親しい人がケガをしてしまったり病気になってしまったりしたときには、お見舞いの言葉を掛けるものです。『養生してください』も相手を気遣う表現の一つです。その意味を理解するとともに、活用できる言い回しを身に付けましょう。
「養生してください」とは?
事故に遭遇したり病床にある人に、どのような言葉を掛けていますか?『お大事に』は最もよく使うお見舞いの言葉といえますが、同じ表現ばかりでなく、他の言いかたも備えておきたいものです。
『養生してください』も、回復に向かおうとする人に掛けられる言葉です。まずは、その意味を把握することから始めましょう。
「体を休めてください」の意味がある
『養生』は、健康に留意して摂生する、病気やケガの回復に努めることを指す言葉です。建材などを保護することを意味する場合もありますが、お見舞いなどの際には体に関する前者二つの意味として使用します。
摂生や回復を願う気持ちを込めて伝える『養生してください』は、体を大切にしてください、ゆっくり休んでくださいという意味です。
無理をせずに、今は健康な状態に戻すことに注力してほしいという労(いたわ)りの思いを、優しく伝えるための表現といえます。
「ご養生ください」を使うと丁寧
『ご養生ください』を目上の人にも使えるのか、気になる人もいるでしょう。病床にある上司や顧客にお見舞いの手紙を送る場合に、失礼があってはいけません。大切な人に向けて使用する場合は、接頭語の『ご』を使用するなど、以下のような使い方が妥当です。
・1日も早く出社できますようにご養生ください。
相手から体調を心配されたときの返事
自分が労りの言葉を向けられる側の場合には、感謝の気持ちを返すことが礼儀です。そのときに『ありがとうございます』『感謝します』と言うだけでは、どこか素っ気なく感じます。
できるだけ『そちらからの温かい気持ちを受け取りました』ということを示しながら謝意を述べたいものです。
その場合は以下のように、相手の思いやりを示す言葉に続けて、感謝を表す言葉へと続けるとよいでしょう。
・お気遣いありがとうございます。
・お心遣いに感謝します。
・もったいないお言葉をうれしく存じます。
「養生」の前にプラスしよう
ゆっくり休んで、早く回復してほしいと願う気持ちをより強く表すためには、副詞を加えると効果的です。思いをしっかりと表現するために、短い言葉を追加することをおすすめします。
「十分に」「十分な」
『十分』には、事足りている様子や、何の不足もない状態という意味があります。『十分にご養生を』とすると、回復に必要なだけゆっくりというニュアンスになります。
・完全な回復のために、十分にご養生なさってください。
・ご家族のご心配を払拭するためにも、十分なご養生をなさいますよう願っております。
ところで、『じゅうぶん』には『充分』という表記もあり、使用する際に迷いが生じることもあります。『十分』も『充分』も意味は同じなので、『養生』にはどちらも使用可能です。
厳密には『十分』は物理的に満たされること、『充分』は精神的に満たされることを指すと区別することもあります。しかし、『養生』は心身ともに使われる言葉なので、どちらを使っても間違いではありません。
「くれぐれも」
『くれぐれも』は念を入れるといった意味があり、何度も心を込めて懇願する意図で使われます。
『くれぐれもご養生ください』とすると、軽々(けいけい)に回復したと思わず、慎重な姿勢で療養してください、といった思いを伝える表現になります。
お見舞いだけでなく、強く思いを伝える場面で活用できる言葉といえます。
・日頃のご多忙によるお疲れからくるものと思われますので、くれぐれもご養生くださいますようお願い申し上げます。
よく使われる気遣いのフレーズ
他者を思いやる表現にはいくつかあります。できるだけ多くの言葉を知り、多彩な表現ができれば、言葉を掛けられた人からの印象は大きく向上するでしょう。
ここでは、健康を害してしまった人に向けて、使われる言い回しを紹介しましょう。
「お大事になさってください」
最も一般的な表現のひとつであり、使用頻度の高いフレーズです。体を大事にするという意味と、病気やケガが大事に至らないように願うという意味が含まれています
目上の人に使用する際には、『大事にしてください』では敬意が足りません。『する』の尊敬語にあたる『なさる』を加えて『お大事になさってください』とすると、尊敬の気持ちが加わります。
・無理をされないよう、どうぞお大事になさってください。
「ご自愛ください」は相手の状態に注意
『ご自愛ください』は自分を大切にする、自分自身を気遣うという意味を持つ言葉で、上品なイメージも持ち合わせています。ただし、基本的に元気な人に使う言葉だということを覚えておきましょう。
メールや手紙の結びの言葉として使用する機会が多いですが、その際は『どうぞご自愛ください』とするよりも、その前に一言加えることが望まれます。
・気候もまだまだ不安定ですので、くれぐれもご自愛なさいますようお祈りいたします。
また、『ご自愛ください』のなかには自分の体を大事にするという意味が含まれています。そのため、『お体をご自愛ください』としてしまうと重複した意味合いになり、誤った使い方になりますのでご注意ください。
お見舞いの言葉に使えるフレーズ
日頃は耳にする機会のない言葉でも、お見舞いに活用できる言葉はたくさんあります。さらに詳しく掘り下げていきましょう。
「お労りください」「おいといください」
『労る』は、相手の心身をねぎらったり、優しく大切に扱ったりすることを指す言葉です。休む暇のない相手の体を案じる気持ちを伝えられます。
・日頃のご多忙を十分にお労りください。
『いとう(厭う)』は、嫌がる・避けるという意味で使われることが多いですが、かばう・大事にするという健康に関する意味も持っているのです。
品性がただよう大和言葉(やまとことば)なので、上手に使うと文章のイメージが大きく変わります。
・猛暑が続いておりますので、どうぞお体をおいといになられますように。
「ご静養ください」
『静養(せいよう)』は、その字の通り静かに体を休めることを表しています。安らかな様子がうかがえる表現です。
『お大事に』などと比べると、より静けさが感じられます。そのため、長く病床にある人に向けるにも適している言葉です。
『ご静養なさってください』『ご静養のほど』とすることもできます。文の前後に合わせて表現を選びましょう。
・しばらくはお仕事から離れて、ゆっくりご静養ください。
「全快されますよう心よりお祈り申し上げます」
『快』には、心が晴れ晴れする心持ちや、病気がよくなるといった意味があります。『全快する』とすれば、病気やケガが完治してすっかり健康になった状態を表します。
とても爽やかで、縛られていたものから解放される喜びも感じられる表現です。晴れやかな再会を期待する思いを伝えられる言葉といえるでしょう。
・ぜひまたお目に掛かりたく存じており、1日も早く全快されますよう心よりお祈り申し上げます。
まとめ
病床にあると、体だけでなく心も弱くなってしまいます。そのような相手には、思いのこもった言葉を向けたいものです。
お見舞いの気持ちを伝える言葉はいくつもあります。『養生してください』をはじめ、多彩な表現で相手を元気づけましょう。