都市再生緊急整備地域に指定されている横浜市中区の海岸通り地区では、現在、国際競争力強化のための業務機能やホテル機能を導入する都市再生事業が進められている。
このエリアには横浜郵船ビルや横濱ビル(横浜で最初の高層ビル。現在解体中)、万国橋SOKOなど、みなと横浜の歴史を刻んできた建物があり、どう活かすか注目されてきた。その事業者である日本郵船、三菱地所、宇徳は2022年1月、都市計画(素案)を発表している。
そこから見える、これからの海岸通り地区の姿をご紹介しよう。
対象は海岸通り3丁目、4丁目の約1.5ha
計画の対象は以下のような4つの地区に分けられている。
それぞれの地区の計画概要は、
A-1地区
横濱ビルを解体し、国際ビジネス環境の強化を狙ったオフィス、インキュベーション施設、文化施設、店舗を展開する高さ100mほどの高層ビルを建設。
A-2地区
元からある歴史的建造物(横浜郵船ビル)を残し、ホテルなどに活用。
A-3地区
A-2に予定しているホテルの付帯施設として、遊歩道など整備。
B地区
オフィスと店舗が入居するビル(宇徳の新社屋)に。
現在の姿と将来のイメージ図
さらに細かく見ると、各地区のイメージ図も公開されているので、現在の状況と比較すると、このようになる。
A-1およびA-2地区
現在、海岸通りから横浜郵船ビルと横濱ビル跡地方向を臨むと、このような景色にある。奥の高い建物は神奈川県警察本部だ。
将来のイメージ図では、横浜郵船ビルはそのままに、奥の横濱ビルが高層ビル化される。
ただし、A-1地区の高層ビルはA-2地区の横浜郵船ビルのコーニスラインを尊重したピロティ空間(柱だけで構成した吹き抜けの空間)を設け、歴史的建造物を圧迫しないよう配慮される。
ちなみに、横濱ビルというのは、戦後、横浜市内で最初に建てられた高層ビルのこと。現在、フェンスに囲まれ、解体作業が始まっている。横濱ビルの名は遠くから見えるが、その姿は近日中に見えなくなるものと思われる。
本町通りから横浜郵船ビルを見通す際、新たな建物が重なることなく、今までと同じく、空が抜けるように見えるよう配慮する、見通し景観の維持も盛り込まれている。
以下は現在の見通しと、イメージ図。赤線で囲った部分に新たな建物が入らないよう配慮されている。
A-3地区
現在のA-3地区は駐車場になっている。
この地区は横浜郵船ビルの裏手になり、歴史的建造物に囲まれた遊歩道が整備される。
別角度(神奈川県警察本部側)からA-3地区を臨むと、現在は駐車場が目立つが、将来は水辺に面した憩いの空間になる。
B地区
万国橋から見た現在の風景。こちらは既存建物の解体工事が進んでいる。
事業者が目指す姿
この開発について事業者である日本郵船、三菱地所、宇徳は、次のようなコメントを出している。
横浜都心臨海部の機能強化を図るための結節点として、活性化の拠点となるよう、関内地区の活力をけん引するビジネスの新たな賑わいを創出します。さらに、海に面する立地を活かした賑わいの形成や歩行者ネットワークの整備、開港の歴史・文化の魅力を伝える歴史的建造物の保全活用を図り、伝統と風格ある街並み景観を形成することを目指しています。
なお、海岸通り地区の北側では、2023年春の完成を目指し、横浜地方合同庁舎(仮称)の整備事業も行われ、周辺の景色は大きく日々変化している。変わりつつある街を眺めながら、散歩を楽しんでみてはいかがだろう?
取材・文/西内義雄