少し前までは「五月病」というゴールデンウイーク明けにやる気がでない、体調が悪いなどの症状を病に例えたものが有名でしたが、今は梅雨どきに表れる体調不良を表す「六月病」という言葉もよく耳にするようになってきました。
ある季節になると気分が落ち込む、体がだるくなるなどのうつのような症状が出る病は「季節性うつ病(季節性情動障害きせつせいじょうどうしょうがい)」と言います。暑くなると心身の不調を繰り返す「夏季うつ」、寒い時期に心身の不調を繰り返す「冬季うつ」と言われているものも「季節性うつ病」になります。
なぜ季節とメンタル不調が出てくるのか
梅雨どきに季節性うつになってしまう原因には、日照時間や気圧、気温の変化が深く関わっていると言われています。その原因を1つずつ解説していきます。
日照時間が短くなることで気持ちが安定しなくなる
人は日の光を浴びることで、脳内の神経伝達物質の一つである「セロトニン」が増えるといわれています。セロトニンには心身を安定させたり食欲をコントロールする働きがあり、「幸せホルモン」とも呼ばれているものです。
梅雨どきには日照時間が短くなり、セロトニンが不足してしまいます。セロトニンが不足すると憂鬱な気分が続いたり、やる気を感じられなくなったりしまうのです。
日照時間が短くなることで生活のリズムが崩れる
日の光にはもう1つの「メラトニン」という睡眠ホルモンも関係しています。セロトニンとの違いは、メラトニンは日の光が当たると分泌量が減少することです。日中に日の光を浴びるとメラトニンの分泌は抑制され、夜に分泌量が増加します。つまり、日の光を浴びることで夜に眠りやすくなる、というわけです。
日の光を浴びる時間が短い梅雨どきには夜にもメラトニンの分泌が十分ではなくなり、それが夜更かしなど生活リズムの乱れを起こしてしまいます。睡眠不足などが続くと日中に集中力が続かなくなったり、やる気そのものにも影響していきます。
気圧、気温の変化で自律神経が乱れてしまう
最後は気圧、気温の変化です。この2つの変化は体の自律神経に大きな影響を与えます。
自律神経には、交感神経(活動時に優位になる)と副交感神経(休息時に優位になる)があり、2つがバランスを取りながら体の機能を調整しています。
交感神経はストレスを与えられた場合、優位に働きます。活動的になってそのストレスに体が対応している状態です。梅雨どきには気圧や気温の変動により体は常にストレスにさらされている状態になり、慢性的に交感神経が活発になることがあります。ずっと体が休めていない状態となり、これが疲労やだるさを引き起こしてしまっている可能性があるのです。
こんな不調を見逃さないで!簡単にできる梅雨不調を防ぐ方法
日照時間や、気温、気圧の変化など、個人では防ぎようのないものなので、その変化に対応できる体作りが大切です。今回は簡単にできる4つの方法をお伝えします。
日光浴をする
梅雨どきは日照時間が短いですが、少ない日照時間を有効に使ってください。晴れた日には1~2時間でいいので外出してみましょう。曇り空でも太陽の明るさを感じられる日中に外出することで晴れの日ほどではないものの、部屋にいるよりも「メラトニン」が分泌されます。
外出が難しい場合は、朝起きてすぐにカーテンを開けて日の光を室内に入れて体内時計を整えることも有効です。
睡眠時間を一定にする
生活リズムを整えることで環境の変化に対応できる体を作れるようになります。体内時を整えるためには、睡眠時間は7時間前後を目安に、朝起きて、夜寝るという一定のリズムを確保してください。梅雨どきには環境ストレスで交感神経が優位になり、寝つきが悪くなってしまう場合があります。そんな人は、日光浴をするでもご紹介した、朝早起きしてすぐにカーテンを開けて日の光を当たりましょう(曇り空でも)。
3食しっかり食べる
ストレスに強い体になるためには基本的なこと、朝昼晩の3食とり入れることが大切です。生活リズムを整えるためには毎日決まった時間にとることを心がけてください。平日と休日で食事をとる時間がバラバラな人は、3食の時間を統一するだけでも効果が期待できます。
適度な運動を取り入れる
生活の中に適度な運動を取り入れることも不調を防ぐポイントです。激しい運動ではなく、ウォーキングなどゆっくり長くできる運動は自律神経を安定させることにつながります。運動中には交感神経が、運動後には副交感神経が優位になるとされており、交感神経と副交感神経の調整に有効です。
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季節性うつは毎年決まった時期に不調を繰り返す(周期性)があるのが特徴です。繰り返すのでご自身でも不調に気づいている場合も多くあります。不調に気づいたときにはすぐに上記の4つの方法を取り入れてメンタル不調を長引かせないことが大切です。
文・構成/藤野綾子