小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

NFTの浸透によって生まれる「Play to Earn」と「Web3市場」の可能性

2022.05.20

今、世界的に、ゲームをプレイすることでお金を稼ぐ「Play to Earn」が、昨年から急速に人気が高まっている。そこで今回は、Play to Earnの最新事情と、今後、日本でも実現する可能性について有識者への取材のもと探った。

NFTにより生まれた「Play to Earn」の体験談

世界的にいま、Play to Earnが流行している。Play to Earnとは、ゲームをプレイすることで暗号資産の一種であるNFTを稼ぐことだ。NFTは「Non-Fungible Token:非代替性トークン」のことで、ブロックチェーン技術という暗号化技術を活用することにより、唯一無二の資産的価値を付加したものだ。

そのNFTを、ゲームをプレイすることで稼ぎ、救われたというフィリピンのユーザーが増えている。例えば、あるフィリピンの3児の母親は、こんな体験談を話している。

「今、コロナで息子がオンライン授業になっているのですが、ゲームで稼いだお金でモニターを買えました。私たち夫婦は高卒なので、給料が低く、そもそも子どもたちにモノを与えることができなかったのです。しかも夫は喘息のため、現在無職。ゲームのおかげで、子どもに夢を与えることができるようになったことが、私にとっては感動的です」

その他、こんな声もある。

●フィリピンのclorenceさん

「台風で作物がダメになり、農業を再開する資金がありませんでした。ゲームをプレイし始め、報酬を得たおかげで、新たに必要なものを買いそろえ、農業を再開することができました」

●フィリピンのFrancisさん

「バイクタクシーの運転手をしながらお子さんを育てている母親です。はじめはNFTのことはさっぱりわかりませんでしたが、姉からゲームを勧められ、興味本位で始めました。初めて得た報酬で、娘の誕生日をお祝いし、家賃も払うことができました」

●インドネシアのSuryaさん

「Play to Earnで得た報酬で、奥さんには洗濯機を、お子さんには好きな食べ物をたくさん買いました。家族みんなが笑顔になりました」

これらはすべて、「JobTribes(ジョブトライブス)」というカードバトルゲームで稼いだ体験談だ。

●「JobTribes」とは

JobTribesを提供するのは、日本人の吉田直人氏と山田耕三氏が創立したシンガポールを拠点にグローバルで、ゲームとフィンテックが融合する「GameFi」プラットフォーム事業を展開するDigital Entertainment Asset Pte. Ltd.(以下、DEA)だ。

JobTribesで稼ぐ仕組みはこうだ。

NFTで購入したカードを利用してカードバトルを行う。例えば「NFTクエスト」というモードでコンピュータを相手に戦う場合、自分のデッキ上にある6枚のカードから3枚を選んで、フィールド上に出す。カード属性を考慮し、相手のカードを見ながらカードを出して対決し、相手のカードのHPを削っていく。

JobTribes画面イメージ

勝利するとゲームアイテムをもらえる。そのうち「DEAPcheck(ディープチェック)」という引換券がもらえるのだが、これが暗号資産「DEAPcoin(ディープコイン)」に換金できる。ちなみにDEAPcoinの価値は、現在1DEAPcoin=約2.17円となっている(2022年5月23日22時時点)。ただし、日々金額は変動するので、相場などをチェックしたい。

「GameFi2.0」の時代が来る

DEA社は2018年よりNFTやメタバースを含む「Web3(Web3.0)」をメインとしたエンターテイメント事業を軸にシンガポールで活動してきたが、いよいよ日本でもNFTやメタバースの普及が見込めることから、日本市場における事業の本格展開を決めた。JobTribesは同社が運用しているNFTゲームプラットフォーム「PlayMining」の一つだ。 同社は、2020年5月26日に1stゲームタイトル「JobTribes」をローンチした。

●GameFiとは

JobTribesのようなゲームは、「プレイヤーが自らプレイをして獲得する(Play-to-Earn)」というところにポイントがある。これが持続可能な「GameFi」の特徴だとDEAは言う。

DEA Founder & Co-CEO 山田耕三氏

先日開催された事業戦略発表会では、同社が「GameFi2.0」を実現することを宣言。Founder & Co-CEO 山田耕三氏は、次のように述べた。

「ゲームとフィンテックが融合するGameFiという言葉が、2020年夏頃から世界的に使われるようになりました。我々は、2018年よりブロックチェーンとNFTを活用して新しい次元に持って行くことを目標に活動してきました。誰もが未体験のWeb3エンターテイメントを世界中の人々に体験してもらうこと、そしてフィンテックを内包していることで、SDGs、持続可能性を事業内容に含めた形で実現していきます。これまでのゲーム会社がそうだったような、『儲かったお金をいつか世界に還元しよう』という考え方ではなく、ビジネスのシステムの中に持続可能な、『世界を救う』といった仕組みを入れ込んで展開していこうと考えています」

GameFi1.0…資産運用、手数料。フィンテックのゲーム化

GameFi2.0…エンタメ体験への消費。ゲームのフィンテック化

「GameFiという言葉を生み出すきっかけになったのが、ベトナムのベンチャーであるSky Mavisという会社が作り上げた『アクシーインフィニティ(Axie Infinity)』というゲームでした。2022年8月には月間400億円という驚異的な売上を挙げて、我々にGameFiの存在を知らしめ、ライバルとして注目しています。彼らの立ち位置をGameFi1.0と呼んでいます。資産運用、利回りに軸足を置いてゲームをやるというプロダクト。実は我々もまだ1.0の領域にいます。この後やってくるのが、GameFi2.0。世界の大手ゲーム会社がこの領域へ参入することを、すでに発表しています。フィンテックというより、ゲーム体験に軸足を置いた世界、そのGameFi2.0を強力に牽引していく心構えで事業を推進しています」

NFT市場の伸びが加速する中、同社は独自の換金可能なトークンをゲームプレイに応じてつど配布する「Play-to-Earnのモデル」を2020年の5月、ゲームタイトルで世界で初めて実現した。

「アクシーインフィニティがこのモデルを確立したのは2020年7月。我々が調べる限り、当社が世界で初めてのPlay-to-Earn事業者であるということがいえます。その元祖のプライドを持って、さらにはゲームにフィンテックの要素が入り、ゲームアイテムの貸し借りができるようになりました。そしてゲーム内に雇用が生まれました。NFTを持っている資産家の方は、NFTを貸し出して貧しい東南アジアの方々に、NFTを貸すということを今、行っています」

●ただ単に「お金が稼げてよかったね」ではない。Web3エンターテイメントとは?

山田氏は、フィリピンでPlay to Earnで稼いだ人々の感謝のメッセージについて、次のように解説した。

「これは、フィリピンの方が、お金がもらえてよかったね、というお話ではないのです。いわば雇用を受けて、持続可能的に生活が救われたという感謝です。それは単に与えられたものではなくて、きちんとゲームプレイをして自分で稼いだお金だというプライドがあります。もう一つ重要なことは、このNFTを貸しているゲームユーザーさんがいらっしゃるということ。この感謝のメッセージは、そのゲームユーザーさんに届いたコメントなんです。ゲームを通じて、このような感謝の言葉をもらったら、どのような気持ちになるでしょうか。それこそWeb3エンターテイメントの、我々が実現しようとしている一端になります。

既存のWeb2のゲームには絶対に実現できなかったことがもうすでに始まりつつあります。どれだけお金がかかった、儲かるゲームがあったとしても、自分がゲームを通じて、世界の誰かとつながって、その人の生活をちょっとでも現実に救う。そういった体験ができるということが、今までのゲームでできるのかというところを真剣に考えています。この仕組身を使って、持続可能的に世界に対していいことをする。そしてもっと重要なのは『ゲームばっかりしていて何になるんだ』という考え方をくつがえすような、『ゲームに夢中になることによって世界を自分でも救えるんだ』という体験をユーザーに与えたいと考えています」

Play to Earnの最新動向

(画像はイメージ)

ここで、Play to Earnの最新動向を見ていこう。

●スカラー制度

山田氏の話にも出たが、手元にNFTを買う資金がない場合に、そもそもPlay to Earnはむずかしい。そこで開発されたのがNFTを貸し借りできる制度「スカラー制度」だ。

NFTを持っている人が、NFTを持っていない人に貸し出す。持ってない人は、借りたNFTでゲームをプレイする。そして挙がった収益を分配する。このようなスカラー制度が持続可能な社会貢献を生むきっかけとなっているという。

このスカラー制度を利用して、集団でゲームをプレイするべく誕生したのが「ギルド」と言われる存在だ。ギルドはNFTを大量に保有し、プレイヤーを雇い、Play to Earnで暗号資産を稼ぐ集団だ。すでにJobTribesには多くのギルドが参入しているという。そしてこれらのギルドは、世界中で多くの雇用を生んでおり、JobTribesをプレイすることが副収入となっているという人が数多く存在する。そのプレイヤーの体験談が先に紹介したものだ。

●NPO法人高卒支援会の事例

日本でも、このPlay to Earnの仕組みがすでに活用されている。DEAは、NPO法人高卒支援会とコラボし、NFTを無償で貸与し、Play to Earnの世界を体感する機会を提供している。

高卒支援会とは、不登校、高校中退・引きこもりの救済を目指す特定非営利法人だ。在籍をする高校生がゲームプレイを体験。プレイによって取得した報酬は、団体の運用資金として利用し、一部を、ゲームをした高校生へ還元する予定だという。

就職や社会自立が困難な状況にある高校生に、Play to Earnを通じてお金を稼ぐ機会を提供するということで、社会的自立への踏み出すきかっけになることを期待しているという。

日本でPlay to Earnが定着する可能性は?

日本でこのような施策が行われているのを知ると、やはり期待するのは日本での副業などの収入源としてのPlay to Earnだ。山田氏に、日本で定着する可能性について話を聞いた。

「日本だけでなく、世界中でX to Earn(※)コンテンツを通じて、いくばくかの収入を得ることは確定の未来として100%到来すると考えています。我々がすでにローンチしているようなゲームなのか、それがどんなコンテンツになってくるか、あるいはどれくらいの金額が稼げるかということは、グラデーションとして様々に進行すると思います」

※X to Earn:「○○をすることでお金(仮想通貨)を稼ぐ」という意味の言葉。「X」の部分には様々な単語が入る。例:Play to Earn(ゲームをプレイすることでお金(仮想通貨)を稼ぐ)

日本において「ゲームで稼ぐ」ということが定着するには、これから何が求められるだろうか。

「まだプロダクトがローンチしていないと言える状況ですので、『時間』という回答になるかと思います。スクエア・エニックス、セガ、バンダイナムコ、サイバーエージェント、エイベックスなどなど大手企業がすでに着手している状況ですが、ゲームを作るために必要な時間を考えると、日本国内でプロダクトが出てくるのは2023年以降になると思われます。当社のPlayMiningは2018年創業でスタートタイミングが早いため、日本において最も早くローンチするPlay to Earnプロダクトと言えると思います」

政府も期待する「Web3市場」

DEAの説明会には、衆議院議員の山下たかし氏が登壇した。実は、Web3市場は政府が推進しており、日本の成長戦略と新しい資本主義の鍵はWeb3にあること、DEA含めた日本企業への期待をコメントした。

衆議院議員 山下たかし氏

「岸田政権の新しい資本主義は、何か新しいのかと言われますが、私はWeb3にこそ新しい資本主義があると思います。今までの資本主義は、例えばリアルの土地や建物などに財産価値を見い出すものでした。しかしWeb3の時代は今までのWeb1、Web2と違います。これまではコミニケーションツールや他の連絡手段でした。そこで人々が楽しみ、財産を持ち、そして稼いでいく。それがWeb3の時代です。すでに世界中で始まっています。私はそれが岸田政権の掲げる新しい資本主義だと思っていますし、そのWeb戦略を日本としてもしっかりやっていかないとならないと思っています」(山下氏の発言を一部抜粋)

スカラー制度によって、誰もがPlay to Earnが実施できるようになっている今、これから日本でもプロダクトが本格展開されていき、浸透することに期待が高まる。新たな「稼ぎ方」と同時に「社会貢献」の仕組みが定着する日は近づいている。

取材・文/石原亜香利

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。