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コロナ時代における仕事のストレス緩和に必要な「4つのR」と「レジリエンス」

2022.05.10

新生活が始まって早くも1か月が過ぎた。4月の緊張も解け、気が抜けると同時に体調を崩す人も多いのがこの時期だ。そんなとき、免疫はしっかりと維持しておきたいものだ。

ある産業カウンセラーは、免疫対策も含むストレス対策としての「4つのR(レスト、レクリエーション、リラックス、リトリート)」のほか、コロナ時代には5つめとして「レジリエンス(しなやかさ、メタ認知)」も必要だという。レジリエンスとは何か、またレジリエンスを高める方法や、メンタルケアの方法を聞いた。

仕事における免疫低下につながりそうなアクションは?

キリンホールディングスは2022年3月、「キリンのプラズマ乳酸菌で免疫ケア」プロジェクトの一環として、全国の社会人に新生活期の体調に関する調査を実施した。その結果、新生活期に不調を経験した社会人は7割以上、新生活に不安を抱える人は8割に上ることが分かった。具体的には「不安感」「だるさ」「睡眠不足」が多い結果となった。

また、22年新卒社員含む社会人1,200人に「新生活や仕事において、免疫低下につながると思う行動や傾向」を尋ねたところ、1位「生活リズムの変化」、2位「職場における人間関係の変化」、3位「職場における業務内容の変化」という結果となった。

仕事においては、1位「言いたいことを言えず我慢してしまう傾向」、2位「残業による長時間労働」、3位「過去の失敗を思い出し、また失敗すると不安になる傾向」という結果に。

新生活が始まる時期に体調不良を感じた社会人は多く、仕事中もメンタル面でも我慢や残業、失敗への不安などが体調に影響している様子がみられた。

産業カウンセラーが解説する免疫対策としてのストレスケア

22年新卒社員含む社会人に対して、「新生活を迎えるにあたって目指す体調の点数」を尋ねると、現状よりも約10点アップの平均75.1点という結果となった。

そして、「体調を整えるためにこの春始めたいこと」を尋ねると、「睡眠の改善」をはじめ、「運動の改善」「生活の改善」が上位で、「枕を新調する」や「免疫を意識した食事をとる」といった回答が出た。

これに対して、産業カウンセラーである渡部卓氏は、次のようにコメントしている。

「社会人の中でも、春に変化のある人や新卒社員の皆さんは、免疫対策として食品摂取への関心が高いことが示されました。これは私の予想を超えた高いスコアで少し驚きました。まずは朝食をしっかり食べ、夕食での暴飲暴食を避けるのが重要です。さらに体に良い栄養素が豊富でバランスの良い食品や、たとえばプラズマ乳酸菌などを含む食品群などを適切なタイミングで取り込む免疫ケア習慣が推奨されます。これらは、見えにくい『隠れ免疫低下リスク』を無理なく毎日少しずつケアすることにつながります」

【取材協力】

渡部卓(わたなべたかし)氏
(株)ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、認定ビジネスコーチ
認定産業カウンセラー、ビジネスコーチ。大学卒業後に石油会社入社。その後コーネル大学で学び、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院でMBA取得。シスコシステムズなど外資系数社での幹部職を経て、2003年にライフバランスマネジメント社設立。職場のメンタルヘルス、ハラスメント対策、働き方改革などをテーマとした研修、コーチング実績では日本最多クラス。NHK、日系、朝日、読売などマスメディア出演や寄稿、連載など多数。海外出版、ベストセラー本を含めて23冊を出版している。

ストレスを緩和する4R+「Resilience」のススメ

また渡部氏は、対策として次の方法も勧める。

「一般的に、免疫の低下を回避する方法として睡眠・食事・運動などがあげられますが、免疫の低下につながるストレスを緩和する『4R』も同じくらい重要です。これらの行動を日々心がけることでストレス負荷を軽減させていくことが可能です」

4Rとは、次の4つの項目の頭文字をとったものだという。

1.Rest(休息)

肉体をしっかりと休めること。自宅でのんびり過ごすなどして、疲れを取る。質の高い睡眠も大切。自宅以外でマッサージを受けたり、スパや温泉に行くのも効果的。

2.Recreation(気晴らし)

思いっきり笑う、美味しいものを食べる、運動する、カラオケで歌う、釣りやキャンプに行く、映画を観るなど、楽しいことをしてリフレッシュすること。

3.Retreat(好きな環境に変える)

場所を変えることでリフレッシュすること。たまには日常の生活圏から離れた海や山などのリゾート地で、心身を養生する。森林浴は医学的な効果が認められている。

4.Relaxation(自律神経を整える)

神経を休められるリラクセーション系のストレス解消法。ヨガ、アロマテラピー、腹式呼吸、瞑想などがある。五感の中で嗅覚だけはダイレクトに脳に作用する。アロマテラピーの香料の中には、イランイランなど医学的にうつに効果があると言われているものもある。

「さらに、コロナ禍で『新たなR』として注目が集まっているのは、『5.Resilience(しなやかさ、メタ認知など)』です」

レジリエンス~しなやかさ、メタ認知とは?

そこで渡部氏に、5つ目のRである、「Resilience(レジリエンス)」について詳しく解説してもらった。

「レリジエンスとは、何か負荷がかかったときや、失敗をしたとき、原因もわからない不安や病気の発見などの明らかなネガティブなことに直面したときに、平常心、ニュートラルないつもの自分にもっていくことができる力の総称です。そこには、『身体と感情と行動と考え方』の4つの領域において、その4つをバランスよく調整する力が必要です。

日本人のうつの割合は、コロナ禍前は7.9%(2013年調査※)であったのに対し、コロナ禍では17.3%(2021年調査※)となっており、2.2倍増加しています。コロナの収束はまだ先のことかもしれませんが、仮に収束したとしても、その後もコロナ禍の反動によるうつの増加が予測されます」

※経済協力開発機構(OECD)のメンタルヘルスに関する国際調査

レジリエンスは、「5R」の一つとして、ストレス緩和にはどのように役立つのだろうか?

「うつ病になると、週末も疲れがとれない、何を食べても美味しくないので体重が減少したり、五感がにぶり視界の色に心が動かなかったり、眠れなくなったり、土日に寝過ぎてしまったり、仕事や日常から逃げ出したくなるなどの症状が出てきます。レジリエンスが高い状態であれば、このような状態になってしまう前に、快適ゾーンに戻るように自身で気づき、コントロールすることができます」

そこで渡部氏は、レジリエンスを高めるために、メンタルを強くする方法を教える。

●メンタル・タフネスを高める方法「ABC(DE)ステップ」

「このABCDEのステップで対策を行います。ABCのステップのみを行うこともあります。

例えば、仕事の成果が目標に達しなかった(A)とき『100点ではなかったからダメだ』と自分を責めて(B)、モチベーションが下がる(C)のではなく、『目標は未達だったが、仕事のプロセスで学ぶことがたくさんあった』(D)と自問自答をして『今回の学びを次に生かして頑張っていこう!』(C)という結果を生む、つまり、DによってBのようなネガティブな感情を打ち消す効果(E)を生み出していくのがレジリエンス力というわけです。

レジリエンスの弱い人は、Aの原因とCの結果ばかりに目を向けがちですが、大事なのはBの受け止め方、認知、解釈です。Bが何であるかによって、レリジエンスを失うということになることもあるのです。

私は日頃から経営者から新人まで相談を受けていますが、中でも『会社を辞めたい』『上司からパワハラを受けている』『自分に自信がない』などの相談を受けることがあります。よく話を聞いてみると、いくつかの思考の偏り、つまり罠のようなものにはまってしまっていて、レリジエンスを失っているケースが多く見られます。

相談者は原因や結果にばかり目が向いているのですが、実際のストレスの原因は、パワハラ上司ではなくて、自分自身のとらえ方であることも意外と多いのです。ですので、レリジエンスを高めるためにも、ステップの中のB、つまり『どう受け止めるか』『その認知に何か歪みはないか』をよく、客観視して考えてみることが大切になります。ここで、Bについて、うつ病になりやすい思考パターンをご紹介します」

軽いうつ状態を自覚したら「メンタフ・ダイアリー」を

もし、うつ状態になってしまったらどうすればいいか。渡部氏は次のように解説する。

「臨床心理士や精神科医など、専門家の相談を受けましょう。心理の専門ではない人に相談してしまうと、間違ったアドバイスを受けてしまい、症状が悪化してしまうことがあるからです。最近は、夜間や土日にも気軽に受診できる街のメンタルクリニックも多く見かけます。医療機関に行くほどではないという場合には、自分自身を振り返る『メンタフ・ダイアリー』という日記を付けることで、心を楽にすることができます」

●メンタフ・ダイアリーとは

「メンタフ・ダイアリーは、その日の出来事を9項目に分けて振り返りながら、ABC(DE)ステップで受け止め方を修正するものです。誰にも見せない自分だけの日記です。実際にはうつ治療の際に許諾のうえでカウンセラーと共有しながら活用されています」

「1の『出来事』では、感情を排除して事実だけを書き、2の『気分』で、『悲しい』とか『腹が立った』などの語句を自分なりに選びます。この感情のキーワードは2、3個くらい書き出してみましょう。3の『気分の強さ』は、『怒り70%』などのように、気分を自分なりに数値化してみます。4では、その時頭に浮かんだことを書き、5はなぜそう考えたか、自身の自己分析を記述します。

6~9はその日に記入せず、次の日、翌週でもよいので、少し時間を空けて冷静な自分を意識して記入します。6の『もう一人の自分ならどう思う?』は、ABC(DE)ステップのD(反論、自問自答)に相当します。その日の出来事について、自分の受け止め方がどのように偏っていたかを書き出します。

このようなシートで自分の心理メカニズムを振り返ること、そしてこれを習慣づけることで、うつ状態から脱却することができます。これらは学術的にも多くの学会や臨床データで開示されています」

仕事中の我慢・残業・不安を対策するには?

キリンの調査では、「仕事における免疫低下につながりそうなアクション」として、「言いたいことを言えずに我慢してしまう傾向」「残業による長時間労働」「過去の失敗を思い出し、また失敗すると不安になる傾向」が上位となった。

渡部氏に、これらのビジネスパーソンの悩みに対して、レジリエンスで対策する方法を教えてもらった。

1.「言いたいことを言えずに我慢してしまう」「過去の失敗を思い出し、また失敗すると不安になる傾向」対策

「長期的に我慢することや諦観(なげだして、あきらめてしまうこと)、過去の失敗を思い出し、また失敗すると不安になる傾向は、うつにつながりやすいです。

日本はまだまだ年功序列の社風を残す企業、組織が多く、どうしても上長、取引先、お客様には意見を堂々と言える雰囲気がありません。また年功序列色の強い企業、職場ではミスを許さない傾向もあり、過去のミスを気にする社風となります。欧米では仕事のミスも経験として、減点にはならないことに気をつけています。レリジエンスを高めるには、『嫌われない図々しさ』、や『明るくさわやかな自己主張』を日頃から少しずつ実践すること。すぐにはできなくても、だんだんとできるようになります」

●「嫌われない図々しさ」「明るくさわやかな自己主張」の実践方法

「例えば上司に対して、日頃から意識して挨拶する、声をかけるなど能動的なコミュニケーションをしていき、時々は意見や考え、笑いながらミニクレームを述べてみる、そんな風に実践を積み重ねると、半年から1年でかなり上司に、ものが言えるようになります。私も比較的、グローバルに働いてきましたが、グローバルな商談やキャリア作り、転職では、これは最重要にも近い能力と考えます。

避けたいのは、アルコールの力を借りて自己主張することです。『酒の席での無礼講』などと言いますが、現代ではアウトになってきました。職場での飲み会はセクハラなどのトラブルもあり、またうつをお酒で紛らわす習慣は、よけいにストレスとなり、レリジエンスを弱めることにつながりやすいので、とても注意が必要です」

2.「残業による長時間労働」の対策

「残業がレリジエンス形成によくないのは、単純に睡眠時間を削ってしまうこと、睡眠の質を落とし、免疫力を落とすことです。仕事の興奮が寝入りを悪くします。夜のリラックスを取るべき時間に、残業は大敵です」

新生活で体調やメンタルの不調を感じている人は、一度、自分を振り返ってみるのもいいだろう。5月は「5月病」と言われ、不調が特に表出しやすい時期でもある。

ぜひレジリエンスを高めることを意識して、心身ともに改善と成長を目指そう。

取材・文/石原亜香利

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