半導体の供給減とリバウンド需要拡大の影響が落ち着きを見せつつある
この2年間、半導体不足は多くの産業を悩ませ、サプライチェーン全体のベンダーは不確実性と戦うために多くの労力を費やしてきた。では今後の見通しはどうなっているのだろうか。
カウンターポイント社は、世界的な半導体チップ不足は、大多数のコンポーネントで需要ギャップが減少しているため、2022年下半期も緩和傾向が続く見込みであるというComponent Tracker Reportによる最新調査を発表した。
2021年後半以降に需給ギャップが縮小したことは、半導体産業の幅広いエコシステムにとって、厳しかった供給状況の終わりを告げることを示唆している。
主力のアプリケーションプロセッサ、パワーアンプ、RFトランシーバーなどの5G関連チップセットの在庫レベルは、2021年第1四半期に著しく増加し、スマートフォンの部品不足は急速に緩和された。
しかし、旧世代の4Gプロセッサーや電源管理ICなどの例外も未だ存在するのも事実だ。
スマートフォン用コンポーネント不足状況〜2022年の見通し
出典: カウンターポイント社Component Tracker Report
PCとノートPCについては、電源管理IC、Wi-FiやI/OインターフェースICなどの最も重要なPCコンポーネントの需給ギャップは縮小している。
カウンターポイント社で半導体や部品供給を専門とするリサーチアナリストWilliam Li氏は、「メーカー各社は、年の初めころのCOVID-19の影響での不確実性に対処するため、コンポーネント在庫を積み増し続けていることが確認された」と語っている。
しかし、Li氏は、主にチャネルにおける在庫の増加や、コンシューマーPCの売れ行きが鈍化していることが主な原因となり、2022年上半期の出荷台数は下方修正されるだろうと指摘。また、同氏は次のようにコメントしている。
「ウェハー製造能力増強と、供給元を分散させる各社の取り組みが続いていることとが相まって、部品の供給状況は、少なくとも第1四半期においては各段に改善した。今後のリスク要因は、現在、中国全土、特に上海周辺におけるロックダウンである。
しかし、中国政府がコロナの流行をおさえ、半導体エコシステムを支える主要企業をすばやく回復軌道に戻せれば、世界全体の半導体不足は第3四半期の終わりか第4四半期の初めには緩和されると考えている」
一方、カウンターポイント社の半導体・部品担当ディレクターDale Gai氏はこう話す。
「昨年は、供給がタイトになったことと、一般消費者向けも事業向けも需要がリバウンドしたことが、ダブルパンチになり、サプライチェーン全体に問題が多発した。しかし、ここ数か月、需要が穏やかになる一方で、在庫の方は増えてきているという良い状況にある。
今や、問題は半導体不足ではなく、中国のロックダウンが世界の半導体エコシステムに与えるショックがどれくらいかにある。ロックダウンは中国全土でドミノ倒し的な影響を及ぼしている」
産業界と政府機関は、予測がつかない急な操業停止にともなう短期的なリスクへの対応に注力している。同じくカウンターポイント社シニアアナリストのIvan Lam氏は、このように指摘している。
「各国の行政にとって、製造ラインの維持が最優先になっている。一部の会社は、自社で閉じたクローズドループのサプライチェーンによって、操業を続けられることを示してみせた。
昨年は運が良かったとも言える。最近の中国でのCOVID流行の波は、政府が上手に素早く対処できるかの大きな試練である。今が重要局面となっており、世界の目は中国に注がれている」
関連情報:https://www.counterpointresearch.com/
構成/Ara