USBの規格にはさまざまなバージョンがあります。USBケーブルを探している人は、規格について知識を深めるとニーズに合った1本を選べるでしょう。規格の種類やバージョンごとの転送速度、主流のコネクタ『Type-C』の特徴を解説します。
USBの規格や種類を知ろう
USBは、日常で使うさまざまな機器に使われています。しかし、ケーブルやコネクタを買おうと思ったとき、どれを選べばいいのか分からない人もいるでしょう。
機器や用途に合ったUSBケーブル・コネクタを選ぶには、USBの規格や種類についてある程度の知識を備えておく必要があります。
USB選びには知識が必要
USB(Universal Serial Bus)とは、PCに周辺機器を接続するための規格の一つです。USBポートの形状に合うコネクタを差し込めば、簡単に異なる機器同士を接続できます。
ただし、USBの規格には『USB1.0』『USB1.1』といったバージョンの違いがあります。バージョンによって転送速度・伝送距離・コネクタの形状が異なるため、注意しましょう。
例えば、伝送距離はUSB2.0なら5mまで・USB3.2(Gen1)は3mまでです。対応できる距離を超えて接続すると、動作に不具合が生じるかもしれません。
また、USBケーブルの種類には『充電専用』と『データ送受信用』があります。種類を間違えると、充電できない・データをやり取りできないなど、目的がかなわないでしょう。
USBケーブルを正しく選ぶには、パッケージに記載されている数値や用途を理解して適切に選ぶことが大切です。
規格のバージョンで変わるのは転送速度
USBの規格には多くのバージョンがあり、変わるのはデータの転送速度です。スペック表に記載されている表記の見方や意味、ポートとコネクタのバージョンが違っても使えるのかを確認しておきましょう。
「USB」の隣の数値に注目
『USB ○.○』という表記の中で、○○の部分に入っている数字が規格のバージョンを示しています。バージョンは1996年に登場した初代1.0から、2019年に発表された4まであり、数値が大きいほど新しく転送速度も速いのが特徴です。
USBは誕生以来数多くの改変が行われ、進化を遂げてきました。改変があるごとに『USB ○.○』と新しい数値に換わるため、さまざまなバージョンが存在しているのです。
注意したいのは、機器のメーカーの間で表記の仕方が統一されていない点です。例えば『USB 3.2 Gen 1』は『USB 3.0』、『USB 3.2 Gen 2』は『USB 3.1』と記載されていることがあります。
これは、もともとUSB 3.0やUSB 3.1とされていたものが『USB 3.2』という規格に統合されたためです。表記が違っても、両者の仕様に違いはありません。
こうした混乱を収拾するため、IT企業団でつくる規格管理団体『USB-IF』では、USB4以降は小数点以下の数字は付けないと表明し、USBという名称と数字の間に半角スペースを挿入しないという方針も決定しています。
古いバージョンとの互換性あり
USBの規格には、それぞれ下位互換性があります。ケーブルはコネクタの形状さえ合っていればよく、機器同士のバージョンが違っても使えない心配はありません。
ただし転送速度を気にする場合は、PCや周辺機器も同じバージョンでそろえることをおすすめします。USBの転送速度は、低い方に合わせられるためです。
例えば張り切ってUSB 3.0のケーブルを購入しても、PC側がUSB 2.0までしか対応していなければ、USB 2.0の最大転送速度しか出ません。
まずは機器側のバージョンをチェックし、それに合うUSBを選ぶことが必要です。
それぞれの転送速度はどれくらい?
USB規格のバージョンによって転送速度は異なります。それぞれのバージョンの最大転送速度がどのくらいなのか、詳細を見ていきましょう。
最大速度480Mbps「USB2.0」
最大速度480Mbpsとは、『ハイビジョンで撮影された約1時間分(約7.56GB)の映像を約2分6秒で転送できる』『約2G(写真約1000枚分)のデジカメデータを約33秒で転送できる』くらいの速度です。
日常使いには全く問題ありませんが、あくまでも『最大』である点に注意しましょう。最大速度480Mbpsと記されていても、実効値は250~300Mbps程度です。
USBのスペックを見るときは、実際は記載されている最大転送速度より少し劣ると考えてチェックすることをおすすめします。
最大速度5Gbps「USB 3.2 Gen 1×1」
『USB 3.2 Gen 1×1』は最大5Gbpsの高速通信に対応できるバージョンで、旧バージョンの『USB 3.1 Gen 1』『USB 3.0』と記載されることもあります。
最大速度5Gbpsでできることは、高解像度の画像データや、音声・動画データの大量一括転送です。ただしPCの性能が低い場合は、高い速度が期待できない可能性があることは覚えておきましょう。
対応するコネクタはUSB Type-A・microUSB・USB Type-Cです。USB 3.0バージョンの登場を受け、大容量・高速のデータ転送に適したUSB Type-Cへ移行する動きが顕著となりました。
PCがUSB3.0以降に対応しているかどうかは、ポートの中を見ると分かります。内部が青くなっていれば、USB 3.0以降に対応している証拠です。
最大速度10Gbps「USB 3.2 Gen 1×2」「USB 3.2 Gen 2×1」
最大速度10Gbpsという超高速の転送速度から、『Super Speed Plus』とも呼ばれます。『USB3.2 Gen2x1』も最大転送速度は変わりません。速度はUSB 3.2 Gen 1×1よりもさらに高速化し、スピーディーなデータ転送・充電が実現可能です。
対応コネクタは、USB 3.2 Gen 1×2はUSB Type-Cのみ、USB 3.2 Gen 2×1はUSB Type-A・microUSB・USB Type-Cとなっています。
USB Type-C仕様かつUSB PD(Power Delivery)に対応しているものなら、最大100W(20V、5A)の電源供給が可能です。スマホやタブレットだけでなく、高電圧を必要とするPCやディスプレイへの充電も可能になるでしょう。
超高速の「USB3.2 Gen2x2」「USB4」
USB 3.2 Gen2x2やUSB4 Gen3x1の最大転送速度は20Gbps、USB4 Gen3x2は40Gbpsです。それぞれ『USB 3.2 Gen 1×2』『USB 3.2 Gen 2×1』の2倍・4倍という高速を誇ります。ストレスのない超高速のデータ転送・充電が可能です。
ただし、新しいバージョンのケーブルを使っても、PCや周辺機器も同じバージョンでなければ超高速の恩恵を感じられません。10万円以下の低価格帯で探すと、USB 3.2 Gen2x2やUSB4に対応しているPCは極めて少ないのが現状です。
高スペックでUSB 3.2 Gen2x2やUSB4に対応しているPCを持つ予定がある人は、ケーブルもUSBの規格のバージョンをそろえて用意しましょう。
主流のコネクタは「Type-C」
USBは規格のバージョンごとに、対応しているコネクタの形状も違います。近年主流のUSBコネクタは『USB Type-C』です。どのようなコネクタなのか、他のタイプの特徴と併せて概要を見ていきましょう。
主なコネクタの規格
現在使用されているUSBコネクタには、主に以下のような規格があります。
- Standard-A (USB Type-A)
- Standard-B (USB Type-B)
- mini USB Type-B
- Micro-B
- USB Type-C
USB Type-Aは細長く四角い形状が特徴です。『USB』と聞いて多くの人が連想するのはこのタイプでしょう。
USB Type-Bは、台形のような形状です。外付けHDD・プリンターやスキャナーなどに多く使われています。mini USB Type-Bは携帯ゲーム機・Micro-Bはスマホなどに使われていましたが、現在はあまり見なくなりました。
そして最も新しいタイプが『USB Type-C』です。近年はPCだけでなくスマホや携帯ゲーム機など、身近にある電子機器に広く採用されています。
Type-Cの特徴や「Thunderbolt」との違い
USB Type-Cは上下どちら向きでも使える形状のため、コネクタの向きを気にする必要がありません。PCからゲーム機まで幅広いデバイスに採用されており、比較的新しい電子機器ならカバーできるものが多いでしょう。
『オルタネートモード』が搭載されている点も特徴です。オルタネートモードとは、USB規格外の信号をケーブル内に流せる機能を指します。これにより、『HDMI』『DisplayPort』などから情報を受け取ってディスプレイに出力できるようになりました。
なお『Thunderbolt3』『Thunderbolt4』はUSB Type-Cと形状は同じですが、別のものです。
Thunderboltとは、Intel社とApple社の共同開発によって生み出された高速データ送受信技術とその規格です。
Thunderbolt3・4のインターフェースを搭載している製品はUSB Type-Cと互換性がある一方で、USBのインターフェースを採用している製品は必ずしもThunderboltと互換性を持つとは限りません。
製品によって仕様は異なるため、対応の可否を確認しましょう。
USB PDに対応、スマホの急速充電も
USB PDとは、大容量の電力供給を可能にする規格です。PDに対応することにより、USB Type-Cの電力供給量は最大で100Wとなりました。
これにより、USB Type-Cでもスマホやタブレットの急速充電が可能です。60Wを超える電気を流せるケーブルも登場しており、スマホを急いで充電したいとき、非常に心強いでしょう。
またUSB PDには『ロールスワップ』ができるという強みもあります。これは、電力の供給側と受給側を入れ替えることです。デバイス同士をつなぐと、残量の多い方から少ない方に自動で電力が流れます。
デバイスの接続中に片方の電力がなくなる心配が少なく、電力供給を効率化できるでしょう。
構成/編集部