コーヒーを飲むとコレステロール値が上がる?
コーヒーを飲む習慣がある人、特にフィルターでろ過していないコーヒーを飲む人は、コレステロール値が高い可能性があるとする研究結果がこのほど発表された。
同研究では、1日数杯のコーヒーを飲む人のコレステロール値が、コーヒーを全く飲まない人よりもわずかに高いことが示された。
ただしこの差は、コーヒーの抽出方法により異なっていた。この研究はトロムソ大学(ノルウェー)のMaja-Lisa Løchen氏らが実施したもので、結果は、「Open Heart」に2022年5月10日発表された。
コーヒーには血中のコレステロールを上昇させ得る天然の油脂分が含まれている。
過去の研究では、この油脂分の量は抽出方法により異なってくるため、コーヒーでは抽出方法が重要となることが示されている。
例えば、フィルターを通さないコーヒーでは、挽いたコーヒー豆が熱湯に曝される時間が長くなるため、油脂分の含有量も多くなる。
Løchen氏によると、このような抽出方法の重要性を初めて示したのは、1980年代に報告された、ノルウェーのトロムソ研究(Tromsø Study)であるという。
その当時は、フィルターでろ過しないコーヒーの選択肢といえば、サイフォンなどを使って入れるボイルドコーヒーを指したが、現在はエスプレッソやフレンチプレス(プランジャー)で入れたコーヒーがろ過しないコーヒーとして人気である。
そこで、Løchen氏らは、トロムソ研究の最近(2015〜2016年)のデータを用いて、異なる抽出方法で入れたコーヒーと血中コレステロール値の関連について検討した。
対象者は、40歳以上の男女2万1,083人(女性1万1,074人、男性1万9人)で、調査時にコーヒーを飲む習慣や身体活動レベル、飲酒量などを報告していた。対象者の1日当たりのコーヒー摂取量は、女性で平均3.8杯、男性で平均4.9杯だった。
解析の結果、総コレステロール値の上昇度が最も高かったのは、ボイルド式のコーヒーまたはフレンチプレスで入れたコーヒーを1日当たり6杯以上飲んでいた人で、これらのコーヒーを全く飲まない人と比べて、総コレステロール値が男性で約8mg/dL、女性で約12mg/dL高かった。
総コレステロール値の上昇度が次に高かったのは、エスプレッソを1日に3~5杯飲んでいた人で、エスプレッソを全く飲まない人と比べて総コレステロール値は男性で約6mg/dL、女性で約4mg/dL高かった。
また、フィルターでろ過したコーヒーを1日に6杯以上飲んでいた人では、女性でのみ、フィルターでろ過したコーヒーを全く飲まない女性と比べて総コレステロール値が約4mg/dL高かった。男性ではコレステロール値の上昇は見られなかった。
Løchen氏は、「この研究結果は、フィルターでろ過しないコーヒーの摂取がコレステロール値に影響を与える可能性を示した先行研究の結果と一致している」と話す。
一方、この研究には関与していない米栄養と食事のアカデミー(Academy of Nutrition and Dietetics;AND)元会長のConnie Diekman氏は、研究対象者の全般的な食事内容に関する情報がないこと、コーヒーに砂糖やクリームを入れる習慣があったのかどうかが不明であることを指摘。
その上で、「コーヒーの摂取自体がコレステロール値に及ぼす影響は極めて小さい可能性が高い。コーヒーがコレステロール値に与える影響を心配するよりも、全般的な食事を見直し、健康的な生活行動を確立すべきだ」と話している。(HealthDay News 2022年5月11日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://openheart.bmj.com/content/9/1/e001946
構成/DIME編集部