『ご愛顧のほど』は、ビジネスシーンで取引先への手紙やメールなどに使える便利な表現です。毎回同じフレーズにならないよう、言い換えできる表現も合わせて覚えておきましょう。
「ご愛顧のほど」の意味は?
まずは、『ご愛顧のほど』の意味を見ていきましょう。よく使用されるシーンについても紹介します。
「ご愛顧」は目にかけることの敬語
ご愛顧は『ごあいこ』と読み、目にかけることや贔屓することという意味があります。『御(ご)』は目上の人を敬ったり立てたりするときに使われ、『ご愛顧』とすることで敬語表現になります。
「ご愛顧いただき、感謝しております」のように、感謝の気持ちを表す言葉と一緒に使われることが多い言葉です。
大切なポイントは、『目をかけてもらう側が使う言葉』という点です。自分が相手を目にかけるという使い方はできないので注意しましょう。
「のほど」はやわらかくする表現
『~のほど』を付けることで、ストレートな表現を避け、やわらかく丁寧な印象になります。コミュニケーションを円滑にする役割もあるといえるでしょう。
例えば、「ご愛顧ください」だと断定的で命令されているような印象を与えてしまうこともありますが、「ご愛顧のほど」とすることで和らぎます。同様に、『ご愛顧いただきますよう』と『~いただきますよう』を使うことも可能です。
ビジネスでは取引相手に使われる
『ご愛顧のほど』は、主にビジネス文書やメール・手紙で使われる表現です。取引相手や顧客に対して目をかけてくれていることに感謝する気持ちや、引き続き目をかけてもらいたいという気持ちが込められています。
ただし、主に金銭的な取引がある相手に使われる言葉のため、どのような相手にも使えるわけではない点に注意しましょう。前述の理由から、日頃お世話になっている上司などにも使えません。
結びで「ご愛顧がのほど」がよく使われる場面
『ご愛顧のほど』は、手紙やメールの結びで使われることが多いです。どのように使われるのか例文と合わせて紹介します。
季節のご挨拶
ビジネスシーンでは、取引先に季節の挨拶として年賀状や暑中見舞いなどを送ることも珍しくありません。『ご愛顧のほど』は、結びによく使われる表現の一つです。具体的には、以下のように使います。
・旧年中は格別のお引き立てを賜り心より御礼申し上げます。本年もサービスの向上を目指してまいりますので、引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます
・本日で無事10周年を迎えることができました。今後とも末永いご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます
・これからも変わらぬご愛顧のほどよろしくお願いいたします
謝罪文
ビジネスでは、予期せぬトラブルで取引先に迷惑を掛けてしまい、謝罪文を送ることもあります。謝罪だけよりも、謙遜しつつ今後も引き続きお付き合いをしてもらえるようにお願いをするために使います。
ただし、取り返しの付かないような重大なミスをしてしまったときなどは、逆に相手を怒らせてしまうことにもなりかねないため、謝罪文のみにした方が良いでしょう。
・先日は多大なるご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。大変恐縮ではありますが、引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます
・弊社の手違いで異なる商品を納品してしまい、ご迷惑をお掛けしてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。今後このようなミスが起こらないように、チェック体制を強化していく所存でございます。何卒今後とも変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます
「ご愛顧」の言い回し
ご愛顧を使った違う言い回しもあります。どちらもビジネスシーンでよく使われる表現なので、覚えておくと役立つでしょう。
「ご愛顧いただきますよう」
『いただきます』は、謙譲語の『いただく』と丁寧語の『ます』が組み合わさった言葉です。『ご愛顧いただきますよう』とすることで、丁寧でやわらかい印象になるため、使用頻度の高いフレーズです。具体的には以下のように使います。
・より一層の品質向上に努めてまいりますので、引き続きご愛顧いただきますよう何卒よろしくお願い申し上げます
・このたび、創業100周年を迎えることができました。これもひとえに皆さまのお力添えのおかげと心より感謝しております。今後も何卒ご愛顧いただきますようよろしくお願い申し上げます
「ご愛顧賜りますよう」
『賜る(たまわる)』は『もらう』の謙譲語です。丁寧語と組み合わせた『賜りますよう』は、『してもらえるように』という意味になります。
目上の人にお願いをするときに用いるフレーズで、直接的な言葉を和らげることができます。『賜れますよう』と間違えやすいので注意しましょう。
・今後もさらなる品質の向上に努めてまいりますので、引き続きご愛顧賜りますようよろしくお願い申し上げます
・このたび、以下の通り〇〇支店を移転することになりました。今後もご愛顧賜りますようよろしくお願いいたします
「ご愛顧のほど」の言い換え
言い換えの表現を覚えておくとバリエーションが増え、ワンパターンになってしまうのを避けられます。使いやすい言い換え表現を三つ紹介するので、状況に合わせて使い分けましょう。
「ご贔屓のほど」
日常会話でも使われる『贔屓(ひいき)』を用いた言い換え表現が、『ご贔屓のほど』です。『贔屓』は、気に入った人や物・店舗などを目をかけたり、優遇したりすることで、ご愛顧と置き換えて使えます。
・日頃より当社の商品をご利用いただき、誠にありがとうございます。今後ともご贔屓のほどよろしくお願い申し上げます
・このたび、海外進出できたのも御社のお力添えのおかげです。引き続きご贔屓のほど何卒よろしくお願いいたします
「お引き立てのほど」
『お引き立て』は、『引き立て』に尊敬を表す『お』を付けた丁寧語で、目にかけたり、贔屓にしたりすることです。ビジネスレターやメールなどの書き言葉としてだけでなく、口語でもよく使われる表現です。
取引の回数や年数に関係なく使えるのも特徴です。取引先や顧客だけでなく、上司など社内の人にも使えます。
・取締役に就任することになりました。引き続きお引き立てのほどよろしくお願いいたします
・〇〇部長のお力添えのおかげで、無事にプロジェクトを成功させることができました。今後ともお引き立てのほどよろしくお願いします
「お力添えのほど」
『お力添え』は、『力添え』に尊敬を表す『お』を付けた丁寧語で、サポートや手助け、援助という意味があります。目上の人にサポートをしてもらいたいときなどに使える表現です。同僚や部下に対しては使えない点に注意しましょう。
『お力添えを賜りたく』とすることも可能です。
・来月のプロジェクト始動に関し、お力添えのほどよろしくお願い申し上げます
・お忙しいところ大変恐縮ですが、お力添えを賜りたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます
まとめ
『ご愛顧のほど』は、大切な取引先と今後も変わらぬお付き合いを続けていきたいことを丁寧に伝える表現です。『~のほど』と一緒に使うことで、やわらかい印象を与えることができます。
『~いただきますよう』や『~賜りますよう』に変えることもできるので、相手との関係性や状況を見て使い分けましょう。
ビジネスで使うフレーズはワンパターン化しやすいため、『ご贔屓のほど』や『お引き立てのほど』などと言い換えて使うのも良いでしょう。