目上の人へ『来てください』とお願いしたいときには、どのような表現がふさわしいのでしょうか?シーン別の言い方や言い回しの幅を広げて、円滑なコミュニケーションに役立てましょう。
「来てください」は目上の人に適さない
『来てください』は正しい敬語表現ではあるものの、仕事で目上の相手に使う表現としては敬意が不十分です。まずは『来てください』がなぜ目上に対してふさわしくないのかを確認しましょう。
敬意に欠ける表現
『来てください』は、文法的には敬語として扱われます。ただし上司や取引先に使えるほどの敬意を含む言葉ではありません。
『来て』が敬語ではないため、かしこまった場では使えない表現です。日ごろからコミュニケーションを取っており、フランクにやり取りできる間柄の先輩や同僚などに対しては使っても問題ありません。
しかし目上の相手に来てほしいとを伝えるなら、敬意を示せる他のフレーズを用いる方がよいでしょう。
「〜ください」に相手への敬意は含まれない
『来てください』で敬意を表せないのは、『来て』が敬語でないことに加えて『〜ください』の敬語の種類が『丁寧語』だからです。
敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類があります。丁寧語は他の二つと違い、相手を持ち上げる働きを持ちません。
また『~ください』は、相手へ何かしらの行動を促す命令調の表現です。人によっては命令されたと感じることもあるため、使う相手によって注意が必要な表現といえます。
来訪をお願いする丁寧なフレーズ
目上の相手に来てほしいとき、『来てください』より丁寧に伝えられる言い回しがあります。代表的なフレーズを例文とともにチェックしましょう。
社外の人に使える「お越しください」
『来てください』に尊敬の意味を持たせるには、『来る』の尊敬語『お越しになる』を使いましょう。丁寧語の『ください』をプラスして『お越しください』とすれば、取引先など社外に対しても使える表現になります。
・明日の会議は13時に開始予定です。会議室までご案内いたしますので、5分前までに受付へお越しください。
・本日はお忙しい中弊社にお越しくださり、ありがとうございます。
・明日は雨との予報が出ております。どうぞお気をつけてお越しくださいませ。
軽く来訪を促すなら「お立ち寄りください」
『お越しください』が日時を指定し来訪をお願いするフレーズであるのに対し、『お立ち寄りください』はより軽いニュアンスのある言い回しです。
『立ち寄る』は『ついでに寄る』という意味なので、来るかどうかを相手の判断に任せてよいときに適しています。より丁寧に伝えるには、語尾の形を工夫しましょう。
・お立ち寄りいただきたく存じます
・お立ち寄りいただければと存じます
・お立ち寄りいただければ幸いです
・お立ち寄りくださいますようお願い申し上げます
『〜存じます』『いただきたく』などを活用することで、『〜ください』が持つやや一方的なニュアンスを柔らかく表せます。
来訪を望む意味の「お待ちしております」
足を運んでほしいことを丁寧に伝えるには、『お待ちしております』が向いています。『お越しください』と並べて使われることもある言い回しで、メールでも会話でも一般的に用いられている言葉です。
取引先などかしこまって伝える必要がある相手に使うなら、『お待ち申し上げております』という言い回しがよいでしょう。『お(ご)~申し上げる』を使っており、目上の人への謙譲を強く示す表現です。
・本日はご参加いただきありがとうございました。またのご来社をお待ち申し上げております。
「来てください」と頼むときの注意点
相手に来てもらうシーンで使える表現は他にもあります。中でもタイミングや使う相手に注意が必要な二つの言い方についてチェックしましょう。
「ご足労」は来訪が決まってから使う
来訪に対し感謝の気持ちを示せる『ご足労』は、使うタイミングに注意が必要です。来ることが決まってから、『ご足労をおかけいたしますが』などの言い回しで使用します。
お願いに対して承諾がない段階で『ご足労』を使ってしまうと、強制しているように受け取られる可能性があるためです。
・(来社が決まった後に)ご足労をおかけいたしますが、○月○日はどうぞよろしくお願いいたします。お待ち申し上げております。
・(来客が帰った後のメールで)本日はご足労いただき、誠にありがとうございました。
社外に「いらしてください」は避けるのが無難
『いらしてください』も『来てくれ』の敬語ではありますが、略語なので取引先など社外の相手へは使用しない方がよいでしょう。『お越しください』など他の表現の方が適しています。
略さずに言う『いらっしゃってください』は失礼でないものの、『いてください』という意味にも受け取れてしまい紛らわしい表現です。行き違いがないよう、意味を取り違えやすい言葉は避けるのが無難です。
まとめ
『来てください』は敬語表現ですが、丁寧語のため敬意を示すのには不十分です。目上の相手に来てほしいと伝える際は他のフレーズを用いましょう。
『お越しください』『お立ち寄りください』『お待ちしております』が向いています。『ご足労おかけいたします』や『いらしてください』は、使うときに注意が必要です。