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民法の「懲戒権」削除によって児童虐待問題はどこまで改善されるのか?

2022.05.31

2022年秋の臨時国会以降、政府は「懲戒権」の削除に関する民法改正案を国会提出することを予定しています。

懲戒権とは、親が子どもに対してしつけなどを行う権限のことです。体罰をはじめとした児童虐待の防止が、懲戒権削除の主眼とされています。

今回は民法の懲戒権について、改正の歴史や削除による影響などをまとめました。

1. 懲戒権に関する民法改正の歴史

懲戒権については、親子関係についての社会常識が変化したことに合わせて、過去にも民法改正による変更が行われています。

まずは、懲戒権に関する民法改正の歴史を確認しておきましょう。

1-1. 2011年改正以前の懲戒権規定

1896年の民法制定以降、現代語化を経て2011年の民法改正以前まで、懲戒権は以下のとおり定められていました。

(懲戒)
第八百二十二条
親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
2 子を懲戒場に入れる期間は、六箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。

2011年改正以前の上記の規定では、親権者は懲戒権を「必要な範囲内で」行使できると定められています。

また、明治民法の名残から「懲戒場」に関する規定が設けられていましたが、実際には懲戒場に相当する施設は存在しませんでした。

1-2. 2011年改正以降の現行規定

2011年改正以前の懲戒権規定に対しては、児童虐待を正当化する口実に利用されているとの批判がありました。そのため、2011年の民法改正により、懲戒権規定は以下のとおり改められて現在に至ります。

(懲戒)
第八百二十二条 親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

民法820条では、親権者は「子の利益のために」子の監護・教育を行う権利を有し、義務を負うと定められています。

2011年改正以降の現行規定では、懲戒権についても「子の利益のための監護・教育に必要な範囲内で」行うべき旨が明記されました。

また、懲戒場に当たる施設が存在しないことを踏まえて、2011年改正により懲戒場に関する規定は削除されました。

1-3. 2022年以降の法改正によって削除される見込み

子どもに対する体罰などの児童虐待が社会問題化する中で、2011年改正後の懲戒権規定についても、依然として体罰などを正当化する口実になり得るという批判が根強く存在しました。

そこで法制審議会は、2022年2月1日付で、懲戒権の削除を含む民法改正の要綱案を取りまとめました。同要綱案をベースとして、政府は2022年秋以降の臨時国会において、民法改正法案の提出・成立を目指す方針を掲げています。

なお、同要綱案では懲戒権の削除に加えて、親権の行使に関して、体罰の禁止などを含む以下の内容が明記されています。

「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」

参考:「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」(令和4年2月1日)|法務省

2. 「懲戒」とは? 具体的にどのような行為なのか?

2004年に第1刷が発行された『新版注釈民法(25)親族(5)改訂版』は、民法のもっとも権威ある注釈本の一つとして、法律関係者の間で広く知られています。

しかしこの「注釈民法」には、親の子に対する「懲戒」に関して、現代の感覚からすると眉を顰めざるを得ない記述が含まれています。

具体的には、非行・過誤の矯正善導のために子の身体・精神に苦痛を加える制裁であり、以下のような適宜の手段を用いてよいと記載されているのです。

・しかる
・なぐる
・ひねる
・しばる
・押入に入れる
・蔵に入れる
・禁食せしめる
など

「しかる」はともかく、それ以外は児童虐待と見られても仕方がない行為でしょう。

このような権威ある注釈本の記載は、民法改正案を検討する法制審議会の資料でもたびたび引用されており、懲戒権が強く問題視される契機の一つになっていると考えられます。

3. 懲戒権の削除によって何が変わるのか?

現行民法では懲戒権規定が残っていますが、あくまでも親権者が子の利益のために監護・教育を行う一環として、懲戒(=しつけ)ができることを注記したに過ぎないと解されています。

つまり、現行民法の懲戒権規定は、「子の利益のための監護・教育」を超える特別な権限を親に与えるものではないということです。

そのため、民法改正によって懲戒権規定が削除されたとしても、親権者が行使できる監護・教育権の範囲について、法的な変更は生じないと考えられます。

しかし懲戒権規定を削除する狙いは、体罰を正当化しているとのイメージを払拭して、児童虐待を防止する明確なメッセージを発することにあります。

具体的な法的効果がないとしても、懲戒権規定が削除されれば、児童虐待撲滅に向けた法制度の前進と評価すべきでしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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