飲み会で『アルハラ』を受けそうになった場合、どのように対処すればよいのでしょうか?場の雰囲気を壊さずにお酒を断る方法や、アルハラを回避する方法を解説します。
アルハラとは
『アルハラ』は命の危険にも直結するハラスメントです。これまでは『酒の席でのこと』と許容されてきた数々の行為が、実はアルハラである可能性が高いことをご存じでしょうか?
自分が加害者や被害者にならないためにも、どんな行為がアルハラに該当するかを確認しましょう。
飲酒の場で起こる嫌がらせ
アルハラ(アルコール・ハラスメント)は、『飲酒に関連する嫌がらせ』を指します。
お酒を意味する『アルコール(alcohol)』と、嫌がらせや迷惑行為を意味する『ハラスメント(harassment)』から成る和製英語で、『アルハラ』と略されるのが一般的です。
ハラスメントには、パワハラやセクハラ、マタハラなどさまざまな種類がありますが、アルハラの特徴は命の危険を招く恐れがあることです。過去には、飲酒の強要で急性アルコール中毒を引き起こし、死に至った事例もあります。
ハラスメントにおいて、行為者の意図は関係がありません。嫌がらせをするつもりがなくても、結果的に相手が不快だと感じればハラスメントが成り立ちます。
アルハラと定義される行動
特定非営利活動法人ASKでは、『アルハラの定義5項目』として以下の行為を挙げています。
・飲酒の強要
・一気飲ませ
・意図的な酔いつぶし
・飲めない人への配慮不足
・酒酔いによる迷惑行為(暴言・暴力・セクハラなど)
アルハラは企業やサークルなどの飲み会の席で起こりやすく、その場にいる人々にハラスメントの自覚がないケースも少なくありません。
恒例行事としてメンバーに無理やり『回し飲み』をさせたり、上司の立場を利用して部下に飲酒を強要したりする行為は、代表的なアルハラです。
飲酒ができない人がいるのにもかかわらず、ノンアルコール飲料を用意しないのもアルハラの一種と見なされます。
アルハラを避ける方法
会社でのアルハラは、職場の人間関係や仕事にも影響を与えます。
何事も起きてしまってからでは遅いため、お酒をうまく断れない人は、飲み会への参加を控えたり、『飲めない宣言』をしたりして、アルハラを事前に回避しましょう。
あらかじめ「飲めない」と伝えておく
体質的にお酒が飲めない人は、参加前に飲めないことを伝えておけば、飲み会でお酒を断る手間が省けます。飲めない人がいるのを考慮し、ノンアルカクテルや料理が充実したお店を選んでくれる幹事もいるはずです。
とはいえ、「参加はしますが、お酒は飲めません」と伝えると、「無理していないだろうか?」「飲めないのに参加したの?」と思われてしまう可能性もあります。
周囲に気を遣わせないためにも、「お酒は飲めませんが、みなさんとの仲を深めたいので参加します」と、楽しむ気持ちを伝えるのがベターです。
料理を楽しむのもよし、酔っている人に合わせて一緒に盛り上がるのもよし、お酒が飲めない人なりの楽しみ方を模索しましょう。
飲み会に参加しない
押しに弱い性格の人や場の雰囲気に流されてしまう人は、飲み会自体に参加しない選択肢もあります。会社の飲み会は基本的に自由参加なので、参加の強制はされないでしょう。
ただ、飲み会への不参加が続くと『協調性がない』『付き合いが悪い』といったイメージを抱かれることもあります。
とりわけ、会社の懇親会は『親睦を深めること』を目的としているので、一切参加しないと決めた人は、飲み会以外の場面で人間関係の構築に努めなければなりません。
参加を断る際は、誘ってくれたことに対する感謝を述べた上で、「夜は難しいのですが、昼間ならぜひ参加したいです」など、できるだけ前向きな言葉を使うようにしましょう。
上手なお酒の断り方
『酒は潤滑油』と言われるように、適度な飲酒は会話を弾ませ、人間関係を円滑にします。アルハラへの意識が高まっているとはいえ、飲み会でお酒を勧めるのはごく普通の行為です。
「場の雰囲気は壊したくないが、お酒は飲みたくない」という人は、上手に断る術を身に付けましょう。
「お酒が弱いんです」
お酒が苦手な人は、「お酒が弱いんです」「体質的にお酒が飲めなくて」と、正直に伝えるのがベターです。相手が常識のある社会人なら、飲めない人に強要はしないはずです。
最初の飲み会で『この人はお酒が飲めない』と周囲に認識されれば、以後は勧められることも減るでしょう。
ハラスメント意識が高まりつつある昨今、自分が意図せず加害者になってしまうのを懸念する人もいます。飲めない人は飲めないことをはっきり公言した方が、無用なトラブルを引き起こさずに済むでしょう。
せっかく築いた人間関係を台無しにしないためにも、勇気を持って自分の気持ちを伝えることが大切です。
「今日は車で来ているので」
車やバイクで来ていることを理由に、お酒を断る方法も有効です。日本の道路交通法では、飲酒運転が刑罰の対象となるのは誰もが知るところです。
飲酒運転では『運転をした人』だけでなく、『運転することを分かっていながら酒類を勧めた人』や『その車に同乗した人』も処罰の対象となります。
「車で来ているので飲めません」と言えば、勧める人はいないでしょう。
参考: 飲酒運転の罰則等 | 警視庁
「体調があまりよくなくて」
お酒を断るときは、飲めない理由をきちんと相手に伝えるのがポイントです。
「体調が優れないので」「医者に控えるように言われていて」「断酒中なんです」と伝えれば、相手も納得してくれるでしょう。
嘘をつくのは気が進まないかもしれませんが、気分が乗らないときや早めに上がりたいときは、体調を理由に断るのが無難といえます。
体調がよくないことを伝えると、「無理に誘ってしまったかも」と気にする人がいるため、相手に余計な心配をかけないような伝え方をする必要があるでしょう。
アルハラを受けたときは
ハラスメントは被害を受けた人が声を上げなければ、問題は解決しません。行為者が自分の行動を変える必要性に気付かない限り、同じことが幾度も繰り返されるのです。
アルハラを受けた場合、どう対処すればよいのでしょうか?
はっきりと断る
飲みたくないときは、曖昧にせずにはっきりと断りましょう。
飲めない理由を正直に伝えれば、大抵の人は強要はしません。しかし、『伝統』や『慣例』と称して無理やり勧めてきた場合は、「飲めません」「困ります」と、毅然とした態度で意思表示をする必要があります。
断るのが苦手な人は、「断るのは悪いこと」と思っている節があるようです。
しかし、断ることもお酒を飲まないことも悪いことではありません。自分の認識を変えると同時に、普段からきちんと意思表示をするように心がけましょう。
はっきり断るのが苦手な人は、仲のよい同僚を味方に付けて、助け舟を出してもらうのも一つの手です。
さりげなく席を立つ
宴会がスタートして酔いが回ってくると、飲めない人にお酒を強要しようとする人が増えてきます。悪気はなくても「飲め、飲め」としつこく勧められると、断るのも面倒になってくるでしょう。
お酒の席に慣れている人であれば、飲むふりをして適当に付き合うことができますが、そうでない人にとっては苦痛でしかありません。
そんなときは、「お手洗いに行ってきます」と席を立ち、その場を一旦離れましょう。戻ったらさりげなく席替えをし、お酒を強要する人のそばには近寄らないようにします。
強要を免れそうにないときは、同僚や幹事に断りを入れて、そのまま退席しましょう。
社内外の窓口に相談する
一気飲ませ・罰ゲーム・新人つぶしなどが組織で習慣的に行われており、誰も注意を促す人がいない場合は、社内のコンプライアンス窓口や労働組合、ハラスメント対策室などに早めに相談しましょう。
自治体の相談窓口・労働局・飲酒に関わるNPO法人などへの相談も有効です。
嫌がる相手に飲酒を強要すれば『強要罪』、急性アルコール中毒を引き起こした場合は『傷害罪』が成立する可能性があります。強要を止めなかった人も『傷害の共犯』となるケースがあるため、アルハラの見て見ぬふりはできません。
まとめ
少量の飲酒はコミュニケーションを円滑にし、ストレスを緩和させますが、誰もがお酒が飲めるわけではありません。
飲み会に参加している人の中にも、『飲みたくても飲めない』『体質的に受け付けられない』という人が一定数いるのです。
ハラスメントへの意識は年々高まっていますが、アルハラから自分を守るための術を身に付けておく必要もあります。はっきりと断る勇気と、組織のアルハラを許さない強い気持ちを持ちましょう。