『ございませんでした』を正しく使えているかどうか、自信を持てない人も多いのではないでしょうか。相手や状況によっては違う言葉の方がふさわしいケースもあり、使い分けにも気を遣います。『ございませんでした』の使い方を解説します。
「ございませんでした」とは
『ございませんでした』は、どのような種類の言葉なのでしょうか。主な使い方と合わせて見ていきましょう。
「ございません」は「無い」の丁寧語
『ございませんでした』の『ございません』は、『無い』の丁寧語です。丁寧語とは『そうです』や『ございます』のように、文末に『です・ます』を付けて、丁寧さを表す敬語の一種です。
『でした』は『です』の過去形のため、『ございませんでした』は『無かった』の丁寧語となります。
丁寧語は主に話す相手に対して丁寧に述べる敬語であり、誰かを立てる働きはありません。しかし『ございません』の元になる『ございます』は、丁寧語の中でもかなり丁重な表現とされています。
「申し訳ございませんでした」は正しい敬語
『ございませんでした』の主な用例に、「申し訳ございませんでした」があります。仕事中、取引先やお客様などに謝るときに使うケースも多いでしょう。
『申し訳』とは『弁解』『言い訳』を表す名詞です。「申し訳ございませんでした」は、『申し訳』に丁寧語『ございませんでした』を付けることで、深い謝罪の意を示す表現として一般的に使われています。
丁寧語は、尊敬語や謙譲語と違い相手によって使い分ける必要がありません。名詞に丁寧語を付ければ、誰に対しても通用する正しい敬語になります。
「ありませんでした」との違いは?
『無かった』の丁寧語には『ありませんでした』という表現もあります。『ございませんでした』と『ありませんでした』の違いと、使い分け方法を見ていきましょう。
「ございませんでした」はより丁寧
『ございませんでした』は、『ありませんでした』をより丁寧にした言葉です。例えば何かを報告するときに「特に問題はありませんでした」と言うと、少し突き放しているように聞こえることがあります。
しかし「特に問題はございませんでした」と言えば、とても丁寧に聞こえます。『ありませんでした』も丁寧ですが、取引先の担当者やお客様に対しては『ございませんでした』を使うのがベターです。
親しい関係なら「ありませんでした」でOK
目上の相手でも、親しい先輩や上司なら『ありませんでした』で十分です。ちょっとした報告や謝罪のたびに『ございませんでした』を使っていては、言葉の重みがなくなり、かえって失礼な人と受け取られてしまうこともあります。
例えば仕事を教わっている先輩に「何か困ったことはない?」と聞かれたとき、「特にございません」と答えるのは大げさ過ぎるでしょう。「ありがとうございます。今のところ何もありません」と返す方が自然です。
「申し訳ございませんでした」の言い換え
謝罪には「申し訳ございませんでした」の他にも、さまざまな言い方があります。相手や状況に応じて適切に使い分けましょう。主な言い換え例を紹介します。
フォーマルな謝罪に「お詫び申し上げます」
会社を代表してお詫びするときのように公式な謝罪には、「お詫び申し上げます」が適しています。この場合の『申し上げる』は『言う』の意味ではなく、『詫びる』という動詞を謙譲表現にする補助動詞です。
「お詫び申し上げます」のように、動詞と『申し上げる 』を組み合わせ文末を丁寧語にすると、公式な場や目上の人に対しても通用する表現となります。
申し訳なさを示す「弁解の余地もございません」
「弁解の余地もございません」は、「申し訳ございません」よりも深い謝罪を表します。文字通り、何も言い訳ができないほどの状況で使う表現です。
『弁解』とは言い訳を指します。1度や2度の失敗なら「申し訳ございませんでした」とお詫びしながら、言い訳も通用するかもしれません。しかし同じ失敗を何度も繰り返してしまうと、弁解はできません。
いつものように謝るだけでは、相手に誠意が伝わらないでしょう。このようなときは「弁解の余地もございません」が適しています。
立場が近い相手なら「すみませんでした」
「すみませんでした」は自分と近い立場の人に謝るときや、自分のミスではないけれど相手に迷惑をかけたときなどに便利な表現です。
例えば交通事情で遅刻したとき、待たせた相手に対して「電車が止まってしまい、お待たせしてすみませんでした」のように使います。
ただし「すみませんでした」には謙遜や尊敬の意味がないため、ビジネスメールや文書での正式な謝罪にはふさわしくありません。
また取引先の人やお店に来たお客様には、自分が悪くなくても「申し訳ございませんでした」と言う方が適切です。
まとめ
『ございませんでした』は、丁寧語の『ありませんでした』をさらに丁寧にした言葉です。「申し訳ございませんでした」も、正しい敬語としてビジネスシーンで十分に通用します。
ただし敬語は、相手や状況によって使い分けるのが基本です。身近な人に対しては『ありませんでした』の方が適切な場合もあります。
謝罪の言葉も、相手や申し訳なさの度合いで使い分けられるようバリエーションを用意しておくとよりスマートです。マニュアルどおりに考えるのではなく、シーンに応じて柔軟に使いこなせるように日頃から準備しておきましょう。