『恐縮ながら』はクッション言葉の一つ。円滑なコミュニケーションに役立てましょう。『僭越(せんえつ)ながら』『勝手ながら』など他のクッション言葉についても合わせて紹介します。
「恐縮ながら」の意味や使い方は?
『恐縮ながら』は、仕事上のコミュニケーションをスムーズにするのに役立ちます。
感謝や申し訳なさを表す言葉
『恐縮ながら』は『おそれる・こわがる』という意味の『恐』と、『ちぢまる・心がいじける』という意味の『縮』が合わさった単語です。本来は『恐ろしくて身がちぢむ』という意味でした。
転じて相手からの厚意に対してへりくだり、『自分にはもったいない』『申し訳ない』という意味で使われるようになりました。申し訳なさを伝えることで遠回しに感謝を表現しています。
また頼むことで迷惑をかけてしまうことになり、申し訳なく感じるときにも使える言葉です。
クッション言葉として使う
『恐縮ながら』はビジネスシーンで頻繁に使われるフレーズで、クッション言葉の一つです。ストレートに伝えると角が立つような内容も、クッション言葉によって柔らかな印象に変えられます。
相手に負担や手間をかけてしまう内容の依頼に『恐縮ながら』を用いると、失礼なくお願いできるでしょう。依頼と同時に、『手間を取らせて大変申し訳ないのですが』という気持ちも伝えられます。
・せっかくのご提案ですが、恐縮ながら今回のお話は辞退させてください。
・恐縮ながら、このプロジェクト成功に導くため、ご助力いただけますようお願い申し上げます。
「僭越ながら」との違い
『僭越(せんえつ)ながら』も『恐縮ながら』と似たクッション言葉ですが、意味合いが異なります。違いを正しく知り、場面に応じて使い分けましょう。
「僭越」とは出過ぎた状態のこと
『僭越(せんえつ)』とは、立場をわきまえず出過ぎた状態を指します。いわゆる出しゃばりを意味する言葉です。『僭越ながら』には、『立場を超えて出過ぎたことを言いますが(しますが)』という意味があります。
『恐縮ながら』と同じようにクッション言葉として使われるフレーズです。意見を述べたり行動を申し出たりするときの前にプラスすると、偉そうな印象を避けられます。
対象となる行為の主が相手か自分か
『僭越ながら』と『恐縮ながら』の大きな違いは、相手の行為に対して使うか自分の行為に対して使うかです。『出過ぎたことを言いますが』という意味で前置きに使う『僭越ながら』は、自分の発言や行動に対して使っています。
他の誰かの行動について『僭越ながら』とは言わず、あくまでも自らの言動について謙虚さを示すフレーズです。
一方『恐縮ながら』が持つ『迷惑をかけて申し訳ありませんが』『よくしていただき申し訳ありません』という気持ちは、相手にかかる手間やしてくれたことに対して向かっています。
二つのフレーズを使い分けるときには、行為の主が誰かを考えると分かりやすいでしょう。
「恐縮ながら」に似たフレーズと使い分け方
クッション言葉として使われる言葉は他にも複数あります。それぞれ使う場面やニュアンスが異なるため、適切な使い分けが必要です。
自分の都合や判断をわびる「勝手ながら」
『こちらの都合にもかかわらず』という意味合いの『勝手ながら』は、こちらの都合に合わせてもらうことで相手に手間を取らせてしまうときに使う言い回しです。『手間を取らせて申し訳ありません』というニュアンスも含みます。
・勝手ながら、当社までお越しいただきたくご連絡いたしました。
前置きなしで「当社までお越しください」では強制的な印象ですが、『勝手ながら』を加えればソフトに伝えられます。
目上の人へ意見する際に使う「失礼ながら」
『失礼ながら』は、相手にとって失礼になっても伝えなければならない場面で役立つフレーズです。
・失礼ながら、こちらの書類の記入項目に誤りがございましたので、訂正をお願い申し上げます。
・失礼ながら、その方針には同意いたしかねます。
目上の人に対して何かしらの意見を述べる場合、クッション言葉を使うのがマナーです。似た意味合いを持つ表現としては、『お言葉ですが』『出過ぎたことを言うようですが』『無礼を承知で』などが挙げられます。
協力や提案の際に使う「微力ながら」
目上の人へ協力を申し出るときや何かを提案するときは、『力不足かもしれませんが』という意味合いの『微力ながら』が使えます。
「微力ながらお手伝いいたします」とすれば、自分の力量を小さく言い表すことで相手を持ち上げる表現が可能です。
かしこまった敬語表現のため目上の人に対しては適していますが、同僚や親しい上司に対しては距離感があり過ぎるかもしれません。
へりくだり過ぎて逆に失礼にならないよう、使う相手との関係性を考えて使いましょう。
まとめ
『恐縮ながら』は、『ありがたいけれど自分にはもったいない』『迷惑をかけてしまうことになり申し訳ない』という気持ちを表します。ビジネスシーンでコミュニケーションを円滑に進めるときに役立つ、クッション言葉の一つです。
直接的な表現で伝えると抵抗感のある内容も、『恐縮ながら』を用いることで柔らかなニュアンスを持たせられます。『僭越ながら』『勝手ながら』『失礼ながら』『微力ながら』なども意味は違いますが、同じ役割の言葉です。
それぞれのニュアンスを把握し、スムーズに使い分けられるようになりましょう。