Androidスマートフォンとして、常に高い人気を得てきたサムスンのGalaxy。最近は折りたたみデザインの「Galaxy Z Fold」や「Galaxy Z Flip」なども注目を集めているが、主力モデルと言えば、やはり、「Galaxy S」シリーズだ。その「Galaxy S」シリーズの最新モデル「Galaxy S22」と「Galaxy S22 Ultra」が2022年4月21日にNTTドコモとauから発売された。
4月21日に発売された「Galaxy S22」(左)と「Galaxy S22 Ultra」の背面。写真はNTTドコモ版だが、au版もロゴなどを除き、同じデザイン
今回は「Galaxy S22」を使ってわかった「○と×」について、レポートしよう。
NTTドコモ/サムスン「Galaxy S22 SC-51C」
au/サムスン「Galaxy S22 SCG13」
サイズ:146mm(高さ)×71mm(幅)×7.6mm(厚さ)、約168g(重さ)
カラー:ファントムブラック(写真)、ファントムホワイト、ピンクゴールド
ラインアップの構成が変わったGalaxy Sシリーズ
サムスンの主力モデルに位置付けられる「Galaxy S」シリーズ。現在、国内ではNTTドコモとau向けに供給され、販売されている。ここ数年はディスプレイサイズの違う複数のモデルがラインアップされ、2018年の「Galaxy S9」と「Galaxy S9+」、2019年の「Galaxy S10」と「Galaxy S10+」、2020年は「Galaxy S20 5G」の「Galaxy S20+ 5G」というように、両社から同じモデルが販売されてきた。
ところが、2021年はグローバル向けに発表された「Galaxy S21」シリーズの3モデルのうち、NTTドコモから「Galaxy S21 5G SC-51B」と「Galaxy S21 Ultra 5G SC-52B」、auから「Galaxy S21 5G SCG09」と「Galaxy S21+ 5G SCG10」がそれぞれ発売された。つまり、6.2インチディスプレイを搭載する標準サイズの「Galaxy S21」は両社から販売されるが、ディスプレイサイズが大きいモデルは、NTTドコモが6.8インチディスプレイの「Galaxy S21 Ultra 5G SC-52B」を採用したのに対し、auは6.7インチディスプレイの「Galaxy S21+ 5G SCG10」を採用した。
こうした構成になった背景には、ディスプレイサイズが違う歴代のモデルは、『標準サイズ』のモデルの方が1年を通して安定した売れ行きを記録してきたことが挙げられる。iPhoneでも最大サイズのiPhone 13 Pro Maxではなく、iPhone 13やiPhone 13 Proが売れ筋であることと同じ理由と推察される。
そして、2022年に国内向けとして展開される「Galaxy S22」シリーズは、再びラインアップが変更され、標準サイズの6.1インチディスプレイ搭載の「Galaxy S22」、6.8インチディスプレイ搭載の「Galaxy S22 Ultra」の2モデルがNTTドコモとauから販売されることになった。ちなみに、グローバル向けで発表済みの6.6インチディスプレイ搭載の「Galaxy S22+」は、国内向けに展開されないことが明らかになっている。
ジャストサイズで持ちやすい「Galaxy S22」
複数のモデルを展開してきた「Galaxy S」シリーズは、前述の通り、『標準サイズ』のモデルが順調な売れ行きを記録してきたが、今回の「Galaxy S22」はNTTドコモとauから販売される。
ボディは一見、昨年の「Galaxy S21 5G」と同じように見えるが、幅は約71mmで変わらないものの、高さ(長さ)が5mmほど、短くなり、従来モデルよりも持ちやすく、コンパクトに仕上げられている。重量も168gと標準的なサイズのため、ジャケットの内ポケットやシャツの胸ポケットなどに入れても持ち歩きやすいサイズ感と言えるだろう。
「Galaxy S22」(左)と「Galaxy S21」(右)を並べてみると、少し短くなっていることがわかる
ボタン類は右側面にまとめられている。トップ側(左側)が音量キー、その隣が電源キー
背面は指紋などが付きにくいマットな仕上げで、さらっとした手触り
本体下部にUSB Type-C外部接続端子を備える。その右側にピンで取り出すタイプのSIMカードスロットを備える
他機種との比較は下記の通りで、サイズ的にはiPhone 13がもっとも近い。従来の「Galaxy S21 5G」は背面の左右両端を少しラウンドさせ、側面も丸みを帯びた形状だったのに対し、今回の「Galaxy S22」は背面がほぼフラットで、アーマーアルミフレームの側面も垂直に近い形状に仕上げられており、手にしたときの印象も少し異なる。
「機種名」:幅×高さ×厚さ/重さ
「Galaxy S22」:約71mm×約146mm×約7.6mm/約168g</td>
「iPhone 13」:71.5mm×146.7mm×7.65mm/173g
「Xperia 5 III」:約68mm×約157mm×約8.2mm/約168g
「AQUOS zero6」:約73mm×約158mm×約7.9mm/約146g
「Galaxy S22」(上)と「Galaxy S21」(下)では背面の両側端の形状が違い、「Galaxy S22」の方が側面が立っている
ボディの大きさはiPhone 13とほぼ同じだが、iPhoneの方が側面が立っているため、手に当たる印象が強い
背面はマットでサラサラした手触りに仕上げられており、全体的に上質で落ち着いたデザインという印象だ。ボディカラーは幅広い層に受け入れられそうな「ファントムホワイト」、女性を中心に支持されそうな「ピンクゴールド」、落ち着きのある「ファントムブラック」がラインアップされる。
耐環境性能はIPX5/IPX8準拠の防水、IP6X準拠の防塵に対応する。おサイフケータイにも対応する。SIMカードはnanoSIMカードを採用するが、eSIMには対応しない。SIMロックはかけられていない。
視認性や発色に優れたDynamic AMOLED搭載
サムスンは2010年に国内向けに初めて供給した「Galaxy S」から有機ELディスプレイ(AMOLED)を搭載しており、すぐれた視認性と発色良さでGalaxyシリーズの魅力として、定着している。
今回の「Galaxy S22」は従来の「Galaxy S21 5G」に続き、約6.1インチのフルHD+対応Dynamic AMOLEDを搭載する。2340×1080ドット表示が可能で、明るさは1300nitと非常に明るい。画面を書き換える速度を表わすリフレッシュレートも表示するコンテンツに合わせ、48〜120Hzの可変で、非常に滑らかな表示を可能にしている。SNSなどの縦スクロールをはじめ、動きの激しいゲームなどもスムーズに表示することができる。
ディスプレイには米Corning社製Gorilla Glass Victus+が貼られている。昨年あたりから他機種でも採用されてきたGorilla Glass Victusに比べ、割れにくいだけでなく、キズなども付きにくい新しいガラスを採用している。ちなみに、Galaxyシリーズと言えば、ディスプレイの両側面を湾曲させたエッジスクリーンが特長のひとつとされていたが、昨年のGalaxy S21から標準サイズのモデルはフラットな仕上げのディスプレイになり、今回のGalaxy S22も同じくフラット仕上げとなっている。
ディスプレイには超音波式指紋センサーが内蔵されており、画面ロック解除や決済などに利用できる。認証のレスポンスも非常に良く、ストレスなく使うことができる。ちなみに、市販の保護フィルムや保護ガラスを添付したときは、改めて指紋を登録すれば、問題なく利用できる。指紋認証についてはGalaxy独自の「Galaxy Pass」を使えば、Webサイトやアプリへのログインなどで、ユーザー名やパスワードを記憶させ、ログインに利用できる。指紋認証に比べ、セキュリティ性能は少し低くなるが、インカメラを利用した顔認証も利用可能なため、マスク着用時やセキュリティが必要な決済などは指紋認証を利用し、マスクを外した自宅などでは顔認証で、すぐに画面ロックを解除するといった使い分けができる。
バッテリーは3700mAhの大容量バッテリーを内蔵する。従来のGalaxy S21 5Gが4000mAhだったので、約10%近く容量が減り、カタログスペック上も連続通話時間などが10%前後、短くなっているが、元々、有機ELディスプレイなど、省電力性能に優れた設計になっているため、実用上はほとんど差を感じることはない。
充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子、Qi規格準拠のワイヤレス充電に対応する。Galaxy S22のバッテリーを使い、Galaxy BudsやGalaxy Watchなど、他のワイヤレス充電対応機器を充電できる「ワイヤレスバッテリー共有」も利用可能だ。ワイヤレス充電対応のウェアラブル機器を利用しているユーザーにとっては便利な機能のひとつと言えるだろう。
最新のクアルコム製Snapdragon 8 Gen1を搭載
Galaxy S22にはチップセットとして、米クアルコム製「Snapdragon 8 Gen1」が搭載される。4nmプロセスルールで製造された最新チップで、各社の最新フラッグシップモデルに搭載されると言われていたが、国内向けはGalaxy S22シリーズが先陣を切ることになった。試用期間はまだ短いが、一般的な利用の範囲ではあまり熱を感じさせることもなく、ストレスなく利用できる。
メモリーとストレージは6GB RAMと256GB ROMで構成される。Galaxy S21に続き、microSDメモリーカードなどの外部メモリーには対応しない。ストレージの容量は256GBもあるため、実用上はあまり困ることはなさそうだが、これまで利用していた機種のバックアップはmicroSDメモリーカードではなく、NTTドコモやauが提供するデータ移行サービスなどを利用するのが手だ。
ちなみに、データ移行については、サムスンが「SmartSwitch」という独自のアプリを提供しており、初期設定時や設定完了後に、これまで利用してきた機種からデータを転送できる環境を提供している。USB Type-Cケーブルで接続すれば、より確実かつ高速にデータが移行できるうえ、アカウントや写真データなども含め、転送できる。対象となる機種はGalaxyシリーズやAndroidスマートフォンだけでなく、iPhoneからも移行できるため、機種変更のユーザーは試してみることをおすすめしたい。
ネットワークについてはGalaxy S21 5Gに続き、5G/4G/3Gに対応する。5G対応としてはGalaxy S20 5Gシリーズから数えて三世代目だが、今回のGalaxy S22はNTTドコモ、au向けのどちらも既存のSub6に加え、新たにミリ波にも対応する。Sub6は6GHz帯以下の周波数帯域で、これまで4Gで利用してきた周波数帯域に近いため、面でエリアを構成できるのに対し、ミリ波は28GHz帯という非常に高い周波数帯域を利用するため、どちらかと言えば、スポット的にエリアが構成される。ただし、公共交通機関の駅や商業施設など、人が多く集まる場所にミリ波のエリアが増えつつあるため、乗車待ちの空き時間に必要なデータを一気にダウンロードするといった使い方もできる。
夜景や暗所撮影にも強いトリプルカメラ搭載
本体の背面には従来のGalaxy S21 5Gに引き続き、トリプルカメラを搭載する。最上部から1200万画素/F2.2超広角カメラ(13mm相当)、5000万画素/F1.8広角カメラ(23mm相当)、1000万画素/F2.4望遠カメラ(70mm相当)という構成で、望遠カメラはメインの広角カメラの約3倍の望遠で撮影でき、超解像デジタルズームを組み合わせたスペースズームでは約30倍相当の望遠撮影が可能だ。
背面には上から順に、12MP、50MP、10MPのトリプルカメラを搭載。カメラ部の突起もあまり目立たない
撮影は基本的にAIで自動的にシーンを認識するため、あまり撮影モードを意識する必要はないが、人物を撮るポートレート、夜景や暗所に適したナイトモード、一回の撮影で動画と静止画を複数撮影できるシングルテイクなども利用できる。なかでも夜景や暗所での撮影はイメージセンサーのサイズが大きくなり、ビニング(複数のピクセルをひとつのピクセルとして撮影)機能により、一段と明るく撮影できるほか、夜景などをバックにした撮影では人物が一段と際立ったポートレートを撮影することもできる。
暗いバーでカクテルを撮影。グラスの質感やカクテルの色合いを美しく再現
ポートレートで撮影
モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション)
また、撮影した写真の中で、写り込んでしまったオブジェクトやガラスの反射などを消去できるAI消去の機能も搭載されており、撮った後の楽しみが拡がる環境を整えている。
ディスプレイ上部のパンチホール内には、1000万画素/F2.2(26mm相当)のインカメラを搭載する。1人でセルフィーを撮るモードに加え、背景や複数人を写し込むワイド撮影にも対応する。少し面白い撮り方としては、インカメラで自分を撮りながら、メインカメラで周りの様子を撮影するディレクターズビューという撮影モードが用意されている。旅先で周囲の様子を撮りながら、自分でレポートするといった使い方が楽しめるモードとなっている。
カメラの性能は一概に比較できないが、暗いところでの撮影はライバル機種よりも優れている印象で、面倒な設定や専門的な知識がなくても簡単に高品質な写真が撮影できる点は評価できる。編集機能も充実しており、SNSからビジネスまで、幅広いシーンで活用できそうだ。
使いやすいユーザインターフェイス
Galaxyシリーズが安定した人気を得ているのは、「One UI」と呼ばれる使いやすいユーザーインターフェイスを採用していることが挙げられる。
Androidプラットフォームの標準的なホーム画面をベースにしながら、アプリ一覧画面ではアプリをフォルダーにまとめたり、ロングタッチでアプリ内のショートカットメニューを表示できるなど、細かいところの使い勝手も考慮されている。ホーム画面やアプリ一覧画面はレイアウトなどを自由にカスタマイズできるため、自分好みに仕上げることが可能だ。
設定画面はAndroidの標準的な仕様に準拠しているため、移行ユーザーにもわかりやすい
Galaxyシリーズではディスプレイの両側端が湾曲したエッジスクリーンの時代から親しまれてきた「エッジパネル」も健在で、画面の右上部の位置を内側にスワイプすると、アプリや連絡先を登録可能なメニューが表示される。よく使うアプリを登録しておくと便利だが、これもカスタマイズが可能で、ツールやリマインダー、天気予報、タスクなどを表示することもできる。
右側面上部を内側にスワイプすると表示される「エッジパネル」にはアプリのショートカットが登録されている。連絡先やツール、リマインダーなどを登録することも可能
画面上部から引き出すパネルで、さまざまな機能をON/OFFできる
また、日本語入力も最近はGoogleが提供する「Gboard」を採用する機種が多いが、Galaxy S22には独自の「Galaxyキーボード」が搭載されており、キーボードのデザインやレイアウト、ユーザーインターフェイスなどを自由にカスタマイズできる。文字入力はスマートフォンでもっとも頻繁に使う機能だけに、自分の使い方に合わせた設定ができるのは便利だ。
持ちやすいサイズと高機能は「○」、12万円超の価格とeSIM/microSD非対応は「×」
Androidスマートフォンとしては世界でもっとも売れているサムスンのGalaxy。その主力モデルに位置付けられるのが今回、NTTドコモとauから発売された「Galaxy S22」だ。上位モデルの「Galaxy S22 Ultra」も同時に発売されたが、標準的で持ちやすいボディサイズに、上位機種並みの高機能を凝縮した「Galaxy S22」は、幅広いユーザーにおすすめできるモデルだ。暗いところにも強いカメラ、安定したパフォーマンス、優れたユーザービリティなどは、「○」を付けられる点と言えるのではないか。
逆に、「×」を付けたくなるのは、まず価格だろう。ここ数年、各社のフラッグシップモデルは高くなる傾向にあるが、Galaxy Sシリーズの主力モデルも13万円に迫る価格になってしまった。自動車の残価設定ローンにも似た端末購入プログラムの「いつでもカエドキプログラム」(NTTドコモ)、「スマホトクするプログラム」(au)を利用すれば、実質的な負担額を7万円前後に抑えることができるので、これを検討してみるのも手だろう。
また、本体の仕様としては、急速に普及が進むeSIM、Galaxy S20シリーズまでサポートされていたmicroSDメモリーカードが非対応になっている点が挙げられる。eSIMについては各携帯電話会社でもサービスが提供されはじめているが、物理的なnanoSIMカードとデュアルSIMで利用できることが敬遠されたのかもしれない。microSDメモリーカードは本体のストレージが増えたため、非対応になったのだろうが、従来機種からのデータ引継ぎに困るユーザーがいるかもしれない。本稿で説明したデータ移行ツールの「SmartSwitch」が有用だが、これまでmicroSDカードを利用してきたユーザーはUSB Type-C接続のカードリーダーなどを用意して、対処することになりそうだ。
取材・文/法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。