仕事上で、資料などを確認してもらいたい場合には『よろしくご査収(さしゅう)ください』という表現が使えます。が、相手によってはそっけない印象を抱く人もいるかもしれません。ここでは言葉の意味を再確認しながら、より丁寧に伝える方法もご紹介します。
「よろしくご査収」の意味とは?
社内の回覧や他者とのメールにおいて、『よろしくご査収』を使用する機会は多いと言えます。中には、意味を深く理解せず、何となく使用している人もいるようです。まずは、正しい意味を確認しておきましょう。
「よろしく」は「便宜を図って」などの意味
あいさつでもよく使われる『よろしく』は『よろし』の連用形で、副詞として用いる言葉です。『よろし』には『適当に』『ほどよく』といった意味があり、良しあしであれば良い内容や方向を指しています。
「よろしくやってよ」とすれば、うまく進めてくれというニュアンスになり、「芸能人よろしく」となると、あたかもそれらしくしている様子を示す言葉です。
いくつかの意味がありますが、ビジネス文書などで使用する場合には『便宜(べんぎ)を図ってもらう』ときや『ぜひとも』といった意味で使用します。
「よろしくご検討ください」と宛てれば、それは「私たちにとって好意的に取り計らってください」という思いが込められているのです。
「ご査収」は確認してほしいときに使う
『ご査収』は、資料や文書を誰かに送ったり届けたりする際に使用することが多い言葉です。さらに踏み込んで、言葉の意味を探ってみましょう。
『査』には、『調べる』『確認する』という意味が含まれています。そして『収』には『受け取る』『おさめる』などの意味があります。
それを熟語としたところに、尊敬語とするために接頭語として『ご』を足します。そのようにして、届けた内容を受け取ると同時に確かめる行為を『ご査収』という丁寧な言い回しで表現しています。
「ご査収」を使わない場面
ぜひ読んでもらいたい資料を送るために、やみくもに使用すると思わぬ間違いも生じます。セールスをする場合など、相手に義務や責任が生じない文書を宛てる場合にはふさわしくありません。
「新しいパンフレットができましたのでご査収ください」は、言葉の成り立ちからすると押しつけがましい表現になる恐れがあります。
また、接頭語の『ご』を抜いて、自分のことについて使うことも間違いです。「当方が確かに査収しました」は誤った使い方になります。
「ください」は目上の人に失礼な表現?
丁寧な文の終わり方として『ください』を使用する場面は多くあります。しかし、相手によっては用いない方がよいケースもあります。
敬語だからといって安心することなく、『ください』に変わる適切な文章作りを身に付けましょう。
上司や取引先には使わない場合もある
『ください』は、敬語の使い方として間違いではありません。丁寧な言い方として成立しています。
一方で、文章の締め方としてはやや素っ気ない印象も抱かれる場合もあります。どこか無機質に感じられることで、相手に違和感を与えかねません。
敬意が感じられる言い回しは?
敬語を用いて表現する場合、『ください』に換えてどのような言い回しが望ましいのでしょうか?
目上の人や顧客に対して、安心して使える表現として、以下のような例を紹介します。
・ご査収くださいますよう何卒お願い申し上げます。
・恐縮ですが、ご査収いただけますと幸いです。
このように、『ご査収』の前後にクッション言葉を加えることで、相手を立てながら依頼できるでしょう。
言い換えと細かい意味の違い
『ご査収ください』には似た表現もあります。それぞれについて、意味の違いにを見ていきましょう。
「ご確認ください」
『ご確認』は、受け取った資料を『確かめ』て『認め』てもらうことを要請する意味合いです。
『ご査収』の場合は、いわばその内容を吟味(ぎんみ)するところまで求めているといえます。その点に両者の違いがあります。
『ご確認』は、会議録でその人の発言内容を確定するために見てもらうようなケースで用います。「過日の会議の議事録をご確認ください」という使い方になるでしょう。
それに対して『ご査収』は、相手にとって未知で有意義な情報に触れる際などに有効で、「事業計画書につきご査収くださいますようお願い申し上げます」などが一例です。
「ご参照ください」
『ご参照』は、あるものと見比べ、突き合わせる様子を示します。『参』も『照』も照らし合わせる意味であり、それに『ご』を付け尊敬語にしています。
既に手元にあるであろう資料をより詳しく説明するために、追って別の資料を届ける場合などに適した言葉です。
「お手元の資料と合わせてご参照ください」とすると、二つを照らし合わせてより深い理解を求める表現になります。
まとめ
『よろしくご査収ください』は、ビジネスの現場で使われるケースが多い表現です。
しかし、重要な相手に対しては使用しない方が無難な言葉ともいえます。「ご査収くださいますよう何卒お願い申し上げます」など、より敬意の感じられる表現で伝えるとよいでしょう。