普段よく使う『宜しく』には、どのような意味があるのでしょうか?漢字の成り立ちや使い方、『宜』が含まれた熟語とともに紹介します。また、漢字と仮名の両方がよく使われていますが、どちらが正しいのかについても解説します。
普段よく使っている「宜しく」とは?
『宜しく』には、どのような意味があるのでしょうか?漢字の成り立ちや表記についても解説します。
「ちょうど良い具合に」の意味がある
『宜しく』は、『ちょうど良い具合に』『程良く』という意味です。中国から伝わった漢字は、元々の意味と違う使われ方がされているものもありますが、『宜』は中国語でも同じような意味で使われています。
相手に好意を示したり、別の人に好意を伝えてもらったりするときにも用いられる言葉です。何かを依頼するときに付け加える言葉でもあります。
「宜」の漢字の成り立ち
音読みで『ぎ』と読む『宜』は、屋根を表す『うかんむり』と『まな板(俎)』を意味する『且』が組み合わさった漢字です。『家の中で肉などのお供え物を供えること』を表していました。
具体的には、宗教施設のような場所でお供え物が置かれている様子を表していたと考えられており、『ちょうど良い具合に』という意味になったとされています。
「宜しく」は基本的に仮名で使う
ビジネスメールなどで『宜しく』と『よろしく』の両方が使われていますが、基本的に『仮名』を使うのが適切だとされています。文化庁による『常用漢字の字種・音訓で書き表せない語は仮名書きにする』という決まりがあるためです。
『よろしく』の元々の意味は『相手に便宜を図ってもらう』で、『便宜』という言葉から『宜』が使われたのです。つまり『当て字』であり、前述の決まりに当てはまるため、仮名書きにするのが正しいとされています。
参考:現代の国語をめぐる諸問題について(審議経過報告)|文化庁
「よろしく」の使い方
『よろしく』の使い方を紹介します。ビジネスシーンで多用するフレーズでもあるので、覚えておくと役立つでしょう。
「よろしくお願いいたします」
口頭でもビジネスメールなどでもよく使われているフレーズが、『よろしくお願いいたします』です。相手に何かを依頼するときの決まり文句として使われています。
『いたします』と仮名書きにするのが正しい表記です。『いたす』は『する』の謙譲語で、自分を下げて相手に敬意を示す表現になります。『致します』とすると、『至らせる』『及ぼす』という別の意味になってしまうので注意しましょう。
・明日の会議の件、よろしくお願いいたします
・すぐに対応させていただきますので、よろしくお願いいたします
「何卒」や「今後とも」などを付ける
ビジネスメールや手紙などで、結びのフレーズとして使われることも多いです。『何卒』や『今後とも』などと一緒に使われます。
『何卒』を付けると、より丁寧でフォーマルな印象になります。『お願いします』とするとアンバランスな印象になるため、『いたします』や『申し上げます』と一緒に使うようにしましょう。
また、かしこまった印象で、相手によっては違和感が出てしまうこともあるため、状況に合わせて使い分けましょう。
・至らない所が多々ありますが、今後ともよろしくお願いいたします
・ご検討のほど、何卒よろしくお願いいたします
「宜」が含まれる熟語とその意味
『宜』を使った熟語と意味を紹介します。例文も合わせて紹介するので、正しく使うための参考にしましょう。
マイナスな意味での使い方もされる「便宜」
『便宜(べんぎ)』は、『都合が良いこと』や『特別な計らい』という意味があります。元々は『相手にとって良いように』というニュアンスがある表現で、ネガティブな意味はありません。
しかし、『便宜上』や『便宜を図る』のような言い回しで使われるときは、『本来良くないことだが、一時的にそのようにする』『ずるいことをする』というネガティブなイメージを与えてしまうこともあるため、注意しましょう。
・便宜上、一斉メールで送ります
・参加者の便宜を図り、開始時間を遅らせた
状況に合った判断をする「適宜」
『適宜』は『てきぎ』と読み、『状況に合った判断をする』という意味です。それぞれが、そのときの状況に適切な対応をするという場合に使われます。
・プレゼンテーションの資料は、適宜アップデートします
・マニュアルに記載がないものに関しては、適宜対応願います
まとめ
『宜しく』は『ちょうど良い具合』という意味があり、『よろしくお願いいたします』というフレーズで使われることが多いです。仮名書きにするのが正しい表記になります。
ビジネスシーンでは使用頻度が高いフレーズなので、ワンパターンにならないように状況に合わせて『何卒』や『今後とも』を加えて使ってみましょう。
『便宜』や『適宜』もよく使われる熟語です。『便宜』にはネガティブな印象もあるため、使うときには注意が必要です。誤解を招く恐れがあるときは、別の表現を使うと良いでしょう。