら、ほぼ以前と同じ数字に戻せるようになる業界だと見ています。
「家ではどうやってもできないかどうか」「代替品がないか」という視点を持って考えるといいんじゃないかなと思います。
絶好調の海運株で+4億円超!
2月3日に上方修正と増配を発表した日本郵船。1か月半で9000円台から1万2490円まで上昇。テスタさんはドンピシャで的中させ、4億円以上儲かった。
テスタが2022年下半期に注目する業界
●カラオケ
コロナで大ダメージを受けた業界。カラオケするならお店に行くしかなく、コロナが落ち着けば元に戻りそう。
●航空
コロナが終息してもリモート勤務やリモート会議はなくならない。出張需要は戻らず、航空業界は厳しいのでは。
【テスタの2022年下半期資産運用プラン】
岸田政権の政策は株式市場にとって逆風。相場に合わせた対応が必要。コロナが落ち着いたら需要が戻るかに着目。
※1/価格が下がった時に利益が出る注文方法。 ※2/数日から数週間単位で売買すること。
取材・文/向井翔太
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文/DIME編集部