目上の人に感謝の気持ちを表すとき、できるだけ丁寧な言葉で伝えたいものです。『お心遣い痛み入ります』は、品格も感じられ、おすすめの表現といえます。意味を解説するとともに、言い換えが可能な言葉も見ていきましょう。
「お心遣い」を使う前に意味を確認しよう
『どうもありがとうございます』は感謝を述べる際に最もよく使われる言い回しで、間違いや不適切さはありません。しかし『お心遣い痛み入ります』とすると落ち着きのある、より丁寧な表現に感じられます。
謝意を伝えるこのフレーズを正しく理解するために、一つ一つの言葉を正確に捉えておきましょう。まずは、『お心遣い』の意味を解説します。
相手に心配りすること
『心遣い』は、周囲に対して心配りすること・気遣い・配慮といった行為を指します。また、もらったご祝儀・心付け(チップ)・贈答品を示すこともある言葉です。
自分に対して、目上の人や格上の人から何かしてもらったときのお礼に用いるために、接頭語に『お』を付けて、『お心遣い』とします。
具体的な使用例としては、次のようになります。
・この度の異動に際しましてはお心遣いに感謝します。おかげさまで、念願の部署への配属となりました。
・新事務所の開設にあたってお花をお贈りくださり、お心遣いを心から嬉しく思います。
「お気遣い」との比較
『お気遣い』は、相手を気にする・考えるというニュアンスです。日常的な親切を指しているといえるでしょう。
例として、雨が降り出したので地下道を通ったら便利と教えてもらったときに「お気遣いありがとうございます」と使います。
『心遣い』は、それよりももう一歩深く思いを巡らせ、相手のためになる行いをするイメージです。先の例に従えば、地下道の利用を教えるとともに、そこまでの道案内も一緒にするなどすると『心遣い』の領域になるでしょう。
「お心遣い」と使える「痛み入ります」
『痛み入ります』は、『お心遣い』という言葉と組み合わせるとスマートです。意味をきちんと把握していきましょう。
申し訳なく心が痛むほど感謝すること
『痛み入る』は、痛みを感じているという意味です。もちろん、現実に痛みが起きているわけではなく、心が苦しいというような様子を表しています。
つまり、『心が苦しくなるほど、とても感謝しています』という内容を一言で伝えようとしているのです。例えば「勝手な申し入れに対してご善処賜り痛み入ります」と使います。
ただし、乱用することにはリスクもあります。深い感謝の意を示す言葉と広く認識されているため、そこまででもない気遣いに対して用いてしまうと、嫌みに感じられてしまう可能性もあることを知っておくとよいでしょう。
冠婚葬祭でもよく使われる言葉
『痛み入ります』はビジネスシーンだけでなく、冠婚葬祭でも丁寧な表現として活用されることの多い言い回しです。
身内の結婚式で、参列者からお祝いを伝えられた場合の返答例は、「もったいないお言葉痛み入ります」などとなります。
また、親族の葬儀において弔問客からお悔やみの言葉を掛けられた場合には、「ご厚情賜り痛み入ります」のような返答が望ましいでしょう。
相手の心配りを表す他の言葉
親切や気配りを意味する言葉は、他にもあります。代表的な表現として『ご厚意』『ご配慮』について紹介しましょう。
「ご厚意」
『厚(あつ)い』は、物の幅や高さがある様子を表す言葉です。同時に、『とても大きな』や『好意的な』という意味を含んでいます。そして『意』は、考えや思いを示す言葉です。
それらを組み合わせて丁寧な熟語とした『ご厚意』は、つまり『なかなか受けられないほど親切な思いやり』という意味になります。
例えば、自分の資格取得のための学習費用を会社負担とする決定を取締役会がしてくれた場合に述べる言葉は、「この度の取締役会のご厚意誠に傷み入ります」となります。
「ご配慮」
『慮る(おもんぱかる)』には、慎重に思いを巡らす・よく考えるという意味があります。『配』は届ける・行き渡らせることを示すものです。
『ご配慮』は、何かを熟考し、細部にまで思いを巡らせることを丁寧に表現したものになります。
例えば、商談に訪れた会社で、会議室やパソコン、プロジェクター、スクリーン、音響設備に至るまで全て用意してくれていたような場合には、「あらゆる面でご配慮くださり痛み入ります」のように謝意を伝えます。
「痛み入ります」と言い換えできるフレーズ
お礼を伝える機会は多いもので、品格を備えた謝意の伝え方は、数多く身に付けておくととても役立ちます。『痛み入ります』の言い換え表現について紹介しましょう。
「心より感謝いたします」
『心より感謝いたします』は、とても・本当にという意味をしっかりと込めて感謝を伝えられるフレーズです。『本当にありがとうございます』とするよりも、内面から湧いてでるような謝意として受け止めてもらえるでしょう。
簡単な気遣いに対して使用するよりも、大きな手助けや協力に向けて使用する言葉です。ペンを借りたときなどではなく、商談をまとめてくれたような場合が向いています。
「恐縮至極です」
『恐縮』は、おそれ多い親切を受け、身が縮みあがるほど感激や驚きを感じている様子を示しています。『至極』は、その頂点に到達するほど、つまり最大のということを表しているのです。
ここから、『思いもよらないことにこの上ない感謝をしている』ことを述べています。
自分の実績を顧客など高位にある人に評価されたときなど、「身に余るお言葉を頂戴し、恐縮至極です」と伝えましょう。
まとめ
親切や配慮を受けたときには、相手が目上であるほど、丁寧に品よく謝意を伝えたいものです。『お心遣い痛み入ります』は、使用する人のイメージも向上させるスマートな言葉といえます。
その他にも、感謝の気持ちを伝える上品な言い回しはいくつもあります。周囲と良好な関係を築くためにも、さまざまな伝え方を身に付けたいものです。