行動範囲がグンと広がる今夏、フェスや旅行などすでに多くのイベントが控えているビジネスパーソンも多いことだろう。
もし、スケジュールにまだ余裕があれば、家族や仲間と一緒に楽しめる今話題の『フォトロゲ』を加えてみてはいかがか?
安全に、初心者でも参加しやすい『ロゲイニング』を目指して
『フォトロゲ』とは、オーストラリア発祥の『ロゲイニング(またはロゲイン)』をルーツに持つ日本発のナビゲーションスポーツ。
『フォトロゲイニング』や『フォトロゲイン』とも呼ばれ、2009年から今日まで全国で大小様々な大会が開催されている。
そもそも『ロゲイニング』とは、コンパスと地図を用いて指定されたチェックポイントをまわりいかに多く得点を獲得するかを競うもの。参加者は、チェックポイントの通過証明として電子カードを用いるケースが多い。
競技は主に山、森林、高原などの自然の中で行なわれる。決まったルートはなく体力も読図力も求められるため、初心者にはなかなかハードルが高いスポーツなのだ。
そこで、初心者でも参加しやすいよう安全なルート、かつ手間のかかる電子カードの通過証明に代わって、デジカメで撮影した写真を通過証明に採用したのが『フォトロゲ』というわけ。
大会の運営は、主に日本フォトロゲイニング協会が行なっているが、近年は地方自治体が主催する大会なども増えてきている。
チームで立てる作戦が上位入賞のカギ!
『フォトロゲ』は地図をもとに、時間内にチェックポイントを回り、得点を集めるスポーツだ。
コースは山や森だけじゃなく、街の歴史的建造物や温泉地を巡るものなど、各地で個性的な大会も開催が予定されている。
参加者には、スタート前に地図とチェックポイント一覧が配られるので、まずはチームごとに作戦を立てよう。
作戦タイム終了後にスタート、チェックポイントでは見本と同じ写真を撮影することを忘れずに。
チェックポイントの数字がそのまま得点となり、より合計点の高いチームが上位となる。ランニングでも、ウォーキングでもOKという、このユルさが初心者にはありがたい。
お約束は、制限時間内にチーム全員で揃ってフィニッシュすること。
フィニッシュ後は、回った結果をスコアシートに記入(またはスマートフォン集計システム「フォトロゲレポーター」でスコアを送信)する。また、スタッフによる写真の確認を行なうことも。
集計が終われば、晴れて表彰式へという流れだ。
『フォトロゲ』ではチェックポイントはすべて回る必要はなく、回る順番も自由。時間内に、自分たちのペースで可能なポイントを選んで回ることができる、あらゆる世代に対応したスポーツなのだ。
参加者が用意するものは、
・デジカメ(チームで一台)
・携帯電話(緊急連絡用)
・筆記用具
さらにあると便利なのがコンパス(大会によってはレンタルもあるそうだが、参加を機に手に入れよう)、万一に備えて食料や防寒着なども用意しておきたい。
『フォトロゲ』を通じてビジネススキルも向上!
この『フォトロゲ』をより多くの人に楽しんでもらおうと、2012年に日本フォトロゲイニング協会を設立したのが、伊藤奈緒さん。
実は、過去に運動が苦手だったそうで、ジョギングを社会人になってから始めたという伊藤さんに、『フォトロゲ』のあれこれを聞いてみた。
——ずばり『フォトロゲ』一番の魅力は?
自分でルートを選べることです。「地図をもとに、時間内にチェックポイントを回り、得点を集める」というルールはありますが、制限時間内はどういう動きをしてもいい。
計画を着実に進めるのも、ぶらぶら寄り道するのも自由です。多様な参加者を受け入れるのが『フォトロゲ』です。
——ようやく大会も開催できるようになり、参加者も増えているのでは?
開催してくれてありがとう、と言われることが増えましたね。『フォトロゲ』は少人数のチームで行動するので、密になることは避けつつ、イベントの参加者全体と「同じ日に同じ場所に行った」という思い出を共有することができます。
特に2022年になってから、社内イベントや修学旅行での採用が増えています。
——人が集まるイベントとして、地方自治体も興味を持たれているのでは?
自治体の要望で一番多いのは、町の名所を知ってほしいということです。一方で、新型コロナ対策は十分に行う必要があります。
そこで、入退場を時間差にする「分散スタート」や、「スマートフォンを使った集計システム」を運営に取り入れました。その結果、運営の負担も減り、コロナ前より募集規模を拡大する大会も出ています。
——チームで行動してゴールを目指す、ビジネスパーソンにピッタリなスポーツですね
『フォトロゲ』は、計画・実行・修正 の繰り返しです。特に計画(スタート前の作戦タイム)は、ビジネスにも通じるものがあります。
まずは「制限時間内に自分がどれだけ動けるか?」を考えます。それが10kmなら、今回のマップで「10kmのルートが何通りあるか」を見つけます(実際には高低差も影響します)。最後に「各ルートで得られる得点」と「リスク」を検討します。
得点はもちろん高い方がいいですが、途中で柔軟にプランを変えられないルートだと、時間が余ったのに行けるチェックポイントがないとか、遅刻で大幅減点ということになりかねません。こういうシミュレーションを、制限時間のなかで一気に体験できる、繰り返し体験できるのが『フォトロゲ』の醍醐味です。
——初心者が陥りがちなミステイクは? 完走のコツは?
地図に書いてあるけど目に入っていない、ということが初心者にはしばしばあります(老眼もありますが……)。情報を読み取る解像度を上げる、というのが大切です。経験者はルーペを持参することもあります。
また、地図読みで使う「脳」を意識した栄養補給をしましょう。大会の終盤で急に方向感覚が狂って、道を間違えたりポイントを見逃したりすることがあります。これは脳みそのガス欠です。
——『フォトロゲ』を通して伊藤さんの目標は?
『フォトロゲ』を体験する機会をもっともっと増やすことです。それもただの観光写真スタンプラリーではなく、きちんとルートを選んで、戦略性を持たせられるような、正確な地図の大会を増やすことが目標です。
私はもともと超長距離のトレイルランニング、トランスジャパンアルプスレースという大会への参加をきっかけに、『フォトロゲ』の普及を始めました。地図読みを練習して、一人でいつでも好きな山に行けるのは楽しいですよ。
参加した方が、何かを得て新しい世界に卒業していくのも喜ばしいと思っています。
——伊藤さん、お忙しいところありがとうございました。
全国各地の『フォトロゲ』大会最新情報は、日本フォトロゲイニング協会のサイトにて掲載中。今年の夏の思い出作りに、ぜひ!
■取材協力/日本フォトロゲイニング協会
※『フォトロゲ』、『フォトロゲイン』、『フォトロゲイニング』は登録商標 です
■取材・文/nh+