職場に責任転嫁する人が身近にいると、問題ごとを押しつけられてしまったり、余計な仕事が増えてしまうといったトラブルに見舞われます。そこで、責任転嫁する人の特徴や対策を紹介します。責任転嫁されないように、うまく立ち回りましょう。
責任転嫁の意味と語源
『責任転嫁』とは、具体的にどのような意味なのでしょうか?語源や『嫁』という漢字が使われている理由についても解説します。
責任を他人に押し付けること
『責任転嫁(せきにんてんか)』の意味は、本来自分が追うべき責務・任務・罪・失敗などを他人に押し付けることです。例えば、自分が取引先との大事な会議を忘れていたのにもかかわらず、部下が間違った日程を伝えていたと人のせいにするなどが挙げられます。
文章では、「彼はいつも自分の誤りを責任転嫁するので、同僚から敬遠されている」「子どもの学力が伸びないのを学校のせいだと責任転嫁する親もいる」のように使うことが可能です。
なぜ「嫁」が付くのか
『嫁』という漢字が使われている理由は、『転嫁』の意味と関係があります。『転』は別の場所に移す、『嫁』は嫁がせるという意味があります。
二つの漢字を組み合わせた『転嫁』は、一度嫁入りした人が再び別の場所に嫁入りすること、つまり『再婚』という意味です。これが、『責任を他人に移す』という意味として使われるようになったとされています。
また、『嫁』には、責任などを押し付けることを表す『被ける(かずける)』という意味があることも理由とされています。
なお、『責任転換』という表現を目にすることもありますが、これは誤用です。『転換』は物事を別の方向や方針に変えることで、『転嫁』とは意味が異なります。
責任転嫁する人の特徴
責任転嫁をしてしまうのはなぜでしょうか?隠された心理を紹介します。
自分の評価が下がるのが嫌
自分のミスなどを他人のせいにしてしまうのは、周囲の自分に対する評価を下げたくないという心情が隠れていることが少なくありません。
周囲に認められたいという『承認欲求』が強い人が多く、ミスや失敗によって『仕事ができない人』と思われてしまうのではないかと不安に駆られるのです。その結果、人に責任を押し付けてしまうと考えられています。
プライドが高いのも特徴で、ミスなどを認められないことも責任転嫁につながっています。誤りを認めることは『自分が劣っていることを受け入れることになる』と考える傾向があり、誤りを認めることでプライドが傷つくため、自分を守るために責任を押し付けてしまうのです。
責任を追及されるのが怖い
社会人になると、責任を持って行動することが求められます。得に職場では、勤務年数が長くなればなるほど、背負う責任も増していくものです。しかし、中には責任を追及されるのが怖いと感じる人もおり、責任逃れをしてしまうこともあります。
できるだけ責任を負いたくないと考える人は、最初から万が一のときに備えて言い逃れができる状況を作っていることも少なくありません。
例えば、上司からの指示で不明慮な点があっても、あえて確認をせず曖昧にしておくなどです。問題が発生したときに、「指示されていません」と言い逃れができる状態にしているのです。
自分は完璧だと思い込んでいる
自分が完璧だと思い込んでいる人は、無意識に自分のミスを人に押し付けていることも少なくありません。『完璧な自分が失敗するわけがない』という確固たる自信があるため、自分には責任がないと思い込んでしまうのです。
最初は自分の非を認めていても、話しているうちに無意識に言い逃れをしてしまう人もいます。自分の中に理想の自分像が出来上がっているため、無意識に理想像に合わせて事実を変えてしまうのでしょう。
本人は自覚がないため、周囲の人は困惑してしまうことも少なくありません。
責任転嫁をする上司・同僚が職場にいると?
どのような仕事にも責任が伴います。職場に責任転嫁する人がいると、どういったデメリットがあるのでしょうか?
チームの雰囲気が悪くなる
責任転嫁をする人がいるということは、責任を押し付けられ不快な思いをする人がいるということです。被害に遭った人たちは、理不尽な言動に当然不満を感じます。不満がたまるとチームの雰囲気が悪くなり、仕事に支障をきたすこともあるでしょう。
また、『何かあったときに、自分のせいにされるかもしれない』と不安がよぎるため、言い逃れをする人とは関わりたくないと思うメンバーが生まれます。業務上で確認したいことがあってもコミュニケーションが取れないことで、業務がスムーズに運ばないことも懸念されます。
新たなことに挑戦しにくくなる
企業の発展のためには、新なことに挑戦することも大切です。しかし、責任転嫁する人がいると、新たなことにチャレンジして失敗することがマイナスになるという風潮ができやすくなります。
保身に走る人が増え、指示されたことや決められたことを行うことだけが評価される傾向が強くなってしまうでしょう。
また、ぬれぎぬを着せられないようにリスクを回避することが優先されてしまい、チーム内の生産性が低下することもデメリットです。本来であれば気軽に聞けることも聞きづらくなり、業務が滞ったり、仕事へのモチベーションが下がったりすることもあるでしょう。
責任転嫁で泣き寝入りしないための対策は?
責任転嫁をうまくかわす方法を三つ紹介します。相手や自分の置かれている立場に合う対策を選び、実際に試してみましょう。
責任範囲を明確にする
どこからどこまでが自分の負うべき責任なのか、明確にすることが大切です。口頭での指示では証拠として残らないため、できるだけメモに残すようにしましょう。指示を受ける際は、できれば1対1ではなく、第三者がいる席で確認するのがおすすめです。
指示の内容をまとめ、確認の意味も込めてメールを送ると、責任の範囲がより明確になります。Ccに関係者を入れれば客観的な証拠としても残るため、万が一のときのリスク回避にもなります。
立場が上の人を味方につける
職場であれば、立場が上の人に相談して対処してもらうのもよいでしょう。相手が上司の場合は、直接は言いにくいですし、関係が悪化してしまうリスクもあります。
本人に直接訴えるよりも、立場が上の信頼できる人に相談し対処してもらう方が角が立ちにくいでしょう。
他にも被害に遭った人がいれば、一緒に相談するのがおすすめです。1人よりも大人数で訴えた方が、状況が改善されやすいでしょう。
自分の意見を主張する
相手との関係や状況によりますが、自分の意見をきちんと主張するのも一つの対処法です。ただし、感情的に反論しないように気を付けましょう。反論することで自分の評価を下げる結果になるリスクがあるためです。
責任転嫁のぬれぎぬを晴らすことができなければ、逆に責任逃れをしていると勘違いされてしまう可能性があります。自己主張するときは、しっかりとした証拠があることや道筋を立てて論理的に説明することが大切なポイントです。
まとめ
責任転嫁には『自分の評価を下げたくない』『責任を負うのが怖い』『自分は完璧だと思い込んでいる』という心理が隠れています。
責任転嫁する人が職場にいると、チームの雰囲気が悪くなったり、新しいことにチャレンジしにくくなったりするというデメリットがあります。
対処法としては、『責任の範囲を明確にする』『立場が上の人に相談する』のがおすすめです。相手との関係性によっては、『自己主張をする』ことで改善に向かうこともあるでしょう。
ただし、どの場合も感情的にならずに冷静に対処することが大切です。