コロナ禍で改めて感じさせられた家族の絆。特に家族の一員であるペットを大切に飼育する人が増えている。経済産業省は今年3月、ペット産業の動向を発表し、「コロナ禍でも堅調なペット関連産業」という記事がホームページに掲載されている。
中でも大型犬の飼育は愛犬家にとっては憧れだが、実際に飼育している人の実態を知る機会は意外と少ないかもしれない。そんな中で、新刊「ドベとノラ 犬がくれたやさしい世界」(KADOKAWA発刊、定価1100円+税)の著者ヨシモフ郎さんが、大型犬と暮らす毎日ついて紹介している。
著者のヨシモフ郎さんに大型犬の魅力や苦労について、インタビューをお願いした。
想像より10倍以上大変だった大型犬の飼育
――ヨシモフ郎さんが感じている、大型犬の最大の魅力について教えてください。
ヨシモフ郎さん どっしりとした重さとその存在感です。
―-大型犬を飼育したのはドベくんがはじめてですか?
ヨシモフ郎さん 大型犬を飼うのはドベがはじめてです。
自分はガサツな人間のため小型犬だとちょっと怖いというのがあったので、全力でぶつかっても大丈夫そうな大型犬を選びました。
――大型犬を飼育する前と後で、大型犬に対するイメージは変わりましたか?
ヨシモフ郎さん 大型犬を飼うのは大変だろうな~とは思っていたのですが、想像より10倍以上大変でした。
――10倍ですか!犬と暮らす前と後で意識や生活は変わりましたか?
ヨシモフ郎さん 生活は180度変わりました。まさか夜型の自分が朝起きて散歩に行ったり、ヒキコモリだったのに海や山に行くようになるとは、思いませんでした。
他人と食事をするのが苦手だったのですが、犬仲間とはバーベキューや餅つきも楽しむようになりました。自分もすごく動くので、ご飯が美味しいです。
老若男女、誰でも「ゴリラ」な大型犬飼い主さん
――大型犬は飼い主を変える力があるのですね。作品中では自らをヒキコモリからゴリラになった、と描いています。
ヨシモフ郎さん 自分の中でゴリラは「強い」と同時に「冷静で頼りになる理想のボス」のイメージがあります。大型犬を飼育しようとすると、体力も力もかなり必要になってきます。
――優しそうな女性の大型犬飼い主さんも登場しますが、女性もやっぱりたくましいゴリラになりますか?
ヨシモフ郎さん 犬種や年齢にも左右されると思いますが、その子の性格が一番大きいと思います。
本に出てくるグレートピレニーズのピレくんはおっとりタイプで、庭や部屋の中でゆったりと自由に遊んでいます。散歩もゆ〜っくり歩く子です。それでも時間をかけて登山などしているので、お母さん(飼い主さん)もかなり健脚です。ニコニコしながら3〜5時間くらい平気で歩いてます。老若男女、誰でもゴリラになります(なれます)。
ご年配の方でも驚くほど若々しく、パワフルな飼い主さんがたくさんいらっしゃいます。自分も犬を飼っている限り、ずっとゴリラのままでいたいなと願ってます!
――二頭と暮らす中で大変なことを3つあげてください。
ヨシモフ郎さん ①費用。給料はそのまま犬達へスライドです。犬の為に働くようになり、それが至福になります。
②掃除。犬を飼う前の5倍部屋を掃除しても10倍は汚れます。部屋が汚れていても多少は許して頂きたいです。
③破壊。これはドベだけですが、家具家電、そして家さえも消耗品と化します。いずれ壁の穴が愛しくなってきます。
ブリーダーでは母犬・父犬に会える
――ブリーダーをネットで検索されていましたが、そこに決めた理由は何でしたか?
ヨシモフ郎さん ブリーダーさんのお宅は車で4時間ほどかかる場所だったのですが、それでも比較的近かった事と、母犬と父犬に会えるのも嬉しいなと思いました。なによりHPに上がっていたお父さん犬が凄くキリッとしててカッコ良くて一目惚れに近かったです。
――ドベくんを最初に抱っこした時のことを教えてください。
ヨシモフ郎さん はじめて会った時は4キロもなかったくらいなのですが、素直に重いな、と。
姉の猫を抱っこする事に慣れていたので、犬って抱っこしにくいな、とも思いました。実際うなぎのように暴れてたので、何度か頭突きを食らってます。
大型犬に必須なしつけのこと
――大型犬の子犬時代はしつけが大切だと言われていますね。
ヨシモフ郎さん ドベは24時間365日かまって欲しいタイプなので『マテ』を教えるのにかなり苦労しました。
ノラのしつけに関しては何一つ苦労する事なく、逆に『もっとワガママで悪い子になってもいいんだよ』と話しかけてました。
――性格はずいぶん違いますね。ドベくんは一晩で一キロ増えると描かれていましたが、大型犬はそんなに成長が早いのですか?
ヨシモフ郎さん 体重の増加はご飯の後だったりトイレをしたかどうかによって、毎日差があるのですが、本当に1日で1キロ増えた日もありました。
大型犬の飼い主さんならわかってくれるとは思うのですが、本気で瞬きするたびに大きくなります。ビックリします。
――この本を読んで「大型犬を飼いたい」と思った人に何かアドバイスはありますか?
ヨシモフ郎さん 自分が大型犬を飼う想像をしてみてください…できました?
実際に飼うとなるとそれの10倍くらい大変です。それくらいお金がかかります。手間もかかります。場合によっては破壊もされます。怪我をしたりもします。筋肉痛で苦しみます。
でもその想像の100倍以上楽しい事嬉しい事がたくさんありますよ。
名前を呼べば、一生懸命走ってきてくれる
――素敵ですね!ドベくんの子犬時代のもっとも幸せな思い出があれば教えてください。
ヨシモフ郎さん 毎日幸せいっぱいだったので選びにくいのですが、名前を呼んだらこちらを見て一生懸命走って来てくれるのが嬉しかったです。
――もし今、ドベくんがいたらなんと声を掛けますか?
ヨシモフ郎さん 「あ、元気?いい天気だね~」
――ドベくんの次の子をシェルターから引き取りますが、「自分では決められなかった」という心の葛藤が、同じ飼い主としてとても強く共感できました。最後に背中を押してくれたのは何でしたか?
ヨシモフ郎さん 優柔不断で決断できなかった自分の背中を最後に押したのは、ドベとの楽しかった思い出です。ドベと歩いた世界をもう一度歩きたい、と思いました。
――そんなドベ君とのお別れのシーンでは、涙が出ました。
ヨシモフ郎さん ドベとのお別れの話は泣きながら描きました。『辛ければ描かなくても大丈夫ですよ』と担当さんからお気遣いをもらいつつも、でもいつかは描かなければいけないと思っていたお話ですので、正面から向き合う機会を与えて下さった事に感謝しております。
――作品をこんな風に読んで(受け取って)欲しいという願いはありますか?
ヨシモフ郎さん 受け取って欲しい…うーん難しいですが、すでに虹の橋へ渡った子、今一緒にいる子、そしてこの後出会う子に「君が大好きだ、愛してる」と言いたくなる本になってると嬉しいです。
――ありがとうございました!
いつかはいっしょに暮らしてみたいあこがれの大型犬。でも、ワクチンや健康診断など犬にかかる費用も大型犬になると、かなり高額になってしまう。飼育の苦労や、それを上回る喜びについても、作品ではきちんと描かれている。また、譲渡会のやり方や現状を教えてくれるのはとても参考になる。犬好きならば共感しながら、学べる点の多い、最高の一冊となっている。
著者紹介
ヨシモフ郎
九州在住。子供の頃から絵が好きで、漫画家アシスタントや、ゲーム背景・塗りの仕事の経験がある。コロナ禍をきっかけに、愛犬のドベとノラとの思い出を漫画にしてインスタグラムに投稿したところ、話題に。趣味はゲームと読書。好きな食べ物は納豆とサツマイモ(犬も食べられるため)。
文/柿川鮎子
編集/inox.