ペットのサプリメント最新事情とは
医療の進歩に伴って、ペットの高齢化が進んでいる。同時に栄養補助食品として、または免疫力を高める効果を期待してペット向けのサプリメントへの関心も高まっている。
2019年に発表された調査によると、2018年のペット向けサプリメントの売上は63億円。前年比6.8%増となり、今後も高齢ペットの増加とともに、サプリメント需要の伸びが予測される。
そこで、ペットのサプリメントに関して気をつけたい、5つのことを確認しよう。
その1.サプリメントは医薬品ではない
サプリメントを取り入れる目的としては、関節炎や心臓機能低下、認知症、皮膚病、免疫低下、肥満、消化器障害といった症状の改善、緩和などが考えられる。サプリメントの原料はきのこ類や乳酸菌、酵母、有機ゲルマニウム、多価不飽和脂肪酸といった自然由来の成分である。
初めに確認したいのは、サプリメントは医薬品ではないということ。医薬品は厚生労働省の許可が下り、有効性や効果が科学的に認められたもので、人間のものと同様に薬機法の対象である。
サプリメントの分類は食品である。つまり薬品とは異なり、安全性や副作用などの審査を受けているわけではない。効能や効果が保証されているわけではなく、効果がある可能性はあるものの、科学的な根拠があるわけではない点に留意したい。
その2.心配なことは医師に相談する
ペットの様子に違和感がある、いつもと違うと感じたら医師に相談するのが先決だ。ペットは言葉で身体の不調や不快感を伝えることができないのに加えて、痛みを隠しがちなため異変に気づきにくいと言われている。
日常的に接していて、ペットのことを1番知っているオーナーが感じるサインは、何らかの異変や病気の兆候を示している可能性がある。少しでも不具合を感じたら、サプリメントを検討するのではなく、まずは医師に診てもらうことを前提としよう。
サプリメントを取り入れたいと思ったら、獣医師に相談する方法もある。実際、2019年に発表された調査結果によると、ペット用のサプリメントは動物病院で手に入れる人が約8割であると報告されている。
その3.サプリメントの役割はあくまで栄養の補助である
サプリメントは、普段の食事で不足してしまう栄養素を補うために摂るものとの位置付けが正解。ペットの種類や年齢によって、かかりやすい病気やトラブルが出やすい部位が異なるため、その子に合ったサプリメントでサポートするといった考え方が必要である。
例えば、高齢の犬は足や腰が弱って関節炎になりやすく、この場合にはグルコサミンやコンドロイチンを取り入れるのがおすすめだ。夏場の肌トラブルや乾燥など、皮膚や被毛のケアが目的であれば、オメガ3オイル(肝油)やハナタケシメジ、乳酸菌がいいとされる。
このほかアレルギー対策や手術後の再発防止など、それぞれに必要な栄養素をピンポイントで補う方法で、上手に活用したい。
その4.飲み合わせを考慮し、適量を与える
サプリメントと医薬品の相互作用で問題が生じたケースは少なくない。
例えば栄養素の豊富なサプリメントであるクロレラと、血液をさらさらにする薬のワルファリンを併用すると、クロレラがワルファリンの作用を消してしまう。
このように飲み合わせによって効用に影響が出る例があるほか、組み合わせによっては健康を害する働きをすることがある。継続的に持病の薬を飲んでいるようであれば、薬とサプリの相互作用についてあらかじめ考慮が必要だ。たとえ単発や短期であっても、服用中の薬があれば充分に注意しよう。
サプリメントには、適切な用法用量が決まっている。一般的にペットの体重5キロごとに適切な量が変わり、決められた量より多く与えると副作用の心配がある。
例えばカルシウムを必要以上に与えると、体内のカルシウムとリンのバランスが崩れて病気の原因となる。また多すぎるグルコサミンは、食欲不振のもとである。
具体的な症状が現れなくても、特定の物質の過剰な摂取は肝臓や腎臓に不必要な負担を与えるため、適量を守ることを心がけよう。
品質基準
最後にサプリメントを選ぶ際の品質基準について確認しておきたい。人間のサプリメントに対しては、「NPOサプリメント臨床研究会」と「NPO日本サプリメント評議会」が評価を行い、認証している。評価対象は前者が食歴、農薬試験、毒性試験、貴金属試験など。後者は原料、製造工程、製品などを対象とする。
ペットのサプリメントに対する人間と同様の評価制度、または機能や必要性、使用目的を助言するアドバイザーは現時点では存在しないが、動物用サプリメントの品質を保証するものに、GMPマークが存在する。GMPはGood Manufacturing Practice の略で「適正製造規範」という。
GMPマークは製品が安全に作られ、一定の品質が保たれることを目的とする製造工程管理基準のことである。GMPマークは「社団法人日本健康・栄養食品協会」と「社団法人日本健康食品規格協会」の2つが審査を行っている。
GMPの原則は次の3つ。
・人為的なミスの防止
・製品の汚染及び品質低下の防止
・全製造工程を通じた一定の品質の確保
GMP基準をクリアした製品にはGMPマークが付いているため、選ぶ際の参考にしてほしい。
参考:
高齢ペットの増加を背景に療法食やサプリメントなどの需要が拡大 ペット関連商品の国内市場を調査 | 富士経済グループ
GMPマークを目印に健康食品を選びましょう! | 厚生労働省
文/森野みどり
編集/inox.