『善処』には、どのような意味があるのでしょうか?使い方や注意点を紹介します。似た表現との使い分けや、相手から言われたときの対処法についても触れるので、的確に使えるようになりましょう。
「善処」の意味とは
『善処』は、頻繁に使われる言葉ではないため、実は意外と意味を理解していないという人もいるのではないでしょうか?まずは、言葉の意味から見ていきましょう。
状況に応じて適切な判断、処置をとること
『善処』は『ぜんしょ』と読み、『状況に応じて適切な判断や処置をとること』という意味です。『できる限りの努力をします』というニュアンスが含まれた表現になります。
『善処します』のように丁寧語として使われます。『善処いたします』とより丁寧な表現にすることも可能です。
使用する際に注意したいのが、『適切に善処します』という言い回しです。『一番最初』などと同様に、同じ意味が重なった『二重表現』になってしまうので気を付けましょう。
仏教用語では来世の浄土のこと
『善処』は仏教用語でもあり、世界を『六道』として表した場所を指す『善処』のことで、『善所』と書かれることもあります。『来世に生まれるべき良い場所』という意味で、『来世の浄土』のことを指します。
「善処」の使い方と注意点
『善処』は、どのように使われるのでしょうか?使用する際に注意したいポイントも紹介します。
「善処いたします」のように使う
ビジネスメールなどでは、『します』よりも、より丁寧な『善処いたします』という表現が使われることが多いです。『させていただきます』など文末を変えて使うことも可能なので、使う相手や文脈に合わせて使い分けましょう。
・ご依頼いただいた見積もりに関して、善処いたします
・善処いたしますので、少しお時間をいただけますでしょうか
・プロジェクトに関しましては、前向きに善処させていただきます
互いに認識がズレやすい表現
一見、ポジティブな印象を受けますが、お互いの認識のズレが起こりやすく、トラブルの原因になるリスクもあります。
たとえポジティブな意味で使ったとしても、受け取る側にしてみたら、「どのような対応を意味しているのだろう」と曖昧に感じられることもあります。
また、その場をうまくやり過ごすための口実のような印象を与えることもあるでしょう。「対応できたらします」というニュアンスに聞こえてしまうこともある点を把握しておくことが大切です。
できる限りの努力はするが、相手が望むような対応ができるか分からないときに使うのも注意が必要です。過度な期待をさせてしまい「善処すると言ったのに、断られた」といったトラブルも考えられます。
前後でどのように処置するか説明する
言葉の持つ曖昧さからトラブルにつながるのを避けるために、前後でどのように対処するのか説明するようにしましょう。『いつやるのか』『どのように対処するのか』などを説明すれば、認識のズレを回避できます。
「価格の件につきましては、善処させていただきます。社内で話し合い、今週中にご報告させていただきます」のように回答すれば、相手にどのように対処するのか明確に伝わるでしょう。
相手の希望に添えることが確実な場合は、別の表現を使うのもトラブル回避になります。
類義語を使ったフレーズと意味の違いを紹介
類義語を使ったフレーズも覚えておくと表現の幅が広がります。それぞれの意味の違いも見てきましょう。
「対処」
『直面しているもの』を意味する『対』と『物事を良いように取りさばくこと』を意味する『処』を組み合わせた『対処』に言い換え可能です。実際に何らかのアクションをとるという点がポイントになります。
・予期せぬ問題が起きたときに、どう対処できるかが肝心だ
・製品の不具合に関して、すぐに対処いたします
「尽力」
『尽力(じんりょく)』は、『目的達成のために力を尽くすこと』です。これから起こることに対して使い、自分のためにする努力ではなく、他人のためにすることを意味します。
相手の行動に対しても使え、目上の人には尊敬を示す『ご』を付けた『ご尽力』を使いましょう。
・セミナー成功のため尽力いたします
・皆さまのご尽力のおかげで、プロジェクトを成功させることができました
自分から人に「善処」をお願いできる?
相手に対して『善処』をお願いすることはできるのでしょうか?また、相手から『善処します』と言われたときの対処法についても紹介します。
依頼の文に使える
『善処』は、相手に依頼するときに使用可能です。できるだけこちらの要望に応じてほしいという気持ちが伝わります。『お忙しいところ恐れ入りますが』などクッション言葉と合わせて使うと、柔らかく丁寧な印象になります。
・ご多忙中、恐縮ですが、ご善処いただきたくお願い申し上げます
・諸事情おありかと存じますが、できるだけ早い善処をお願い申し上げます
・師走の忙しい時期で恐縮ですが、今回のトラブルについての対策を善処いただきたく、お願い申し上げます
相手から「善処します」と言われた場合
『善処します』は、『できる限り努力します』『いったん保留させてください』という意味で使われることが多いフレーズです。
処置しますという意味ではありますが、ポジティブな結果が期待できるというわけではありません。そのため、後日確認するなどのフォローが必要でしょう。
場合によっては、『対応できるか保証できない』『対応できない』というニュアンスの意味合いにもなります。特に公的機関からの返答で使われる場合は、『対応できない』という意味になることも少なくありません。
立場上、はっきりと断れないため、取りあえず『善処します』という言葉が用いられるのです。
「善処してほしい」意味を持つフレーズ
同じ意味を持つ言い換えの表現を紹介します。ビジネスシーンでよく使われる表現なので、覚えておくと役立つでしょう。
「お力添えいただきますようお願いいたします」
『力添え』は、『手助け』『サポート』『援助』『協力』といった意味があります。尊敬を示す『お』を加えることで目上の人に対しても使え、目上の人から協力を得たいときによく使われます。
・海外進出の件で、お力添えいただきますようお願いいたします
・お忙しい中大変恐縮ですが、商品開発につきましてお力添えをいただきますようお願いいたします
「お取り計らい賜りますようお願いいたします」
『取り計らい』は、『処置』『判断』『配慮』という意味があります。『お』を付けることで丁寧な表現になるので、目上の人にも使える表現です。
『賜る(たまわる)』は、『もらう』の謙譲語です。自分を下げて相手に敬意を示す言葉になります。
・社長の訪問の件につきまして、お取り計らい賜りますようお願いいたします
・急な納期変更でお手数をおかけしますが、お取り計らい賜りますようお願いいたします
まとめ
『善処します』は、はっきりと回答できないときに使える便利な表現です。しかし、曖昧な表現となるため、互いの認識のズレが起こりやすく、トラブルにつながるリスクもあります。
使うときは、いつどのように対応するのかなど詳細を説明することが大切です。場合によっては、対応できないという意味でも使われるので、相手から言われたときも、できるだけ詳細を確認するようにしましょう。
『対処いたします』など、似た意味の別のフレーズもあるので、状況に合わせて使い分けましょう。