『先日』は『近い過去のある日』を意味する言葉です。「昨日」や「一昨日」も『先日』に含まれるのでしょうか?会話やメールでは「いつの時点の出来事に使えるのか」を意識しましょう。『過日』や『先般』などの言い換え表現も要チェックです。
「先日」とはいつのこと?
過去の時間や期間を示す代表的な言葉として、『先日』が挙げられます。「先日はありがとうございました」「先日の忘年会では…」などメールや会話でよく登場しますが、いつ頃を指すのでしょうか?
長くて1カ月以内の過去を表す
『先日(せんじつ)』には『近い過去のある日』『この間』という意味があります。時間の感覚には個人差があり、先日がいつからいつまでを指すのかに明確な定義はありません。
ただビジネスシーンや日常会話においては、「1カ月以内の過去」として使われることが多いようです。つまり20日前も1週間前も『先日』という言葉で言い表せるのです。
ごく近い過去を指すときは、『つい先日』という表現を使ってもよいでしょう。
・先日はお忙しい中我が社に足を運んでくださり、ありがとうございました。
・先日、新卒者向けの企業説明会が開催されました。
「昨日」を「先日」とは表現しない
1カ月前の過去といっても、「昨日(1日前)」は『先日』に該当しません。昨日会ったばかりの相手に「先日はありがとうございました」と言うのは不自然です。
多くの人が「先日は昨日ではない」という認識を持っているため、使い方を間違えるとすれ違いが生じます。例えば昨日行われた会議のことを話す際、「先日の会議で…」と表現してしまうと話の内容がずれる可能性もあるでしょう。
2日前は『先日』『一昨日(おととい・いっさくじつ)』どちらで表現しても構いません。厳密なルールはないため、感覚的に使い分けましょう。
「先日」をビジネスで使うときの注意点
ビジネスシーンにおいては、1カ月前後の過去をすべて『先日』でくくってしまうのは好ましくはありません。両者の間で「何の出来事を指しているか」が一致していない場合、さまざまな弊害が生じます。
日付が明らかなときには使わない
『先日』という表現は「何日前か思い出せない過去」を指すのに便利な表現です。しかし過去をすべて『先日』で表してしまうと、ぼんやりとした印象になります。
人によっては「いつのことを指しているのか?」と一瞬考えこんでしまうかもしれません。ビジネスでは「2日前」や「2週間前」など、できるだけ具体的な日付を述べるのがベターです。
ただ「あいさつ代わりの軽い会話」では、正確な日付を出す必要性はないと考えられます。「5日前、新宿駅でお会いしましたね」よりも「先日、お会いしましたね」の方があいさつとしてはスマートです。
先日「何があったのか」も付け加える
単に「先日はありがとうございました」とだけ伝えると、何の出来事を指しているのか分からない人もいます。
場合によっては、「自分は〇〇の件で話したつもりなのに、相手は△△の件だと思っていた」という誤解も生まれるでしょう。
ビジネスシーンで『先日』を使うときは、「〇〇の件でお世話になりました」というように、「先日何があったのか」も付け加えると親切です。
・先日の新商品開発会議で決定した内容をまとめました。ご査収のほどよろしくお願いいたします。
・先日の懇談会ではお世話になりました。久々にお目にかかれてよかったです。
過去の日時を表す類語
日本語には過去の日時を表す言葉が数多くあります。一口に『過去』といっても、それぞれが指し示す時点や期間が異なります。使い分けできるようにしておきましょう。
広い期間の過去を指す「過日」
『過日(かじつ)』は、『既に過ぎ去った日』を指す言葉です。『先日』が『近い過去のある日』を指すのに対し、『過日』は数日前から数年前の「広い期間の過去」を指します。
どちらかというと、日にちが思い出せないくらいの「遠い過去」を示すことの多い言葉です。1週間前の出来事を『過日』という人はあまりいないでしょう。
主にビジネスメールや手紙の中で使われる書き言葉で、日常会話ではほとんど用いられません。
・過日はご多用のところ面談のお時間をいただき、誠にありがとうございました。
・過日の京都出張では、御社の田中様に大変お世話になりました。
同日内の少し前を表す「先ほど」
『先ほど』は『今よりも少し前』を意味します。『先日』は日をまたいでいるのに対し、先ほどは数分から数時間前の「現在に近い過去」を指すと考えましょう。
類語には『今しがた』や『先刻(せんこく)』などが挙げられます。『さっき』や『ちょうど』にも言い換えられますが、『先ほど』の方が丁寧な印象を与えます。
・先ほど、サトウ商事の佐藤様よりお電話がありました。折り返しご連絡をお願いいたします。
・昨日ご注文いただいた商品は、先ほど発送いたしました。
かしこまった表現の「先般」
『先般(せんぱん)』には、『この間』『先ごろ』という意味があります。いつからいつまでという具体的な期間はありません。
『先日』と同義ですが、微妙にニュアンスが異なります。先日は『過去のある日』を指しますが、先般は「過去のある出来事」を指します。
ややかしこまった表現で、日常会話ではほとんど使われません。ビジネスメールや手紙にふさわしい「書き言葉」の一つとして覚えておきましょう「先般〇〇した…」のように、副詞的に用いられることもあります。
・先般、2021年版の審査基準が決定されました。
・先般の緊急事態宣言を受け、我が社では本日からテレワークを開始します。
まとめ
『先日』は『近い過去のある日』を指します。いつからいつまでという明確な区切りはありませんが、「先日=1カ月以内」と認識している人が多いようです。
使い勝手のよい言葉ですが、ビジネスシーンでは、具体的な日にちを示した方がよい場合もあります。『先般』や『過日』などのよりフォーマルで丁寧な表現もあるため、相手やシーンによって使い分けましょう。