『お目にかかる』は誰かと会うことを意味する言葉です。『お会いする』など他の類似表現との違いをはじめ、意味や使い方について紹介します。
「お目にかかる」とは?
人と会うことを表す言葉としてよく見聞きする言葉ですが、まずは意味から理解していきましょう。
「会う」意味を持つ謙譲語
『お目にかかる』は、目につく・目に留まるなどの意味を備えています。つまり見えることを示している言葉です。
見えるということは、すなわち誰かと会うことを指しています。『会う』を謙譲語として使うときに『お目にかかる』となり、そこには相手に対してへりくだり、謙遜する思いが含まれているのです。
相手の視界に映る状態を謙遜した表現であるため、主語は自分です。そして、会う相手が目上の人などに使用します。
「お目にかかれて光栄に存じます」と言えば、会えたことの大きな喜びが相手にも伝わるでしょう。
「お目にかかる」の使い方
実際に、どのような場面で使用するのが望ましいのでしょうか。基本的な使用方法と、よくみられる誤った表現について解説します。
会う約束をするときなどに使える
将来に向けて、目上の人や大切な人と会う約束をする場合や、面会を求めるようなシーンに適しています。顧客とのアポイントメントの要請にも使用できます。
「来週ぜひお目にかかりたいのですが、ご都合はいかがでしょうか」とすると、会いたいという思いを丁寧に伝えています。
「上司ともどもお目にかかれることを楽しみにしています」とすれば、二人ともが面会への期待を抱いていることが品よく表現できます。
「お目にかかりましたか?」は誤用
例えば自分の上司に対して、顧客との面談をしたか確認する際「A専務はB様と既にお目にかかりましたか?」というのは誤った使い方になります。
『お目にかかる』は謙譲語であり、自身の立場を低くする時に使用する表現です。一般的には、相手のとる・とった行動として用いてはいけません。
一見、丁寧な言い方に感じられますが、相手の立場が低くなるような言い方になってしまいます。先の例を正しく言い換えるならば「A専務はB様と既にお会いになりましたか?」となります。
「お会いになる」「お会いする」との違い
『お会いになる』『お会いする』は、会うことを丁寧に言う場合に多用される表現です。これらと『お目にかかる』の違いについて把握しておきましょう。
「お会いになる」は尊敬語
『お会いになる』は『会う』の尊敬語にあたるものです。『お目にかかる』を自分にしか使えないことに対して、目上の人など他者に対して、その人が誰かと会った様子を表す際に使用します。
「A部長はクライアントのB様とお会いになりましたか?」は、面識について丁寧に尋ねている使い方です。
「C専務はお客様D様と先日お会いになったようです」では、両者が既に面会済みであることを正しく伝えています。
「お会いする」は謙譲語
混乱しがちな部分ですが、『お会いする』は丁寧語ではなく、謙譲語にあたります。文頭に『お』が付いていると丁寧語に思う人もいますが、自分の行動に付けているため、へりくだった言葉です。
上司に、取引先との面会の意向を尋ねるときに「A部長はB社とお会いしますか?」としてしまうと正しい使用法ではなくなってしまいます。
細かい点で混乱しそうですが、正しくは「A部長はB社とお会いになりますか?」です。
「お目にかかる」と混同しやすい言葉
人との関係を表す言葉は多くありますが、混同して誤った使い方をしないように注意が求められます。
「目にかける」は世話をするなどの意味
『目にかける』もよく使われる言葉ですが、意味は大きく異なります。会えたことの感謝を示そうと「先日は、お目にかけられて嬉しく思います」としても意味は伝わりません。
一般的に『目にかける』と言えば、それは世話をしている様子を表しています。誰かをサポートしているような状態です。
「私は彼女に目をかけているんだ」は、ある人の成長に期待を寄せ助力していることになります。「お目にかけてくださり感激です」は、自分への協力が得られて嬉しい気持ちを伝えているのです。
別の意味で、『見せる』の謙譲語としての役割もあります。目上の人に見せたいものがある場合に「お目にかけたいものがあります」というように使いましょう。
「お見えになる」は「来る」の意味
『お見えになる』は人が『来る』ことを指しています。尊敬語にあたり、目上の人に対する言葉です。
「お客様が来ました」では素っ気ない印象を与えてしまいますが、「お客様がお見えになりました」とすると敬意が備わります。
同じ意味として『いらっしゃる』『来られる』などがあり、いずれも尊敬語です。中でも改まった言い回しが『お見えになる』でしょう。他者への敬意を示すだけでなく、使う人の品格も感じさせるため、上手に使いたい言葉です。
まとめ
人と人が会うときに用いる言葉は、自分と相手の立場を考慮しなければならない点で使い方が難しいものです。誤った使用法によって、相手の気持ちを害してしまう可能性もあります。
『お目にかかる』も、使用頻度が高い一方、誤用しやすい面のある言葉です。正しい使い方を知って、スムーズな人間関係の一助としましょう。