『ありがとうございます』はビジネスでもよく使われている感謝の言葉です。意味や特徴・過去形などとの違いを押さえましょう。感謝の気持ちをより強く伝えるコツや、言い換えに使える類似フレーズも目的別に紹介します。
「ありがとうございます」は敬語として使える
『ありがとうございます』は感謝を伝える敬語です。言葉の成り立ちや含まれている敬語の種類を理解しましょう。
感謝を伝える丁寧な表現
『ありがとうございます』は、『ありがたい』と『ある』の丁寧語『ございます』から成っています。
『ありがたい』の語源である『有り難し』は『なかなかない、めずらしい』という意味を持ち、生きていることへの感謝を表す仏教用語として使われていました。
『有り難し』が変化して『有り難う(ありがとう)』となり、現在は何かしてもらったときやうれしい気遣いを受けたとき、相手への感謝を伝える言葉として使われています。
漢字で表記する人もいますが、現代では平仮名で『ありがとう』という表記のほうが一般的です。
尊敬語は含まれないが目上にも使える
『ありがとう』は敬語ではないのですが『ございます』を付ければ敬語となり問題なく使用できます。
『敬語』とは話の中に出てくる人や聞き手に対して、話し手が敬意を表すための表現を指します。敬語の種類は主に『尊敬語』『謙譲語』『丁寧語』の三つです。丁寧語は言葉を丁寧にするだけなので、尊敬語と謙譲語のように相手を立てたり自分を下げたりする働きはありません。
『ありがとうございます』に含まれるのは、丁寧語の『ございます』だけです。しかし丁寧語もれっきとした敬語ですので、目上の相手やお客様にも失礼なく使えます。
「ありがとうございました」との違いは?
過去形の『ありがとうございました』も『ありがとうございます』同様、相手に感謝を伝えられる敬語です。
二つにはどのような違いがあるのでしょうか?過去のことに対する感謝でも場合によっては現在形を使った方がよいケースがあるため、使い分け方を解説します。
相手の行為が現在のものか、過去のものか
ご存じの通り『ありがとうございます』は現在形、『ありがとうございました』は過去形です。相手の行為があった時間軸によって使い分けましょう。
例えば何かをしてもらった直後にお礼を言う場合は、現在形の『ありがとうございます』を使った方が自然です。時間がたってからお礼を言う場合には、過去形の『ありがとうございました』が適しています。
ただし相手の行為が過去であっても、あえて現在形を使うことで感謝の気持ちを強調できるケースもあるため、覚えておくと便利です。
現在形を使った方がよいケース
『ありがとうございました』は過去の出来事に対して感謝を伝えるときだけでなく、卒業式や送別会などでもよく使われる言葉です。
相手や状況によっては、関係を終わらせようとしていると捉えられてしまうことがあります。意図せず誤解を招いたり、印象を悪くしてしまったりする可能性もゼロではありません。
大切なクライアントや長期的なプロジェクトなど、今後も関係を続けていきたい相手には、過去のことであっても現在形を使った方が無難です。
より強く感謝を伝えるコツ
感謝の意を強く伝えられれば、円滑なコミュニケーションに役立ちます。『ありがとうございます』を使うとき、気持ちを強調するにはどのような方法があるのでしょうか?
前に一言付け加える
仕事をする中で、『ありがとうございます』だけでは感謝の意を伝えきれないシーンもあるでしょう。強調するときに役立つのが、前に一言プラスする方法です。
・本当にありがとうございます。
・誠にありがとうございます。
『本当に』も『誠に』も意味は同じですが、『誠に』の方がかしこまった印象があります。目上の人に気遣いや教えを受けたとき・日程などを調整してもらったときは、『誠にありがとうございます』を使うと丁寧です。
何に対して感謝しているのか伝える
単にお礼を言うだけでなく、何に対して感謝しているのかも伝えるとより効果的です。例文を参考に、あらゆるシチュエーションを想定して考えてみましょう。
・お足元の悪い中、弊社までご足労いただき誠にありがとうございます。
・この度は素晴らしいご提案をしていただき、本当にありがとうございます。
・いつもお気遣いいただき、ありがとうございます。
個人的な感想や簡単なエピソードなどを加えると、より相手に気持ちが伝わりやすくなります。ビジネスシーンに合った定型文を覚えるのも大切ですが、自分の言葉で伝えることも意識しましょう。
「ありがとうございます」の言い換え表現
感謝を伝えるフレーズは、『ありがとうございます』以外にもさまざまな言葉があります。相手や状況によって使い分けられるよう、バリエーションを増やすことが重要です。
同僚などに軽く感謝を伝える場合
相手が同僚や後輩など立場が同格・目下の場合は、ややフランクな『助かります』という表現もできます。堅苦しい雰囲気にならず、相手も受け取りやすいでしょう。
『助かります』はカジュアルな印象があるものの、丁寧語『ます』を使っており正しい敬語です。相手の手助けに対して『ありがたい』と伝える表現で、十分に感謝が伝わります。
ただし『助かる』は相手をねぎらう言葉のため、目上の人に対して使うと上から目線と捉えられてしまう可能性があります。
かしこまったビジネスシーンで使う表現
取引先とのやり取りなどのかしこまった場面では、丁寧な言い回しを意識する必要があります。『ありがとう』を堅めの表現に変えたいときに役立つのが、『感謝』を使ったフレーズです。
・いつもお気遣いいただき、心より感謝いたします。
・日頃のご厚情に感謝申し上げますとともに、貴社のさらなるご発展をお祈り申し上げます。
目上の人や取引先に対しては『ありがとうございます』よりも『感謝いたします』『感謝申し上げます』と表現した方が、よりフォーマルな印象を与えられるでしょう。
謙遜の意図を込める場合
ありがたい言葉や気遣いを受けたとき、謙遜する意味合いでつい「すみません」と言ってしまう人も少なくありません。立場が近い相手に対しては感謝のフレーズとして使えますが、社外の人や目上の相手からの厚意に使うには不適切です。
謙遜の意味合いを持たせたいなら、『恐縮です』を使いましょう。『恐縮』はありがたい気持ちや、申し訳なさを表す言葉です。
高い評価を頂いたときなどに『ありがとうございます』では尊大な印象になることがありますが、『恐縮です』であればへりくだったニュアンスを強く表せます。
より恐縮する気持ちを強調したい場合は、『痛み入ります』という表現も効果的です。
ビジネスメールで感謝を伝える表現
メールで感謝を伝える場合はこちらの表情や動作などが分からないため、より丁寧な言葉を使う必要があります。フォーマルな『御礼』を使うと、社外の人や社内でかなり立場が上の人にも失礼がありません。
・本日はお忙しい中打ち合わせのお時間を頂戴しましたこと、心より御礼申し上げます。
・この度は弊社の商品をご購入いただき、重ねて御礼申し上げます。
『御礼』を使う以外にも、堅めの文章で使える表現はいくつもあります。中でも『感謝の言葉もございません』は、『この上ないありがたさでお礼の言葉が見つからない』という最上級の感謝を表します。
・宿泊施設までご手配いただき、感謝の言葉もございません。
まとめ
『ありがとうございます』は尊敬語ではありませんが正しい敬語で、目上の人や取引先に感謝を伝えるための言葉として適切です。
ただし単に『ありがとうございます』と言うよりも、相手や状況に合わせて工夫をした方が感謝の気持ちが伝わりやすくなります。
『大変』『誠に』など一言付け加えたり、何に対しての感謝なのか伝えたりして気持ちを強く表現しましょう。メールの場合は『感謝申し上げます』『重ねて御礼申し上げます』など、より丁寧な表現を意識することが大切です。
『ありがとうございます』は日常的によく使う言葉です。ビジネスシーンでの正しい使い方やコツ・言い換えできるフレーズを覚えて、社会人としてのスキルアップを図りましょう。