Wi-Fiの回線速度の目安は、目的によって変わってきます。快適にインターネットを使うには、どのくらいの速度があればよいのでしょうか?Wi-Fiの回線速度に影響を与えるものや速さに使われる単位、遅くなる原因と対策も紹介します。
Wi-Fiネット回線の速度は何に左右される?
インターネットに対応したデバイスを、無線でローカルネットワークにつなぐ技術が『Wi-Fi』です。サクサク動けばストレスが少ない半面、なかなかつながらないときは「遅い」とイライラしてしまうでしょう。
Wi-Fiの回線速度は、何に影響を受けているのでしょうか?速さを左右する主な要素を紹介します。
回線の種類
Wi-Fiの速度を左右する要素としてまず挙げられるのは回線の種類です。
インターネット回線には、光回線のように有線固定回線を使うものと、4G LTEや5Gなどのモバイル無線回線を使うものがあります。一般に、回線の安定性が高く速度が出るといわれるのは、有線の固定回線です。
光回線は、家庭に引き込んだ光ファイバーケーブルを介してネットワークにアクセスします。外部環境の影響を受けにくく、通信が安定します。
無線のモバイル回線は、通信会社の基地局に無線でアクセスする接続方法です。デバイスを使う場所や建物の構造によっては、接続が不安定になり遅く感じることがあります。
モバイル回線のメリットは、速度よりも携行性と考えるのが賢明です。屋外でのPC作業が多い人は、モバイル回線を選んだ方が使い勝手はよいでしょう。
通信方式の種類
一般にインターネットに接続するときは、『IP(インターネットプロトコル)』という通信プロトコル(規格)が使われます。IPのバージョンには『IPv6』『IPv4』があり、スピードが速いのは『IPv6』です。
IPv6に対応しているサイトには、従来の『PPPoE方式』より混雑しない『IPoE方式』で接続できます。IPoE方式では大容量を前提とした設備を使うので、通信量が多くなってもパンクして速度が下がる心配はほぼありません。
ただ、現在はまだIPv6に対応していないサイトが多いのが実情です。そこで、IPoE方式の接続で通信を快適にするために、『IPv4 over IPv6』という技術が役立ちます。IPv4にしか対応していないサイトにも、IPoE方式でのアクセスが可能です。
まずは使っている通信環境で、IPv4 over IPv6に対応できるかどうかを確認しましょう。対応できない場合は、ルーターの新規購入・プロバイダーの乗り換えも検討しなければなりません。
周波数帯
Wi-Fiの通信規格として使われる『周波数帯』には、2.4GHz帯と5GHz帯があります。このうち、速度が低下しにくいとされるのは5GHz帯です。
周波数帯とは、電波の通り道のようなものです。性質はそれぞれの周波数帯によって異なり、接続の安定性や速度に影響を及ぼします。
例えば、2.4GHz帯には周波数が低く遠距離まで電波が届きやすいメリットがあります。ただし、同じ周波数帯に一部の家電も割り当てられているため、干渉を受けやすくなるでしょう。
一方、5GHz帯はWi-Fiのみに割り当てられた周波数帯で、他の機器の干渉を受けません。速度も2.4GHzに比べて大きいものの、『遮蔽物に弱い』という弱みもあります。
ルーターと離れるほど通信が不安定になるため、なるべくルーターの近くで使うのがおすすめです。
よく見る「Mbps」や「Ping値」って何?
Wi-Fiの速度について調べていると、『Mbps』や『Ping値』といった言葉に出会うことがあります。これらはどのようなことを表しているのでしょうか?
bpsはデータ転送の速さを表す
『bps(bit per second)』は、1秒間にやり取りできるデータ量を示す単位です。数値が大きいほどやり取りできるデータ量が多く、速度が速いことを示しています。
実際の速度では、『メガバイト』の『M』を付けて『Mbps(メガビーピーエス)』、『ギガバイト』の『G』を付けて『Gbps(ギガビーピーエス)』と書かれているのをよく見かけるでしょう。
ネットワークでやり取りできるデータ量を知りたい場合は、『8bit=1Byte(バイト)』の決まりをもとに計算できます。
例えば、680Mbpsの速度が出ている回線の通信量は『680÷8=85』です。1秒間に85MBのデータのやり取りが可能ということになります。
自宅の回線速度・データ量は速度測定サイトで確認できるため、利用してみましょう。
最大通信速度では通信できない?
通信会社は『最大○○Mbps』と、サイト上に最大通信速度を提示しています。ただ、この最大通信速度は、あらゆる条件がそろって初めて達成できるものです。理論上は高い速度数値が出ていても、実測値はより低い数値となります。
「実際と広告が違うのは、問題では?」と考える人もいるかもしれません。しかし、インターネット通信サービスの多くは、品質保証義務のない『ベストエフォート型』です。
提示された最大通信速度はあくまでも『努力目標』であり、達成できないからといって通信会社が責めを負う義務はありません。
速い回線を選びたいなら、数値だけを頼りにせず口コミも見て総合的に判断することをおすすめします。
オンラインゲームやデイトレにはPing値が重要
Ping値(ピン値・ピング値)とは、インターネット上での応答速度を示す数値です。『ms(ミリ秒)』で示され、数値が小さいほどタイムラグが少なくスムーズな動作が実現します。
情報を『送る』『受け取る』のタイムラグが大きいと、オンライン中にフリーズしたり誤作動が発生したりしやすくなります。例えば、リアルタイム性が重視されるオンラインゲームやデイトレ(デイトレード)では、大きな問題になるでしょう。
ライトユーザーなら、Ping値が100msあれば十分です。これくらいなら、SNSや動画配信サイトもスムーズに使えます。
一方、オンラインゲームやデイトレをする人なら、より応答速度が速くなければ快適に使えません。Ping値はできれば15ms以下が理想でしょう。
ネット回線の「上り」と「下り」
回線速度をチェックしていると、『上り』『下り』と別の数値が表示されます。これは何を意味しているのでしょうか?ネット回線における上り・下りの意味を紹介します。
「上り」は動画アップロードなど
回線速度で『上り』とあるときは、データをアップロードするときの速度を示しています。
例えば、インターネットに画像や動画を上げたり、メールを送信したりするときの速度が『上り速度』です。動画配信・ライブ配信をする人は、特に上り速度を重視する必要があるでしょう。
上り速度はクラウドサーバーへのデータ格納や、ブラウザの表示速度・オンラインゲームのレスポンスにも影響します。インターネットをスムーズに利用するなら、ある程度の上り速度が必要です。
インターネットを主に『見る専門』で使う人は、上り速度128Kbps〜1Mbpsくらいの回線速度で問題ありません。一方動画などを頻繁にアップロードしている人は、10.2〜49.9Mbpsくらいは必要でしょう。
「下り」はWebサイトや動画の閲覧など
インターネット上からデータをダウンロードするときの速度が『下り速度』です。サイトを見たりメールを受信したり、クラウドサーバーからデータをダウンロードしたりするときなどのスピードを左右します。
下りの速度が遅いと、見たいサイトがなかなか開かなかったり動画が視聴中に止まったりと不便です。ブラウザ上に砂時計や待機マークがずっと出ていれば、ストレスを感じるでしょう。
インターネットの一般ユーザーは、データのアップロードよりもダウンロードの方が多い傾向にあります。そのため、回線速度の目安については、下りの速度をメインとするのが一般的です。