『ご協力のほど』を上手に使うには、正しい意味と利用シーンの理解が大切です。ビジネスの場面で誤りなく使えるよう、適切な使い方やより丁寧な言い回しをチェックしましょう。お願いするときに役立つクッション言葉や言い換え表現も紹介します。
「ご協力」の意味と使うシーン
ビジネスシーンでは『ご協力』を頻繁に使います。言葉の成り立ちや使えるシーン、類語との違いをチェックしましょう。
力を貸してもらうこと
『協』は『力を合わせる』『一致する』という意味を持つ漢字です。『協力』は力を合わせて取り組むことを意味しています。
仕事は1人きりで完結できるものではないため、ビジネスシーンでは誰かの手助けをお願いすることもあるでしょう。手を借りるときには、『力を借りる』という意味合いで『協力』を使います。
文の始まりや締めにもよく使われる
『ご協力』はメールの文頭や締めにも使える言葉です。本題に入る前に「いつもご協力いただき、ありがとうございます」と添えれば、日ごろからの感謝の気持ちを表現できます。
『ご協力いただけますよう、よろしくお願いします』と文末に加えることで、丁寧に協力をお願いできる文章に仕上がるでしょう。
何かを依頼する内容のメールや、相手へ不便な思いをさせてしまう可能性のあるお知らせに使うのも有効です。
用件を伝えるだけの文書ではそっけなくなりがちですが、結びの言葉として『ご協力』を利用すると、相手への配慮や丁寧な気持ちが伝わります。
「ご尽力」との違い
『ご尽力』は『ご協力』と似た言葉ですが、意味合いや使い方に違いがあります。『尽力』は力を尽くすことを意味しており、相手や自身が自発的にするものです。『ご協力』のようにお願いするフレーズには適していません。
『ご尽力いただきありがとうございます』と相手の精一杯の努力へ感謝の意を示したり、『本件改めて尽力したい所存です』と自分の意気込みを表したりするときに使います。
『努力』にも言い換えはできますが、ビジネスシーンではよりフォーマルな印象のある『尽力』が好まれる傾向があります。
「ご協力のほど」の使い方
敬語表現は基本的に目上の人へ使うもののため、正しい用法かどうかだけでなく、丁寧でソフトな印象があるかも意識しましょう。『ご協力』を使うときに表現を柔らかくする方法として、『のほど』を使う言い回しが挙げられます。
「のほど」を使うことでソフトな印象に
断定を避けて表現を和らげる『のほど』を使うと、ソフトに協力を求められます。『~してもらうよう』という意味になり、言葉のトーンを優しい雰囲気に変化させる働きを持つ表現です。
「ご協力お願いします」では強制するような強いトーンになりがちで、相手によっては命令されたと感じることもあるでしょう。『のほど』をプラスし「ご協力のほどお願いします」なら、命令されているように感じません。
上司など目上の人に協力を頼みたいときに活用しましょう。
「ご協力賜りますよう」でより丁寧に
『ご協力のほど』も十分な敬語表現ですが、より丁寧な言い回しでお願いするときには『ご協力賜りますよう』を用います。『賜る』は『もらう』の謙譲語であり『与える』の尊敬語でもある言葉です。
「協力してくれるよう」を丁寧にした言葉と考えれば、意味合いがわかりやすいでしょう。「ご協力賜りますよう、お願い申し上げます」とすれば、「協力してくれるよう願う」というニュアンスで丁寧に依頼ができます。
よりかしこまった雰囲気で表現できるため、『ご協力のほど』では丁寧さが足りないような、かなり目上の人に対して使うのにふさわしい言葉です。
ただしかしこまったニュアンスが強いので、目上の人に対して使用する場合でも日常的なやりとりには向きません。
「ご協力のほど」と並べて使える言葉
『ご協力のほど』と並べて使える言葉もあります。例えば『ご理解』と並べた『ご理解ご協力のほど』は、目上の人にこちらの事情を分かってもらいたいときに使える敬語表現です。
・(お客様に対して)場内ではスマートフォンの利用ができません。ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。
『ご支援』も並べて使える言葉の一つです。目的に向かって力を合わせる意味のフレーズで、『ご支援ご協力のほど』と表現します。
・今後とも変わらぬご支援ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
頼むときは「お願いいたします」を付ける
目上の人に協力を依頼するときは、『ご協力のほど』に『お願いいたします』を付けます。『ご協力のほどお願いいたします』とすることで、丁寧な依頼が可能です。
「お願い申し上げます」もOK
『お願いいたします』より丁寧にするなら、「ご協力のほどお願い申し上げます」という表現も使えます。
接頭語の『お』に『言う』の謙譲語『申し上げる』・丁寧語の『ます』を合わせた『お願い申し上げます』は、敬意を表す言い回しです。
二重敬語という認識もありますが、慣例的に使われているためビジネスシーンで使用してもよいとされています。
「何卒」を付けると丁寧に強調できる
『何卒(なにとぞ)』をプラスし「ご協力のほど、何卒お願いいたします」とすれば、お願いの気持ちを強調できます。相手に協力してほしいと強くお願いするときに役立つでしょう。
類似の言葉に『どうぞ』『どうか』『ぜひ』などがありますが、『何卒』を使う方が丁寧な印象に仕上がります。
・今後も変わらぬご支援ご協力のほど、何卒お願い申し上げます。
・メンテナンスのため当該期間はご不便をおかけしますが、何卒ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。
協力を依頼するときのポイント
ビジネスシーンで協力をお願いするときには、ただフレーズをそのまま覚えるだけでなく、気持ちよく受け入れてもらえる工夫が必要です。依頼上手になるためのコツをチェックしましょう。
日ごろからよい関係を築くよう努める
助けが必要なときに相手を頼れるかどうかは、普段の関係性によります。スムーズな人間関係があれば、素直に『ご協力のほどお願いします』と頭を下げられますし、相手も力を貸してくれるでしょう。
そのためには日ごろから報告・連絡・相談を心がけ、周りと連携することが大切です。自己中心的な行動をしている人間に協力したいと思う人は、ほとんどいないでしょう。
周りの状況をよく確認して、余裕があれば自ら協力する姿勢を取るのがポイントです。普段人を助けていると、自分からも協力を頼みやすくなります。
クッション言葉を使う
協力を頼むときに、「クッション言葉」も役立ちます。強いトーンになりがちな言葉も、柔らかな雰囲気にできます。
何か依頼をするとき、「相手の負担にならないだろうか?強制することにならないだろうか?」と思うこともあるでしょう。クッション言葉を使えば『申し訳ない』という気持ちを伝えながらお願いできます。
また相手からすると断っては悪いし、かといって引き受ける余裕はないということもあります。この場合もクッション言葉があれば断りやすくなるのです。
依頼の場面で使えるクッション言葉
言葉の雰囲気を和らげるクッション言葉には、さまざまな種類があります。代表的なクッション言葉を覚え、お願いするときに役立てましょう。
「お忙しいところ恐れ入りますが」
依頼内容の前に「お忙しいところ恐れ入りますが」と添えることで、相手への思いやりや謙虚な姿勢を示せます。謙譲語の『恐れ入ります』を用いるため、目上の人に使える表現です。
頼みづらい内容や状況でも「お忙しいところ恐れ入りますが、ご協力のほどお願い申し上げます」という表現であれば、気遣いを示しながら依頼しやすいでしょう。
「お手数ですが」
協力をお願いするときは、相手の時間を割いてもらうことになります。その手間に対して配慮する言葉として適切なのは、『お手数ですが』です。
そのままでも敬語として正しい表現ですが、目上の人には『お手数をおかけいたしますが』とした方が謙虚な印象につながります。
『を』を抜き『お手数おかけいたしますが』とする表現も一般的ではあるものの、文法的には間違った略語です。
『手数』は名詞であり、基本的には『を』を付けます。目上の相手には、「お手数をおかけいたしますが、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます」と伝えましょう。
依頼の内容や状況に応じて使い分けよう
頼む内容やそのときの状況によっては、『ご協力のほど』以外の言葉を使った方がよいこともあります。似た意味の言葉にどのようなものがあるかチェックし、適切に使い分けましょう。
丁寧な印象を与える「お力添えのほど」
誰かの協力が必要なとき、より丁寧に表現するには『お力添えのほど』に言い換え、「お力添えのほどよろしくお願い申し上げます」と伝えます。
ただし一方的に依頼している雰囲気を感じる人もいるため、「大変恐れ入りますが」「お手数をおかけいたしますが」などのクッション言葉を添えましょう。
『のほど』と合わせることで、より柔らかな雰囲気でお願いできます。「お手数をおかけいたしますが、お力添えのほどよろしくお願いいたします」とすれば、失礼な印象も高圧的な雰囲気もありません。
主に文書で使う「ご助力のほど」
メールや文書には、『ご助力のほど』を用いることもできます。手助けするという意味の『助力』を使い、サポートをお願いできる言葉です。
・プロジェクトを成功に導くため、何卒ご助力のほどよろしくお願い申し上げます。
上司にはもちろん、社外の人にもサポートしてほしい強い気持ちが伝わるフレーズです。
まとめ
『ご協力のほど』はビジネスシーンで協力を依頼するときに使える言葉です。『のほど』をプラスすることで丁寧さや柔らかさがプラスされ、目上の人にも利用できます。
『ご協力賜りますよう』を用いることで、よりかしこまった印象の表現も可能です。『お願いいたします』をプラスするのもよいでしょう。
『お忙しいところ恐れ入りますが』や『お手数をおかけいたしますが』といったクッション言葉を使うと、相手への配慮が伝わる表現になります。
正しいお願いの表現を使うと同時に、日ごろから良好な関係作りを意識すれば、手助けが必要なとき気兼ねなくサポートをお願いできるでしょう。