『お見かけする』は、目上の人に使える敬語のため、覚えておくと便利な表現です。そこで、『お見かけする』の意味や使い方・似た言葉との違いを紹介します。状況に合わせて適切な表現を選べるようになりたいですね。
「お見かけする」とは?
『お見かけする』は、どのような言葉なのでしょうか?その意味やどのような状況で使う言葉なのかを紹介します。
「見かける」の敬語表現
『お見かけする』は、『見かける』の敬語表現です。敬語には、相手に敬意を示す『尊敬語』と自分がへりくだることで相手に敬意を示す『謙譲語』、丁寧な表現で相手に敬意を示す『丁寧語』があります。
『お見かけする』は、『お~する』を付け加えた謙譲語です。『お~する』『ご~する』と付け加えて作られる謙譲語のため、『付け足し型』とも言われています。
相手を見たけれど、声を掛けなかったという状況で使われます。
- レストランでお見かけしましたが、ご家族で食事をされていたので、お声は掛けませんでした
- 時々、社長を駅でお見かけします
- 先日、〇〇さんをお見かけしたときは、お元気そうでした
「見かける」は意図せず目につくものに使う
『見かける』は、偶然見たというように意図せず目につくものに使う言葉です。わざわざ見に行ったときや探して見たときなどには使いません。
- 夏祭りの日には、美しい浴衣を身にまとった女性を多く見かけます
- 東京タワーを背景に記念撮影している観光客をよく見かける
- SNSがはやってから、レストランで料理の写真を撮っている人を見かけるようになった
「お見かけしましたか?」は誤り
一見正しいように思えますが、『お見かけしましたか?』は誤りです。『お見かけする』は敬語であっても、『謙譲語』であることが理由になります。
謙譲語も尊敬語も相手に敬意を示す敬語ですが、大きな違いは『動作の主体』です。動作の主体が自分のときは謙譲語、相手のときは尊敬語を使います。
相手に見かけたか聞く場合は、動作の主体が相手なので尊敬語を使います。
「お見かけする」と似た言葉との違い
『お見かけする』と混同しやすい似た言葉に『お見受けする』があります。意味や使い方など違いを見てきましょう。
「お見受けする」の意味
『お見受けする』にも、意図せず目につくという意味がありますが、ニュアンスの違いがあります。『お見かけする』は、こちらから目を留めるというニュアンスがあり、『お見受けする』は対象が目に入ってくるというニュアンスです。
『見て受ける』という意味もあり、『見て判断する・感じ取る』という意味合いがあります。例えば、「先日、先生に道でばったり会ったときに、何だか顔色が悪く体調が優れないようにお見受けした」のように使います。
実際に聞いて判断したのではなく、見て本質を感じ取った場合に使いますが、あくまでも見て判断したことであり、憶測の域を出ないという曖昧さがある表現です。
「お見受けする」の使い方
『お見受けする』は敬語のため、ビジネスシーンでもよく使われる表現です。自分が動作の主体の謙譲語である点に注意して使いましょう。
- 企画が順調に進んでいるようにお見受けしますが、日程に無理がございましたらご相談くださいませ
- 新体制になり、生産性が向上しているようにお見受けします
『お見受けしたところ~』という言い回しもよく使われ、相手の様子や状況を見て配慮したことを丁寧に伝えることができます。
- お見受けしたところ、お忙しそうですので、プロジェクトの件はこちらで進めさせていただきます
- お見受けしたところ、疲労がたまっているようですが、お体は大丈夫でしょうか
「見ました」の意味を持つ敬語
『見ました』と同様に使える敬語は、他にもあります。具体例とともに使い方を紹介するので、正しく使いこなしましょう。
「拝見しました」
ビジネスシーンで使用頻度が高い言葉の一つが、『拝見しました』です。メールや資料などを見たことを相手に丁寧に伝える便利な表現で、文章だけでなく口語で使われます。
- メールでいただいたプロジェクトの企画書を拝見しました
「確認しました」
丁寧語である『確認しました』も、メールや資料を見たことを伝えるのに使いやすい表現です。
- 修正いただきました資料を確認しました
- 先方からのメールを確認しましたところ
目上の人や取引先の人へは、より敬意を示す謙譲語である『確認いたしました』を使うのが一般的です。
- 出張のスケジュールについて、確認いたしました
- セミナーの参加者の件、確認いたしました
まとめ
『お見かけする』は、目上の人や立場が上の人を偶然見かけたことを伝えるときに使われる敬語表現です。ビジネスシーンでも使われることが多いですが、『お見かけしましたか?』といった誤用もしやすいので注意が必要です。
『お見受けする』や『拝見しました』『確認しました』などに言い換えることもできるため、状況に合わせて適切な言葉を使いましょう。