『お気遣いいただき』という表現は、目上の人やお客様に謝意を伝えるときに使います。類語には『お心遣い』がありますが、どう使い分ければよいのでしょうか?『ご高配』や『ご厚意』など、ビジネスシーンやスピーチで使える言い換え表現も紹介します。
「お気遣いいただき」はどんな言葉?
相手の配慮にお礼を述べるとき、「お気遣いいただきありがとうございます」と伝えるのが一般的です。『お気遣いいただき』にはどんな意味があり、主にどのようなシーンで使えるのでしょうか?
相手からの配慮に返答する際に使う
『お気遣いいただき』は、自分を気遣ってくれた相手に対して用いる言葉です。「ありがとうございます」「すみません」「恐縮です」など、感謝の言葉を伴うケースがほとんどでしょう。
『お気遣い』とは、配慮・心遣い・懸念を示す『気遣い』に、尊敬の意を示す接頭語の『お』が付いたものです。
『いただく』は、『もらう』や『食べる』の謙譲語で、 相手から物や言葉をもらったときに用います。
話し言葉・書き言葉の両方で使える表現で、日常会話はもちろん、ビジネスシーンでも頻繁に使われます。
立場が上の人へ使う表現
『お気遣いいただき』は、立場が上の人や敬意を示したい相手に使いましょう。
目下に対して使うと相手が距離感や違和感を覚えるため、友人や同僚・部下に対しては「心配してくれてありがとう」「気を遣ってくれてありがとう」などの表現の方が適しています。
・わざわざお見舞いに来てくださり、お気遣いに感謝いたします。
・(お中元やお歳暮をもらったとき)お気遣いいただきありがとうございます
・締め切り日につきまして、お気遣いいただき恐縮です。
「お心遣い」との違い
気遣いと混同しやすい言葉に『心遣い』があります。どちらも後に感謝の言葉を伴いますが、微妙にニュアンスが異なります。シーンによって使い分けることで、相手により気持ちが伝わるでしょう。
「お心遣い」はより重い言動を指す
両者の大きな違いは、『気(意識・神経)』を使うか、『心(思い・真心)』を使うかです。
『気遣い』は礼儀として相手に何かをするというニュアンスが強いのに対し、心遣いは『心から相手を思う気持ち』があってこその言動です。心遣いは気遣いよりも『上』ともいえるでしょう。
たとえば、「細やかな気遣い」とは表現できますが、「温かいお気遣い」とはあまり言いません。
目上の人が自分のために心のこもった行動をとってくれたときは、「温かいお心遣いに感謝いたします」と表現しましょう。
使うシーンも異なる
心遣いには、『祝儀』や『心付け』という意味もあります。シチュエーションにもよりますが、物を伴う場合は『気遣い』より『心遣い』の方が適当な場合もあります。
例えば「昇進おめでとう」という言葉は気遣いですが、昇進のお祝いをもらった場合は心遣いです。
ただしこちらが相手に金品を渡す場合の「お気遣いなく」は、「お心遣いなく」と言い換えることはできません。
・祝電とお花をいただきまして、お心遣いに感謝いたします。
・〇〇さんの優しいお心遣いに、感謝の気持ちでいっぱいです。
「お気遣いいただき」の言い換え表現
『お気遣いいただき』には複数の言い換え表現があります。シーンや相手によって正しく使い分けることができれば、社会人として周囲からも一目置かれるでしょう。
『ご高配』や『ご厚情』は、手紙やスピーチでたびたび登場する表現なので、例文ごと覚えておきましょう。
心配りに対する「ご配慮いただき」
『配慮』とは、事情を踏まえながら気を行き渡らせることです。『配』には『配る』『行き渡らせる』、『慮』には『用心して考えをめぐらす』という意味があります。
相手に敬意を示す言い回しなので日常会話でも使えますが、どちらかというとビジネスシーンやメールで使われるケースが多いフレーズです。
・突然の訪問にもかかわらず、ご配慮いただきありがとうございます。
・来場の際は周りのお客様にご配慮いただき、対面を避けていただくようお願い申し上げます。
・プロジェクトの実行にあたり、〇〇様には多大なご配慮をいただきました。
敬意も同時に表す「ご高配いただき」
『高配(こうはい)』とは、他人の気遣いを敬って表現する言葉です。『配慮』『気遣い』は誰に対しても使えますが、高配は主に目上の人やお客様に対して使います。
やや格式張った書き言葉で、日常会話の中ではほとんど使われません。挨拶状や手紙ではよく使われるため、フレーズごと覚えておきましょう。
一般的に、手紙の冒頭または締めに『ご高配いただき~』『ご高配賜り~』という一文が使われます。
・平素は格別のご高配をいただき、厚く御礼申し上げます。(冒頭)
・今後とも変わらぬご高配を賜りますよう、お願い申し上げます。(締め)
深い親切に感謝する「ご厚情いただき」
『厚情(こうじょう)』とは、文字どおり『手厚い情け』や『心からの親切』を意味する言葉で、相手の親切に対して敬意を払う表現になります。
『ご厚意いただき』は堅苦しい表現のため、日常会話ではあまり用いられません。スピーチやセレモニーの挨拶、手紙の中で使うのが一般的でしょう。
・在職中は並々ならぬご厚情を頂き、誠にありがとうございました。
・旧年中は格別のご厚情を賜り、厚く御礼を申し上げます。(年賀状)
まとめ
相手から親切にしてもらった際、「お気遣いいただき〜」「お心遣いいただき〜」という感謝の言葉がすぐに口から出てくるようにしたいものです。
「この前はありがとうございました」とだけ伝えるよりも、相手に敬意が伝わります。
スピーチや手紙では、『ご厚情いただき』や『ご高配いただき』という表現も使ってみましょう。ややかしこまった印象ですが、文全体の格式がグッと上がります。