ファイナンシャルプランナーが教える「お金が貯まるヒント」
生まれながらに計画性があり、目標に向かって実直に突き進んで行ける性格なら「貯金」も難しいものではないのかもしれない。筆者は無理だ。今日描いた未来予想図が数日後には破綻している。貯金上手は尊敬でしかない。
ちなみに近年の貯金状況について調べたところ、総務省の家計調査報告では1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)は1791万円で2年連続の増加。しかし、2人以上の世帯では貯金が1791 万円を下回る世帯が約3分の2(67.2%)を占めている。
総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html
https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2020_yoyaku.pdf
これはつまり「貯金はしたいけどなかなか貯まらない」「貯金したいけど使っちゃう」という人が多いのかもしれない。そんな貯金下手の方々に刺さりそうな言葉が先日、目に飛び込んできた。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが書いた本のタイトル『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか』。
パラパラとめくったら気になるキーワードが満載。「クローゼットに黒いパンツが3枚あるとお金が貯まらない」「猫より犬が好きだとお金が貯まりにくい」など一瞬で心を奪われる始末。
貯金が苦手というより“貯金恐怖症”とも言える筆者にとって、今一番出会いたかった一冊かもしれない。今回、本書の気になる貯金テクニックを紹介すると共に、著者の黒田さんに30代40代ビジネスマン必見の「お金が貯まるヒント」を聞いた。
FP 黒田尚子氏
クローゼットに黒いパンツ、猫派より犬派が貯金を妨げる!?
そもそも貯金ができない人はどんな人か?黒田さんは「掃除や片づけ、整理整頓が苦手な人ほど貯金できない傾向が強い」と語る。その上で「お金が貯まらないキーポイントとなるアイテム」をいくつか挙げているので紹介しよう。
◆黒いパンツ
黒パンツといえば様々なコーデに使える万能アイテムだが、問題はその本数。「黒いパンツがクローゼットに3本以上ある人は要注意。お金が貯まらないクローゼットになっている」と黒田さんは指摘する。
「その理由ですが、黒のパンツが3本以上ある人は他にも似たようなアイテムを無駄に所有している可能性が高い。それぞれのパンツの使い分けができていないようなら見直すことでもっと節約できるはずです」
果たして皆さんのクローゼットは大丈夫だろうか?
◆玄関に○○が数えきれないほどある家はヤバい
たかだか一本数百円、しかしチリツモ消費で貯金を妨げてしまう物がある。そう、ビニール傘だ。「安いからといって使い捨て感覚で使う、行き当たりばったりで何かあったらコンビニで買えばいいと思っている、その消費行動が癖になってコストはかさむばかり」
また、黒田さんはもう一つ気になるアイテムを挙げている。
「冷蔵庫に保冷剤が溜まっていませんか?スイーツなどを買う度に貰える保冷剤ですが、それが溜まっているということはご褒美スイーツという名のプチ浪費を重ねている証拠かもしれません」
今日家に帰ったら玄関&冷蔵庫をチェックして欲しい。お金が貯まらない光景が広がっているかもしれない。
さらに、コロナ禍でペットを飼育する人が増え、ペット関連支出も増える傾向にあると言われる今、黒田さんは「犬派よりも猫派の方がお金が貯まりやすい」と話す。
「アニコム損害保険の『ペットにかける年間支出調査 2021』によると犬は年間約35万、猫は約17万円が必要とのこと。調査結果だけを見ると、どちらかと言えば猫の方が負担が小さいので出費を抑えられる傾向にあります」
「しかし最近増えているのがペット飼育の出費がかさみ家計が苦しくなってしまう“ペット貧乏”。すべては安易にペットを飼ってしまうことが原因です。現在の収入で天寿を全うするまで責任を持って飼えるのか?先々の費用は大丈夫なのか?を真剣に考える必要があると思います」
貯金したいなら●●だけはコンビニでその都度買うべし!
毎日使う生活用品などは基本的に値段の安いスーパーで買うか、通販サイトでまとめ買いするのがお得。それが一般的な考え方だと思う。しかし、単価が安くてもまとめ買いすべきでないモノがあるという。
「それはお酒です。私も大好きなんですがお酒は我慢するのが難しい飲み物。1本飲むと、ついついもう1本と手が伸びてしまいがち。そのためお酒はまとめ買いに向いてないんです」
「通販や量販店などで購入すると『3本セットで〇〇円』などに釣られてつい買い過ぎてしまいます。なのでお酒だけは多少割高でも最寄りのコンビニで。さらに『このコンビニの新作は何かな~』などと店内をブラつかず、目当てのお酒を1本ゲットしたらダッシュでレジに向かってください」
なるほど、勉強になる。ちなみにお酒以外にもコンビニやスーパーで買った方がいいものはあるのだろうか?
「アイスやお菓子などの嗜好品も割高なコンビニで買った方が抑止力は働くかもしれません。またネットでは『〇〇円以上なら送料無料になる』という危険ワードが心を揺さぶってくるので、それで余計なものまで買ってしまうようなら、コンビニやスーパーの方が良いということになりますね」(黒田さん)
ここ数年、コロナ禍の影響で労働環境や生活スタイルが大きく変化しているが、黒田さんによると貯蓄や資産運用に対する意識も確実に変わってきているという。
「特に若い世代が顕著です。有料のFP相談にお越しになる方もこれまであまり貯蓄や家計管理など考えていなかった20代、30代の独身男性が増えた印象です。在宅ワークが増え、これまでのこと、これからのことを振り返る時間が出来たからではないでしょうか」
「お金に対する意識の変化もそうですが、『自分の身は自分で守らなくてはいけない』ということを痛感した方々が自助努力として無駄使いをやめたり、貯蓄・投資額を増やしたり、保険に加入したりといった行動に出ていると感じます」
節約だけに励むコスパ至上主義はキケン!
ここでFPとして20年以上のキャリアを誇る黒田さんに30〜40代男性ビジネスマンに教えたい「賢いお金の使い方」を伺った。
「コスパを意識することは悪いことではありませんが、何でもコスパで計るのはキケンだと考えています。世の中にはコスパで計れるものと計れないものがあり、前者はモノの消費やサービス、後者は経験や人間関係などです。コスパが悪いと早合点して実際に体験する機会を失うのはもったいない話です」
「特に30~40代は収入や資産を殖やす大事な時期。コスパ重視で節約に励むばかりではなく、自分への投資や経験値を広げることにお金を使うことも大切ですよ」
取材協力:
ファイナンシャルプランナー 黒田尚子(くろだ・なおこ)
CFP 1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格、城西国際大学経営情報学部・非常勤講師、がんと暮らしを考える会・理事なども務める。著書に「50代からのお金のはなし」「がんとお金の真実(リアル)」など。
黒田尚子FPオフィスHP
https://www.naoko-kuroda.com/
文/太田ポーシャ