会社を退職した後の住民税の納付方法は退職時期によって異なるため、きちんと把握しておくことが大切です。具体的にどのような手続きが必要なのか紹介します。注意すべき点にも触れるので、確認してスムーズに手続きを行えるようにしましょう。
住民税の納付方法
住民税は、都道府県に納める『道府県民(都民)税』と市区町村に納める『市町村民(特別区民)税』を合わせた地方税です。各自治体へは、どのように納税するのでしょうか?
「特別徴収」と「普通徴収」がある
住民税の納付方法には、『特別徴収』と『普通徴収』の二つがあります。
『特別徴収』は、勤務先の会社が毎月の給与から天引きして徴収し、納税者に代わって納める方法です。前年の所得を基に算出された納税額を12カ月で分け、6月から翌年5月にわたって支払います。
『普通徴収』は、納税義務者が自分で納税する方法です。個人事業主やフリーランスの場合が該当します。そのほかにも、特別徴収の要件を満たさないパートやアルバイト、退職者なども『普通徴収』の対象です。
退職後の住民税はどうなる?
退職後の住民税の納税方法は、退職時期によって異なるため、時期に分けてそれぞれ解説します。すぐに別の会社で働く場合についても見ていきましょう。
1~5月に退職する場合は「一括徴収」
1月1日~5月31日に退職する場合は、原則として『一括徴収』されます。住民税は前年の所得を基に算出され、12カ月に分割されて給与から差し引かれています。退職後は天引きできなくなるため、残りの税額をまとめて一括払いするというものです。
具体的には、5月までに差し引かれる予定だった残りの税額が、退職月の給与や退職金から差し引かれます。ただし、税額がその月の収入よりも高額の場合は、『普通徴収』に切り替えての納税も可能です。
6~12月に退職する場合は「普通徴収」
6月1日~12月31日に退職する場合、退職月に関してはそれまで同様に『特別徴収』が可能です。翌月以降については、『普通徴収』に切り替わります。自治体から送付される『納税通知書』に従い、自分で支払う形です。
希望者に関しては、退職月の収入から『一括徴収』も可能です。退職時期によっては高額の支払いになる場合もあるものの、自分で手続きをする手間が省けます。
転職先が決まっている場合は「特別徴収」を継続可能
すぐに別の会社で働く場合は、転職先の会社で『特別徴収』を継続することが可能です。ただし、手続きに数カ月を要し、次の会社への入社に間に合わないケースもあります。
また、退職した会社と転職先の会社間で事務的な手続きが必要です。つまり、退職した会社に転職先を知られてしまうことになります。
手続きが間に合わない場合や転職先を知られたくない場合は、退職する会社に『一括徴収』してもらうか、『普通徴収』に切り替えて自分で支払いましょう。
「普通徴収」の手続き
退職後に『普通徴収』に切り替わった場合の具体的な手続きを紹介します。事前に把握し、トラブルなく納税を済ませられるようにしましょう。
納付書が自宅に届く
毎年5〜6月頃に、1月1日時点で居住している地域の自治体から自宅宛てに『納税通知書』が送られてきます。支払い方法は、『一括』と『分割(年4回)』から選択が可能です。
通常、それぞれの納付書が同封されていますが、地域によっては一括払い用の納付書が同封されていないケースもあります。その際は、分割用の納付書を全て使用することで一括払いが可能です。
分割の場合の納期限は、6月末・8月末・10月末・翌年1月末です。
金融機関などで納付する
『納税通知書』が届いたら、それぞれの納期限までに支払いましょう。地域によって異なりますが、金融機関の窓口をはじめ、役所やコンビニで支払えます。モバイルバンキングやクレジットカードが利用できる地域もあるので、確認してみましょう。
分割の場合は、『口座振替』が利用できる地域が少なくありません。支払いのために金融機関などに出向く手間が省け、うっかり納付を忘れてしまう危険もないため、おすすめです。
手続きの方法は地域によって異なるため、自治体のホームページなどで確認しましょう。
退職後の住民税に関して覚えておきたいこと
退職後の住民税に関する注意点を二つ紹介します。後から「こんなはずではなかった」という事態に陥らないように、事前に確認しておきましょう。
翌年の住民税の負担が大きい可能性も
退職して収入がないにもかかわらず、多額の住民税を支払わなければならない可能性があります。住民税は前年の所得を基に算出されるためです。前年の所得には、給与や賞与だけでなく退職金も含まれるため、退職後は通常よりも税額が高くなるケースが珍しくありません。
また会社に勤めている間は、12に分割した税額が毎月の給与から差し引かれていました。『普通徴収』になると、分割でも年4回の納税になるため、1回に支払う額が多くなります。
退職した翌年は、住民税の負担が大きくなる可能性がある点を覚えておきましょう。
滞納すると延滞金を請求される
住民税は、納期限までに忘れずに支払うことが大切です。それまでは給与から天引きされており、自分での手続きに慣れていないため、うっかり忘れてしまうリスクがあります。
滞納すると督促状が届き、延滞金が請求されます。督促状が届いて忘れていることに気付いた場合は、できるだけ早く支払いましょう。支払いを先延ばしにすればするほど延滞金が増えるだけでなく、最終的には財産を差し押さえられるリスクもあります。