ビジネスシーンでよく使われる『拝見する』には、どのような意味があるのでしょうか?漢字の成り立ちや使う場面・使い方を紹介します。似た意味でも違う使い方をする『拝読』や『お目にかかる』についても合わせて解説。
「拝見」の意味とは
まずは、『拝見(はいけん)』の意味を見ていきましょう。漢字の成り立ちについても紹介します。
「見る」の謙譲語
『拝見』の意味は『見る』で、自分をへりくだって相手に敬意を示す『謙譲語』のため、『謹んで見る』という意味合いになります。
『目を通す』や『読む』という意味もあり、『内容や目的を把握した』というニュアンスも含まれた表現です。謙譲語なので、動作の主体が『自分』になります。
「拝」が持つ意味と漢字の成り立ち
『拝』は、音読みでは『はい』、訓読みでは『おが(む)』と読みます。
手を意味する『てへん』と、茂った草を意味する4本の横線と1本の縦線が組み合わさった漢字です。両手に持った草を神にささげる様子を表すことから、『神に祈る』『拝む』という意味になりました。
敬意を示す言葉であるため、目上の人に使います。部下など目下の人には使わないので、注意しましょう。
「拝見」を使う主な場面
『拝見』は、どのような場面で使うのでしょうか?例文と合わせて紹介します。
資料、メールを確認したとき
『拝見』は、ビジネスシーンで目上の人から資料やメールを受け取り内容を確認したときによく使う言葉です。口頭でもメールでも同様に使います。
・(依頼していた書類を相手方から受け取った際)ありがとうございます。早速、拝見します
・プロジェクトの件に関してメールを拝見しました。いくつか確認させていただきたい点がございますので、お手隙の際にご連絡いただけますでしょうか?
人に会ったとき、貴重なものを見たときにも
目上の人に会ったときや、貴重なものを見せてもらったときなどにも『拝見』が使われます。会えてうれしく思う気持ちや感謝の気持ちが込められた表現です。
・先日は久しぶりにお元気な姿を拝見でき、大変うれしく思っております。お忙しい中、お時間を割いていただきありがとうございました
・代々受け継がれている家宝を拝見することができ、大変光栄です
「拝見」の使い方
『拝見』はビジネスシーンでよく使われる言葉ですが、間違った使い方をしている人もいます。正しい使い方を紹介するので、確認しましょう。
正しくは「拝見します」
目上の人に対して『拝見します』というのは、敬意が足りないように感じる人もいるかもしれませんが、正しい使い方です。逆に、一見、正しい敬語表現に思える『拝見いたします』は間違いになります。
『拝見』は謙譲語で、『いたします』は『する』の謙譲語なので、『二重敬語』になっているのが理由です。
しかしながら、『拝見いたします』も多用されていることもあり、『拝見します』の方が違和感のある表現と捉えられることもあり、必ずしも間違いとは言い切れない側面もあります。
同様に『拝見させていただきます』も二重敬語になり誤用ですが、見聞きすることも少なくありません。
相手の動作に対しては「ご覧になる」
相手が動作の主体のときに、謙譲語である『拝見』を使うのは間違いです。例えば「提出した企画書を拝見していただけましたか」などです。
相手が動作の主体のときは尊敬語を使い、『ご覧になる』や『見られる』を使いましょう。以下の例文のように、文脈に合わせて使い分けます。
・お忙しい中、提出した企画書をご覧いただきありがとうございました
・昨日の中秋の名月は、見られましたか
・詳細については、こちらの資料をご覧ください
「拝見」と似た意味を持つ謙譲語
『拝見』と似た意味を持つ言葉を例文とともに紹介します。どちらも謙譲語で目上の人に使える便利な表現ですが、主体が自分か相手かという違いに注意して使いましょう。
「拝読する」は書いた本人に対して使う
『拝読(はいどく)』は『読む』の謙譲語で、自分が読んだときに使う表現です。メール・資料・本・手紙など、基本的に『読み物』であればどのようなタイプのものにも使えます。
・出張のスケジュール変更に関するメールを拝読しました
・先生の論文を拝読しました
・プロジェクトの企画書を拝読したところ、記述に誤りがあったのでご連絡させていただきます
「お目にかかる」は人に対してのみ使う
『お目にかかる』は、『会う』の謙譲語です。『お会いする』と同じ意味で使えますが、対象が『人』であるときに使う言葉である点に注意しましょう。
・〇〇様にお目にかかることができ、大変光栄です
・せっかくお越しくださったのに、出張中でお目にかかれず残念です
・次回の合同プロジェクトで、またお目にかかれることを楽しみにしております
まとめ
『拝見』は、見たことや読んだことを相手に伝える便利な表現です。ただし、動作の主体が自分の『謙譲語』である点に注意して正しく使うことが大切です。
いつも同じ表現にならないように、状況に応じて似た意味の『拝読する』や『お目にかかる』も使ってみましょう。