
プログラミング言語の種類は多く、その数は200以上に上るといわれます。選ぶ言語によってできることや難易度が変わるため、プログラミング学習では最初の言語選びが重要です。人気・知名度の高いプログラミング言語について、特徴や習得難易度を紹介します。
おすすめのプログラミング言語を判断するには
プログラミング言語を学びたいときは、どのような点に注目すべきなのでしょうか?プログラミング言語の概要や言語を選ぶときのポイントを紹介します。
まずはWebサイトの仕組みを知ろう
Webサイトは、ブラウザ側でプログラムを実行する『フロントエンド』と、サーバー側やデータベース側でさまざまな処理を行う『バックエンド』という二つの領域に分けられます。
それぞれに求められるプログラミング言語は異なるため、担当したい分野の領域にどんな言語が必要なのかを知っておかなければなりません。
フロントエンドでは、ユーザーから見える部分の設計を行います。例えばWebサイトの見た目を整える、文字入力やクリック部分を設計する、サーバーとデータをやり取りする仕組みを作るといった開発はフロントエンドの領域です。
フロントエンド開発には主に、マークアップ言語であるHTML・CSSや、JavaScriptが使われます。
一方バックエンドは、データ処理やデータ保存など、ユーザーの目に触れない部分の処理を担当します。データベースの構築やデータ処理の仕組み作りは、バックエンドの担当です。バックエンド開発に使われる言語として、PHP・Python・Java・Rubyなどがあります。
バックエンドに向けの言語には、業務システムやアプリ・AIなど、他分野の開発に使われるものも少なくありません、
分類から難易度を見極めるのも大切
プログラミング言語は種類が多く、さまざまな基準で分けられます。
例えば『インタプリタ言語』『コンパイラ言語』は、プログラムを実行するときに『コンパイル』が必要かどうかでプログラミング言語を分類したものです。
作成したプログラムをコンピューターに理解させるためには、『機械語』に翻訳(コンパイル)する必要があります。自動的に1行ずつ翻訳して実行してくれるのがインタプリタ言語、自分でまとめてコンパイルし、一気に実行するのがコンパイラ言語です。
両者のうち比較的習得難易度が低いといわれるのは、インタプリタ言語です。主な言語として、Ruby・PHP・Pythonなどがあります。
また、読みやすく書きやすいプログラミング言語を総称する分類が『スクリプト言語』です。『可読性が高い』『記述がシンプル』などの特徴があり、難易度は低めといえます。スクリプト言語の多くが、インタプリタ言語に該当するのも特徴です。
初心者なら、スクリプト言語をチェックしてみるとよいでしょう。主な言語として、JavaScript ・Ruby・PHP・Pythonなどがあります。
作りたいものを目標に
プログラミング言語には得手不得手があり、目的によって適した言語が異なります。言語を選ぶときは、用途に合った言語を選ぶことが大切です。
例えばWebサービスを総合的に作りたい場合は、HTMLやCSSを習得した上でJavaScriptやPHP・Rubyといったプログラミング言語を学ぶ方法が挙げられます。一方、データの解析システムやAIの開発に携わってみたいなら、習得しておきたいのはPythonです。
プログラミング言語を難易度のみで選んでしまうと、本当に作りたいものが作れないかもしれません。習得のモチベーションが下がり、挫折する可能性が高まります。
もちろん習得の難易度は重要ですが、プログラミング言語は理解することがゴールにはなりません。それを使って『何をしたいか』『何ができるか』を考えましょう。
PHP

(出典) photo-ac.com
PHPは『WordPress』をはじめ、Webアプリの開発に使われることが多いプログラミング言語です。スクリプト言語に分類され、初心者におすすめの言語として、必ずといってよいほど名前が上がります。
動的なWebページが作れる
Webページには、いつ見ても同じ内容を提示する『静的』サイトと、ユーザーやアクセスのタイミングなどで提示される内容が変わる『動的』サイトがあります。
PHPは、動的なサイト制作に適したプログラミング言語です。
PHPの特徴の一つが、HTMLと組み合わせやすいことです。HTMLにタグを埋め込めば、そのままプログラムを実行できます。データベースとの相性がよく、必要な情報を素早く取り出す・更新する・保存するといった動きも得意です。
『JavaScript』も動きのあるWebサイト制作に使われますが、JavaScriptはブラウザ側で動く・PHPはサーバー側で動くという違いがあります。JavaScriptは主にユーザーから見える部分の動きを操作するのに対し、PHPはサーバー側のデータベースと連携することで動的サイトを実現するのです。
ブログやECサイトなどに用いられる
PHPでできることとして『ブラウザ側からの情報の受け取り』『データベース連携』などがあります。これらの特性を生かし、PHPはブログ・ECサイト・問い合わせフォーム・予約システムなどを構築する際に使われています。
例えば、ブログの制作では、PHPによって記事投稿・編集機能の実装が可能です。一方、ECサイトなら、カートの中身の追加・削除機能や、商品を『お気に入り』に保存する機能を開発できます。
なお、CMSの中でもシェア率の高い『WordPress』は、PHPで開発されています。WordPressに関係する分野では、PHPのニーズは特に高めです。
開発環境が簡単に構築できる
PHPが初心者におすすめといわれる理由の一つが、開発に必要な環境を構築しやすいことです。
PHPはどのOSにも対応できる上、特別なツールを必要としません。パソコンに標準装備されている『メモ帳』『テキストエディタ』などからでも、コードの記述が可能です。
プログラミングの実行環境もインターネット上で簡単にそろえられます。
例えば『XAMPP』は、PHPでの開発に欠かせない『Apache Webサーバー』や『MariaDB』『Perl』などを無償かつ一括でインストールできるアプリです。これを使えば、多くの初心者が挫折する『開発環境の構築』という難関を簡単に突破できるでしょう。
XAMPP Installers and Downloads for Apache Friends
JavaScript

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JavaScriptは需要が高く、用途の幅が広いプログラミング言語です。何に使われているのか、どんな強みがあるのかを見ていきましょう。
表情豊かなWebサイト制作に欠かせない
一般的なWebサイトを構築しているのは、Webページの基本構造を作る『HTML』や、Webページの装飾を行う『CSS』です。JavaScriptを使えばこれらを操作できるようになり、より魅力的なWebサイトの構築が可能です。
例えば『読み込み時にアニメーションを表示する』『各種フォームを制御する』などは、JavaScriptで実現できます。
プログラミング言語の中でも、HTMLやCSSを直接操作できるものは多くありません。サーバーサイドとの連携やWebアプリ・スマホアプリの開発にも対応できるため、現場でのニーズは非常に高い言語といえます。
充実したライブラリ
JavaScriptにはオープンソースのライブラリが充実しています。
ライブラリとは、開発に使われるプログラムを使いやすくまとめたものを指します。代表的なものとしては、『jQuery』『Ajax』などが有名です。例えばAjaxの技術は、Googleの検索エンジンや地図アプリなどに使われています。
実装したい機能があるとき、ゼロから構築するのは手間がかかります。すでに完成したパーツを利用できれば、初心者でも高品質なサイト・アプリを作りやすくなるでしょう。
スピーディーな環境構築ができる
『PLAYCODE』というWebページにアクセスすれば、JavaScriptでの開発に必要な環境を簡単に構築できます。
開発環境を構築するには、さまざまなアプリやツールのインストールが必要です。環境構築でつまずいて、プログラミング学習に挫折してしまうこともあるでしょう。
『PLAYCODE』には、プログラミングを書く場所と実行環境、その他開発に必要な便利機能がそろっています。コードを書くそばから実行されるため、プログラム学習にぴったりです。
JavaScriptに対応する便利なツールがあることは、学習面で大きなメリットとなるでしょう。
Ruby

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Rubyは日本発のプログラミング言語です。『記述しやすい』『効率的』などの評価が多く、さまざまなWebサービス・アプリに使われています。Rubyにはどんな特徴があるのでしょうか?
効率的なWeb開発ができる
Rubyはスクリプト言語に分類され、コードがシンプルで記述しやすいという特徴があります。長々とコードを書き連ねる必要がなく、コーディングの手間・時間を短縮できます。マルチプラットフォームで動作環境を選ばないため、汎用性が高いのも魅力です。
また、Rubyには多目的に使えるフレームワークが用意されています。
フレームワークとは、Web開発に必要な機能や枠組みをまとめたものです。開発の土台として使えば、ゼロから構築する必要はありません。開発工程を大幅に短縮できるでしょう。
中でも『Ruby on Rails』は、Rubyとの相性が良いとされており、Rubyの有用性を高めています。
WebサービスやSNSが作れる
初期のTwitterは、Rubyによって構築されていたことで知られています。Ruby on Railsを利用すれば、RubyでWebサービスやSNSの制作もスムーズです。
Rubyなら、サインアップ・サインイン機能のほか、プロフィールページを作成したり投稿機能を追加したりできます。いいねやコメント機能の追加も可能で、WebサービスやSNSに必要な機能の全てを実装できるでしょう。
Rubyでの開発に必要な機能は『gem』と呼ばれるライブラリで取得できます。gemの管理パッケージである『RubyGems』も用意されているので初心者でもカスタマイズ性の高いWebサービスやSNSの制作が可能です。
Web上のデータを収集する『スクレイピング』にも使えるため、Rubyは用途が広い言語といえるでしょう。
日本語のドキュメントがあり学びやすい
学習者にとって、『Rubyが日本生まれ』という点は大きなアドバンテージです。
他国で生まれたプログラミング言語は、理解しやすい教材が十分にそろわないことがあります。特にメジャーではない言語の場合は、日本語で書かれたものを見つけるのさえ難しいかもしれません。
しかし、日本生まれのRubyには、日本語で書かれた公式ドキュメントがあります。必要な情報を入手しやすく、学習がスムーズに進むのは大きな強みです。
Python

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学習者や現役プログラマーから高い人気を誇るのが『Python』です。将来的にはよりニーズが高まると見られており、学習を始めても損はないでしょう。
Pythonの特徴を紹介します。
アプリ制作、業務効率化などが可能
Pythonは汎用性の高いプログラミング言語で、Webアプリやゲーム制作などにも使われます。身近なところでは、Excel操作の自動化も可能です。手間のかかっていた集計・グラフ化・統合などの作業も、Pythonで一気に効率化できます。
さまざまな用途がある中でも、特に強みとされるのがデータ解析とAI開発です。
Pythonには、データ解析や機械学習に必要なさまざまな機能をまとめた、豊富なライブラリがあります。ビッグデータの解析やAI開発でPythonが選択されるケースは多く、標準言語化しているといっても過言ではないでしょう。
AIやビッグデータの活用が企業にとって不可欠となる今後、Pythonの存在感はますます強まっていくと予想されます。
InstagramはPythonで開発されている
Pythonは、Webアプリの制作現場でも活躍している言語です。例えば『Instagram』『Dropbox』『YouTube』などは、Pythonを使って作られています。
Webアプリは更新のスパンが短く、スピード感が重視されます。シンプルな文法・少ないコードで開発できるPythonとは相性がよく、好んで使われることが多いようです。
ライブラリ・フレームワークが豊富なことも、Webアプリ開発では有利といえます。コーディングの手間が少ない分、制作にかかる時間も短くなるでしょう。
コードが簡潔で読み書きしやすい
Pythonはコードの可読性が高く、文法がシンプルなスクリプト言語です。『学習しやすい』という点も大きな魅力といえるでしょう。
プログラミング言語を学習する際、すでに定義が決まっている『予約語』を覚えるのに手こずることがあります。ところがJavaScriptやC言語と比較して、Pythonは予約語の数が約半分しかありません。
『処理が違ってもコードの書き方の基本は同じ』『波括弧やendなどを使わない』といった特徴もあり、初心者にとって学びやすい言語といえます。
Pythonを使ってみたい人は、『Google Colaboratory』の活用がおすすめです。インストール不要・無料で、ブラウザから簡単にPython向けの環境を構築できます。
Swift

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Swiftは、2014年に登場した比較的新しいプログラミング言語です。コンパイラ言語でありながら学びやすさもあり、近年人気が高まっています。Swiftの用途や強みを見てみましょう。
iOS向けアプリが作れる
SwiftはApple社がオープンソースで提供している言語です。もともとはApple社製品のアプリ開発用に作られたものですが、近年はWebアプリやAndroidアプリの開発で使われるシーンも出てきています。
Apple社ではもともと『Objective-C』というプログラミング言語が使われていました。SwiftはObjective-Cと互換性を保ちながら、『コードの読みやすさ・書きやすさ』『高速処理』『安全性の高さ』などの面で改良が加えられています。
iPhoneやMacユーザーは多く、iPhone用・Mac用のアプリは常にニーズが高めです。Apple社製品用に作られたSwiftを使うメリットは多く、学習者も増加傾向にあります。
Swift Playgroundsによってゲーム感覚で学習できる
Swiftには、コードがシンプルで読み書きしやすい・文法が簡単といったメリットがあります。コードの安定性が高くプログラミングミスが起こりにくいともいわれており、初心者にも比較的ハードルが低いといえるでしょう。
初心者用のプログラミング学習アプリがリリースされているのも、Swiftの大きな魅力です。
App Storeで提供されているプログラミング学習アプリ『Swift Playgrounds』は、パズルやゲームのような楽しいコンテンツです。
一見子ども向けのようですが、本物のコードを使って学習できます。気軽にSwiftの基本を学びたい初心者は、まずダウンロードから始めましょう。
Java

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Javaは人気の高いプログラミング言語として、必ずといっていいほど名前が上がる言語です。ユーザー数は多く需要もありますが、コンパイラ言語で習得難易度は高めとされます。
大きな特徴である汎用性の高さと、Javaが難しいといわれる理由について解説します。
基本的に何にでも活用できる
Java最大の特徴ともいえるのが、用途が幅広いことです。Webサイト制作・アプリの開発から、住宅・車・家電製品の組み込みシステムまで幅広くカバーします。
Javaが動作するときは、OS上に仮想環境を構築します。ベースとなるOSの環境に依存しないため、クロスプラットフォームでの使用が可能です。一つのコードで、さまざまな場所に実装できます。
作ってみたいもの・やってみたいことが多くある人には、Javaを学習するメリットが大きいといえるでしょう。
覚えるルールが多く難易度は高め
Javaの特徴としてしばしば挙げられるのが、記述量の多さです。コンピューターに一つの指令を出すだけでも、多くのコードを必要とします。覚えることが多い分だけ、学習の負担は大きいでしょう。
『オブジェクト指向』の言語であるため、まずオブジェクト指向の考え方についての理解も欠かせません。これを理解しないまま学習を進めても、壁に当たってしまいます。
実際のところ、Javaを独学でマスターするのは現実的とはいえないでしょう。スクールやオンライン講座への参加が必要になれば、コスト面でも負担が増えます。
「絶対にJavaをマスターしたい」くらいの強い気持ちがある人におすすめの言語です。
C、C++、C#の違いは?

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C言語は、1972年に登場した歴史あるプログラミング言語です。C++・C#といった多くの派生言語を生み出しており、今なお開発現場では第一線で使われています。
プログラミングへの理解を深めるため、C言語と派生語のC++・C#それぞれの特徴も簡単に知っておきましょう。
C言語
長い歴史を持つC言語は、社会の基幹システムにも多く導入されていて需要が高い言語です。
C言語が得意とするのは、機器の中にプログラムを組み込む『組み込み系システム』の開発や通信関連プログラムの開発、ゲーム・パッケージソフト・ロボットの開発などです。言語の汎用性は高く、しばしば大規模開発にも使われます。
C言語は機械語に近い分ソースコードが難解で、習得の難易度は高めです。とはいえ需要はまだまだ高く、習得のメリットは大きい言語といえます。
C++
C++はC言語の拡張版として、1983年に生み出された言語です。C言語との互換性が高く、開発現場ではしばしば二つの言語が併用されています。
C++の特徴は、オブジェクト指向がプラスされていることです。C言語よりも複雑なプログラムを作れるほか、開発効率が高いとされます。動作の安定性が高いことも大きなメリットで、小規模開発から大規模開発まで幅広いシーンで活用されています。
例えば、『Google Chrome』『Cocos2d-x』などは、C++で開発されたものの代表格です。
C++を学ぶには、オブジェクト指向への理解が必要となります。メモリ管理もプログラマー自身が行わなければならず、残念ながら初心者の手に負える言語とはいえません。
ある程度スキル・知識を身に付けてから学習を始めるのがおすすめです。
C#
C#は、主にWebアプリやゲーム・スマホアプリの開発に使われるプログラミング言語です。
C言語系には分類されるものの、C言語やC++との互換性はありません。文法はC++とJavaに近くシンプルで、C言語やC++よりは習得難易度が低いといえるでしょう。
また、C#はMicrosoft社が開発した言語です。Microsoft社が提供するツールを使えば、プログラミングの難易度が下がります。
例えば同社が提供する『Visual Studioシリーズ』は、開発に必要な環境構築をサポートするツールです。これをダウンロードすれば、初心者でもC#の開発環境を簡単に構築できます。
Visual Studio: ソフトウェア開発者とチーム向けの IDE およびコード エディター
構成/編集部