2022年4月より、WILLERとKDDIが設立した合併会社、Community Mobilityが事業を開始。エリア内の定額乗り放題サービスである「mobi」を提供します。
移動サービスといえば、電車やバス、タクシーが挙げられますが、mobiはバスとタクシーの中間のようなイメージのサービス。これまで、自転車や車で行っていた、生活圏内の移動に便利な、“ちょいのり”ができます。
現時点でのサービス提供エリアは、東京都渋谷区、東京都豊島区、愛知県名古屋市千種区、大阪府大阪市北区・福島区、京都府京丹後市の6エリア。今後は、まずは22エリアまで拡大することを検討しており、2022年夏頃を目標に実現できるところから順次始めていくとしています。
では、具体的にmobiのサービス内容を紹介していきましょう。
AIがルート選定する新感覚相乗りサービス「mobi」
冒頭で「mobiはバスとタクシーの中間」と紹介しました。これは、「バスのようにエリア内を回り、別のユーザーと相乗りもあるサービス」でありながら、「特定のルートやダイヤを用意していない」ためです。
半径約2kmに設定された運行エリアの中には、多数の“仮想バス停”が用意されており、ユーザーはアプリや電話から乗り降りする場所を事前に予約。mobiは、AIによって予約状況から最適なルートを運行します。
予約状況に応じてルートを作成するため、特定のルートやダイヤはなく、自分の目的地に到達する前に、別のユーザーと相乗りになることもあります。出発・到着時間の目安はアプリ上に表示されますが、相乗りの関係でずれることも考えられます。とはいえ、あくまで半径約2km圏内の運行なので、極端に待たされるといった心配もあまりないでしょう。
運賃は1回の乗車で300円(子どもは150円)となっており、定額プランなら30日間5000円で乗り放題となっています。家族で利用する場合は、2人目以降が1人あたり500円/30日で乗り放題の利用も可能となります。
いわば、エリア内乗り放題のサブスクサービスとしても利用できる移動サービス。エリア内に住んでいる人や、エリア内へ頻繁に買い物に行くといったユーザーは、重宝するかもしれません。
WILLERは、全国20路線279便を運行する高速バスや、京都府・兵庫県の北部を走る「京都丹後鉄道」など、移動サービスを提供する企業。KDDIは、携帯電話の利用状況から、人の流れ・動きをもとに、エリア設計や、どの地点に仮想バス停を設置すると、ユーザーが便利か、といったデータの提供をします。
他業種とのビジネスコラボレーションで生活をより強固に支えるサービスに?
mobiを提供する「Community Mobility」の設立発表会では、地域住民の移動総量を増やしていくために、他業種との連携やコラボレーションを進めることも紹介されています。
コラボレーションの第1弾として、「イオンタウン」と協業し、買い物の際の移動をサポート。英会話教室を展開する「AEON(イーオン)」とは、家族の送り迎えがなくても、安心して教室に通える環境の創出を進めていきます。
また、「吉本興業」の全国47都道府県に住む「住みます芸人」とコラボし、参加型のプロジェクトを共同企画。外出のきっかけや新たな移動サービスの提供をしていくとのことです。
発表会には吉本興業所属のタケト、エルフ、ミキ、空気階段も登場
今回は第1弾として、上記の3社とのコラボレーションが発表されていますが、今後、病院や介護施設、地域のスポーツ教室や学習塾などとも協業できれば、エリア内で“ちょいのり”という特徴を活かしながら、地域の移動インフラとして定着していくことに期待できるでしょう。
それぞれの地域に適応したサービス展開に期待
設立発表会では、現時点で会員数の目標や売り上げの目標を定めるのではなく、「生活のリ・デザイン」を目指し、地域のさまざまなコミュニティや自治体、交通事業者、地元企業と共に、コロナ後の生活を、健康的でワクワクするものに創っていくと紹介されています。
普段何気なく使用している、電車やバスといった交通機関、自転車やタクシーといった移動手段に、新しい選択肢が加われば、ライフスタイルに変化が生まれる可能性は十分あるでしょう。
また、Community Mobilityは、mobiのサービス内容を、地域ごとの課題やニーズに合わせ、それぞれカスタマイズしていきたいとしています。
車を所持している人口が少ない地域では、駅からショッピングモールを繋ぐ役割が増えたり、住宅地では、「AEON」のように子どもの習い事の送り迎え、高齢者が多い地域では、住宅地から病院やリハビリ施設を繋ぐような運行をするなど、考えられるパターンは、エリアによってさまざま。
具体的なサービス内容については検討中とのことですが、それぞれの生活様式に合わせ、地域企業と連携していくことで、より便利な移動サービスを創出していくことに期待が高まります。
取材・文/佐藤文彦