小説や映画など物語の内容に触れるときや恋愛について語るときに、『翻弄』という言葉がよく使われます。『振り回すこと』という意味を持つ翻弄の、正しい意味や微妙なニュアンス、使い方を詳しく見ていきましょう。分かりやすい例文も紹介します。
「翻弄」の意味とは?
翻弄の読み方と成り立ちから、使われる状況で変わるニュアンスの違いを解説します。翻弄の持つ本来の意味を見ていきましょう。
思うがままに振り回すこと
翻弄の読み方は『ほんろう』で、ひっくり返すという意味の『翻(ひるがえ)す』と、思うままに操ることを表す『弄(もてあそ)ぶ』が合わさった言葉です。
翻弄は「相手の意思を無視して状況をひるがえし、思うがままに操り、振り回すこと」を意味します。
しかし、「運命に翻弄される」と使った場合、運命に「人間を思うままに操ろう」という意思はありません。
この場合は、本来の意味から転じて「自分の意思や責任ではない環境の変化に、右往左往させられる」という意味で、翻弄を使っています。
「翻弄」の類語
翻弄を言い換えることができる類語は、いくつかあります。
どれも意図的に相手を振り回す意味を含むため、翻弄から言い換えることができるときと、できないときがあることを、覚えておきましょう。
手玉に取る
『手玉』は小豆や米を入れた小さな布袋のことで、いくつかを空中に投げ、取りさばいて遊ぶおもちゃを指します。つまり『お手玉』のことです。
翻弄の類語にあたる『手玉に取る』は、お手玉で遊ぶように、自分の思い通りに相手をコントロールするという意味です。
自分が相手にコントロールされているときは、『手玉に取られる』と表現することができます。
手のひらの上で踊らせる
翻弄の類語として『手のひらの上で踊らせる(踊らされる)』があります。
範囲の狭い手のひらの上で転がすように、相手を自分の思うままに操るという意味です。『手のひらで転がす(転がされる)』も同じ意味を表します。
手玉に取ると手のひらの上で踊らせるの場合、「運命に翻弄される」のような、環境に振り回されている場合の翻弄と言い換えることはできません。
もてあそぶ
『もてあそぶ』という言葉には、「慰みものにしていじくる」や「まじめに扱うべきものを、おもちゃのように扱う」という意味があります。
もてあそぶは、翻弄を構成する言葉ですが、単独で使う方が「相手を自分の思うままに扱う」というニュアンスが強めです。
もてあそばれるは、「数奇な運命にもてあそばれる」という言い回しがあるように、環境に振り回されている場合に使うケースもあります。
もてあそぶを含む言葉には翻弄の他、「おもちゃにしてもてあそぶこと」という意味がある『玩弄(がんろう)』があります。
「翻弄」を使った例文
日常生活の中でよく見かける翻弄という言葉は、意味を把握すれば自分で使う機会も増えてきます。実際にどう使うか、例文を見ていきましょう。
恋愛にかかわる場面
翻弄は好きな人に振り回される様子を表現するときによく使われます。相手が意図的でもそうでない場合でも「思うままに扱う(扱われる)」のニュアンスが強めです。
日常や物語中の恋愛にかかわる場面で見かけることが多いため、意味と使われ方を把握しておきましょう。
・好きな人の思わせぶりな発言に翻弄されて、ドキドキしたりガッカリしたり忙しい
・彼女には男を翻弄する小悪魔的な魅力がある
・恋愛の駆け引きをしていたつもりが、いつの間にか彼に翻弄されっぱなしで悔しい
ビジネスにかかわる場面
翻弄は恋愛だけではなく、ビジネスにかかわる場面でも使うこともできます。
この場合、翻弄の持つもてあそぶの意味は薄くなり、「自分の意思に関係なく状況がひるがえり、慌ただしくなっている」というニュアンスが強くなることを意識しましょう。
・二転三転する会社の方針に翻弄され、従業員の不満が溜まっている
・異動先の部署で、慣れない仕事に日々翻弄されている
・取引先を翻弄する巧みな話術は、営業担当として大きな武器になる
人生にかかわる場面
「自分の力ではどうしようもない環境の変化に振り回される」というニュアンスで、人生にかかわる場面でも翻弄を使うことができます。
・この映画の見どころは、過酷な運命に翻弄される主人公が、次々と困難を克服していくストーリーである
・就職してからというもの、仕事に翻弄されて時間が取れず、以前のように趣味を楽しんだり友達と遊んだりができない
・インターネットやテレビで氾濫する情報に翻弄され、何が正しいのか、分からなくなってしまった
まとめ
『翻弄』の意味は、「相手の意思を無視し、いいように扱うこと」と「自分の責任ではない環境の変化に、右往左往させられること」です。人や環境に振り回されている、と感じたときに使うことを覚えましょう。
類語として『手玉に取る』や『手のひらの上で踊らせる』、『もてあそぶ』があり、いずれも多かれ少なかれ悪意が含まれています。マイナスのニュアンスになるため、使う相手や場面には注意しましょう。
翻弄は恋愛にかかわる場面から、ビジネスや人生にかかわる場面まで幅広く使うことができます。日常会話だけではなく、本や映画などの解説にも頻繁に使われるため、意味や使われる状況をきちんと把握しておきましょう。