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ユニクロ、マルヒロ、スープストックトーキョー、企業が造る公園が続々と誕生している理由

2022.05.15

公園といえば国や都道府県、市町村などが管理運営しているイメージだが、ユニクロが店舗の屋上全体を公園にした「UNIQLO PARK」や銀座の一等地にある「銀座ソニーパーク」など、近年は、企業がつくるオリジナルの公園が注目を集めている。店舗と一体化した公園は、子どもが遊べるスペースや人々の憩いの場としてだけでなく、様々なイベントやライブなども開催が可能。集客を増やすほかに、企業はどのような目的で公園を建設しているのか?そんな企業の取り組みを具体的に紹介したい。

波佐見焼メーカーがつくる公園「HIROPPA」

2021年10月、長崎県の伝統工芸品「波佐見焼」の産地メーカー「マルヒロ」が2億円を投じて私設公園「HIROPPA(ヒロッパ)」をオープンした。マルヒロの全ラインナップを揃える直営ショップのほかに、1200坪の敷地には焼き物を通してつながったアーティストがデザインする遊具、カフェやキオスクも併設。園内一周バリアフリーの通路を敷設し、車いすやベビーカー利用者にも配慮した設計だ。

同社にゆかりあるアーティストのオブジェや壁画、焼き物の粉砕が敷き詰められた砂浜など、陶磁器メーカーならではのアイデアも随所に光る。休日になると、駐車場には県外ナンバーも多く、無邪気に遊ぶ子どもやレジャーシートを広げてくつろぐ人たちの姿が見られる。

代表取締役社長の馬場匡平さんは「メーカーがつくった公園という話題性にデザイン性が加わることで、訪れる価値がある場所になるのではないかと思っています。伝統工芸ありきで訪れるよりも、ハードルは低いですよね。来てみて『波佐見焼のメーカーの公園なんだ』と気づいてもらえればいい」と話す。

後継者不足の伝統工芸に一石を投じる

波佐見町は江戸時代から400年続く陶磁器の生産地。そんな伝統工芸が近年抱えるのは後継者不足と需要の減少の問題だ。

「陶器は百均でも手に入る時代。そうなると波佐見焼は、生活必需品ではなく、嗜好品になってしまう。伝統産業を同じスタンスで続けていけるのかという課題はずっとありました。

まずは波佐見焼を知ってもらいたい。これまでも陶器産地の振興を目的にイベントなどを企画したのですが、場所を借りるにも役所などへの届け出や手続きが大変で…。この手間を省くために『場所があればいい』と思い立ち、公園づくりを始めました。そこが楽しくて、なおかつ無料で入園できるのであれば、人が集まるのではないかと考えました」

集まった人たちのニーズに応じ進化を続ける

メーカー発の公園の良さはニーズに応じて進化を続けられること。馬場さんは、敷地を拡げてひまわりの種をまき、全長450メートルのひまわり迷路を作っている。また、隣接する古民家はイベントを開催したい人に場所を貸し、夏には南アルプスの天然氷を使ったかき氷屋がオープンする予定。

「遊び方や過ごし方はそこに集う人が考えてくれたらいい。場所は用意したので、誰かが何かやりたいと思った時にはぜひ活用してほしいですね。HIROPPAはみんなを応援する場所です。日常生活でイラっとした時にここに来れば忘れられる、そんな心の拠り所になれたらいいなと思っています」

マルヒロ「HIROPPA(ヒロッパ)」

長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷682
問い合わせ/0956-37-8666
営業時間/10:00~18:00
休み/不定休
駐車場/70台
https://hiroppa.hasamiyaki.jp/

子どもたちのアイデアが詰まったファミリーレストランの公園

ファミリーレストラン「100本のスプーン AZAMINO」は、神奈川県横浜市青葉区の店舗の隣に地元の子どもたちと一緒に公園をつくっている。プロの建築家と公園の設計図から考える「コドモたちみんなとつくる公園プロジェクト」は2018年にスタート。“つくり続ける公園”をコンセプトにしている

同プロジェクトを進める株式会社スープストックトーキョー企画開発部の蓑毛萌奈美さんは経緯を次のように説明する。

「ファミリーレストランなのでお子様連れのお客様が多く、お子様たちが退屈しないような場を作りたいと考えていました。2013年のオープン当初から店舗に続く100坪ほどの敷地が手付かずになっていたので、そこを公園にすれば、親御さんの目の届く範囲で、食事を終えたお子様が遊ぶことができるのではないかと考えたんです。

地域に愛され続けるレストランでありたいと思った時、子どもたちと一緒に公園をつくることができたら面白いかもしれない。そして参加してくれた子どもたちの成長を見続けられるというのもファミリーレストランだからこそできる取り組みではないでしょうか」

プロジェクトに携わることで芽生えるオーナーシップ

プロジェクトを進めるにあたり、「一緒に公園をつくるパートナーとして子どもたちと対等に接することを大事にした」と蓑毛さんは話す。オリエンテーションを重ね、誕生した公園には、斜面の高低差を活かした滑り台や水遊びができる池となるオブジェ、秘密基地のような小屋など様々なアイデアが詰まっている。また畑や果樹園を作り、収穫したものをレストランでシェフに料理をしてもらいたいという要望も取り入れた。

「子どもには豊かなアイデアがたくさんあるけど、安全面や予算の事情で現実化するのはなかなか難しいです。だからといって子どものアイデアだけを集めて、大人の都合でつくってしまうと、その公園は単なる素敵な場所にすぎません。だからパートナーである子供たちには、『できないことはなぜできないか』を理解してもらうよう建築家の立場から丁寧に説明していただきながら、子どもたちが納得感をもって設計することに努めました。

公園づくりに参加してくれた子どもたちは自分たちがつくった公園だというオーナーシップが芽生えたような気がします。これからも『考える』『つくる』『遊ぶ』を繰り返し、公園づくりをしていきたいと思っています。子どもたちにも地域の人たちにも心地よい場所として存在し続けられたらいいですね」

企業が公園づくりをする意図は

では多額の資金を投じ、企業が公園づくりをするのには、どんな狙いがあるのだろうか。

「企業はただ“モノづくり”をして商品を提供するだけではなくて、その商品の背景を伝えたり、商品提供の前後にある体験を通じて、お客様との共感関係をどう育んでいくかということを考えているのではないでしょうか」と蓑毛さんは分析する。

「例えば、アパレルブランドが一般の人と一緒に服作りの過程を楽しむべく、種からコットンを育てる企画をしたりしています。私たちも、今回は公園をつくりましたが、ファミリーレストランがプロデュースする家族向けのホテルやキャンプ場があってもいいのではないかと考えています。

公園をつくることがビジネスにどのように寄与するか、その評価は非常に難しいなと思っています。ただ、お子様たちが『食べる場所』としてのファミリーレストランではなく、 『一緒に公園を作る場所、自分たちの遊び場』として100本のスプーンに気軽に遊びにきてくれるようになったのは、とてもうれしいです。

参加してくれた子どもたちが高校生になってアルバイトとして店舗で働いてくれる、結婚して子どもを連れてきてくれるなど、人生の中で100本のスプーンと接点を持ち続けてくれたら嬉しいですね。また『公園づくりに参加したことで建築家という仕事に憧れて、『建築家になりました』という方が将来いたとしたら、きっと私たちはこの公園を子どもたちと一緒に作った意味があったなと強く実感すると思います」

100本のスプーン AZAMINO

神奈川県横浜市青葉区大場町704-60 あざみ野ガーデンズ内
問い合わせ/045-904-1007
営業時間/11:00~20:00、土日祝日11:00~21:00
休み/不定休
https://100spoons.com/azamino/

公園をつくることで、蓑毛さんは「小さなお客様がたくさんできたことが財産」と話し、馬場さんは「我々に共感してくれる人がいて、そこから何かが生まれたら面白い」という。目先だけでなく長いスパンで見ても、共感のその先に何があるか描き切れていないところが興味深い。

取材・文/佐野恵子

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