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「セールスお断り」「チラシお断り」のステッカーを貼っておくと法的効果は生じる?

2022.05.26

訪問販売のセールスや不要なチラシの投函を防ぐため、玄関先に「セールスお断り」「チラシお断り」などと記載されたステッカーを貼っている家がよく見られます。

業者に与える心理的な抵抗感とは別に、これらのステッカーを玄関先に貼っておくことには、何らかの法的効果があるのでしょうか?

今回は、「セールスお断り」「チラシお断り」などのステッカーを貼ることの法的効果についてまとめました。

1. セールスお断りのステッカーを貼ることの法的効果

「セールスお断り」「訪問販売お断り」などのステッカーを無視して訪問販売を行うことは、各自治体の条例または特定商取引法への違反に該当する可能性があります。

1-1. ステッカーの貼ってある家への訪問販売を禁止する条例がある

一部の自治体では、「セールスお断り」「訪問販売お断り」などのステッカーが貼ってある家に対する訪問販売のセールス行為を、条例によって禁止しています。

たとえば、大阪市消費者保護条例18条1項では、事業者が消費者との取引に関して、市長が指定する不当な取引行為をすることを禁止しています。市長によって指定されている不当な取引行為の一つが、以下の行為です。

「契約を締結する意思がない旨の表示をしている消費者に対し、電話をかけ、訪問し、又は迷惑を覚えさせるような方法により、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させる行為」
(消費者保護条例に基づく不当な取引行為の指定1項12号)

「セールスお断り」「訪問販売お断り」などのステッカーを貼ることは、「契約を締結する意思がない旨の表示」に該当します。そのため、大阪市内のステッカーが貼ってある家に訪問販売のセールスをすることは条例違反です。

大阪市消費者保護条例に違反して、ステッカーの貼ってある家に訪問販売をした場合、市長による指導・勧告の対象となります(同条例18条の4)。さらに、市長の勧告に従わない事業者は、公表措置の対象となります(同条例32条1項)。

参考:大阪市消費者保護条例|大阪市
参考:大阪市消費者保護条例に基づく不当な取引行為の一部を改正しました|大阪市

大阪市のような条例が制定されているかどうかは自治体によって異なりますので、ご自身がお住まいの自治体の条例をご確認ください。

1-2. 条例がない場合にも、特定商取引法違反の問題が生じ得る

大阪市と同様の条例が制定されていないとしても、「セールスお断り」「訪問販売お断り」のステッカーが貼ってある家に対する訪問販売のセールスは、特定商取引法違反に当たる可能性があります。

特定商取引法では、訪問販売契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する再勧誘が禁止されています(特定商取引法3条の2第2項)。

単に「セールスお断り」「訪問販売お断り」などと抽象的に記載されたステッカーを貼っただけでは、同条における訪問販売契約を締結しない旨の意思表示には該当しません(運用指針Ⅱ2.(2)①)。

しかし、商品・サービスや業者を具体的に特定して「お断り」のステッカーが貼られていた場合には、再勧誘は特定商取引法違反に該当する可能性があります。

事業者が再勧誘禁止規定に違反した場合、消費者庁による是正措置等の指示・公表の対象となります(特定商取引法7条)。

参考:特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針-再勧誘禁止規定に関する指針-|消費者庁

2. チラシお断りのステッカーを貼ることの法的効果

「チラシお断り」のステッカーに関しては、特に顕著な法的効果は認められないのが実情です。

日本の法律では、チラシ投函そのものを一律に処罰する規定は存在しません。

風営法に基づく性風俗店のビラ・パンフレット投函禁止など、個別の規制は存在するものの、一般的な企業が行うチラシ投函については特に規制されていない状況です。

ただし、住人が拒否しているにもかかわらず、チラシ投函目的で住居の敷地内に立ち入る行為は「住居侵入罪」(刑法130条)に当たる可能性があります。

「チラシお断り」のステッカーを貼っていることに加えて、住人がチラシ投函をやめるよう強く警告したにもかかわらず、再三投函されたなどの事情が認められれば、投函者に住居侵入罪が成立する可能性が高まるでしょう。

3. まとめ

「セールスお断り」「チラシお断り」などのステッカーは、それ自体に顕著な法的効果が認められるケースは少ないと思われます。

ただし状況次第では、ステッカーを貼ることにより、条例・特定商取引法・刑法などとの関係で、事業者側の法的責任が認められる可能性を高める効果が期待できます。

事業者の側にとっても、ステッカーが貼ってある家の方が、トラブル防止の観点から訪問を差し控えようという心理が働く可能性が高いでしょう。

法的効果のみならず、事業者に心理的なプレッシャーを与える観点からも、「セールスお断り」「チラシお断り」などのステッカーを貼っておくことは効果的と考えられます。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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