町中華探検隊が教える2022おすすめ「町中華」3選
この世に「町中華」の定義を語れる人はどれだけ居るだろうか。中華料理と日本ならではの定食と洋食までもが混在し、一軒一軒が個性的で脂ギッシュな町の食堂のイメージだが、町中華の賢人はこう語る。
「いわゆる三種の神器、カツ丼、カレーライス、オムライスがなければ町中華じゃないとか、本場中国から来た人が経営していたら違うとか意見は様々ですが、そんな町中華観のゆらぎやいい加減さを感じてしまうお店こそ町中華。あと、絶賛するほど美味いわけでもない並レベルの美味さも大事!(笑)」
並々ならぬ一家言を披露してくれたのは町中華探検隊副隊長でライター・食べ歩き評論家としても活躍する下関マグロさん。
2016年に北尾トロさん、竜超さんら町中華探検隊の面々で著書「町中華とはなんだ」を発表。一躍ブームとなった「町中華」の生みの親の一人である。
その後、町中華は数々のメディアで取り上げられ、2019年からはBS-TBS「町中華でやろうぜ」もスタートし人気番組に。町中華という言葉はすっかり一般的となった。
町中華には「今行かなければなくなってしまうという哀愁さえ感じる」と語る下関さん。さらに魅力について下関さんは“いっぽんどっこ”という言葉で讃える。
「“いっぽんどっこ”とは組織に属さず自分の才覚だけで生きていくという意味。昭和歌謡にはよく使われたワードですが、自分の店を自分の思うように作り上げている個人商店の町中華こそ、いっぽんどっこ。チェーン店には無い魅力ですよね」
初めてのお店で感じるチェーン店では味わえない緊張感も美味しいスパイスの一つ。厨房を彩るのは天を突く炎と華麗な鍋さばき。町中華はオルタナティブな極上のエンタメスポットでもあるのだ。
……が、しかし!実はここ数年、町中華を含む中華料理店は減少の一途をたどっている。厚生労働省の調査によると中華料理店の事業所数は2001年の 62,990 店から2014年には 55,095 店まで減少。
参考:飲食店営業「(中華料理店)の実態と経営改善の方策(2016年)より
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000173799.pdf
さらに、コロナが追い討ちをかけ飲食業界が大打撃を被っている今、町中華の現状はどうなっているのか?下関さんに聞くと、
「実際のところ町中華はコロナ禍でかなり数を減らし、他の業種と同じように打撃を受けております。加えて心配なのが高齢化で後継者不足な点ですね。そういう理由でも店を閉めるところが多くなってきました」
存続の危機にさらされている町中華。大手チェーン店と比べ、個人経営の方がコロナや客足減少の影響が大きい。それでもしぶとく生き残っている町中華の強さの秘密とは何なのか?
「コロナなんて関係なくこれまでと同じように営業しているお店の特徴は他にはないメニューや独自の魅力を持っているところです。唯一無二の町中華はコロナ禍でも生き残っていますね」
「その一方で新しいお店も開店しています。とくに若い人による町中華は味もよく、今風のサービスをしていて期待が持てますね。また、コロナで増えたテイクアウトというシステムが改めて見直されているようです」
コロナ以前から、というより町中華という名が生まれる前から、大衆的な中華料理店は町の憩いの場所であり、地元の人に支えられてきた。居心地の良さとやさしさで溢れている町中華はこんな時代だからこそさらに魅力的な場所として輝いて行くのかもしれない。
さて、そんな御託はさておき。今最も知りたいことは「2022年に絶対に行きたいおすすめの町中華」だ。下関さんに注目の町中華3選を教えて頂いた。
オススメの町中華1『あさひ@浅草』
浅草観音裏に佇む実力派の中華料理屋。定番メニューを始め、パクチーラーメンなどの新メニューも人気。「戦前からの老舗町中華ですが現在は4代目と5代目が働いております。世代交代がうまくいきそうです」
一年中食べられる冷やしそばも美味!
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131102/13057892/
オススメの町中華2『中華屋 櫂ちゃん@高円寺』
新高円寺駅近く、商店街からちょっと外れたところにあるボリュームが魅力の人気店。「中野富士見町近くの名店「尚(なお)ちゃんラーメン」で約10年ほど修行された方が独立して出されたお店。ちゃん系といわれる町中華です」
尚ちゃん名物の「木耳肉」も人気!
https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131904/13226946/
オススメの町中華3『美山亭@堀切菖蒲園駅』
京成線堀切菖蒲園駅より徒歩4分。町中華の店が多く集まる地域でも特に昭和の香り漂う人気店。「高齢のご夫婦で切り盛りされておりまして、いますぐに行ってほしい町中華です」
https://tabelog.com/tokyo/A1324/A132403/13063116/
最後に、町中華のメニューで下関さんが特に魅力的に感じる重要メニューがあるという。それは……
「チャンポンですね。東京の町中華のチャンポンは実に多彩でどれも本場長崎のそれとは似ても似つかないものばかり。お店それぞれが独自のチャンポンを作り上げているんです」
「中には店のご主人がチャンポンを見たことないのに自分の想像だけで作ったものもあったり。そんな“東京チャンポン”は隠れファンも多いので皆さんもぜひ一度食べてみてください!」
■取材協力
下関マグロ
1980年代からフリーライターとして活躍。2014年より北尾トロ氏と町中華散策を開始し、町中華探検隊副隊長としても活躍中。2016年には北尾トロ、竜超との共著『町中華とはなんだ?』(立東舎)を上梓。
町中華探検隊HP
https://machichuka.com/news/
下関マグロさんTwitter
https://twitter.com/maguro_shimo
取材・文/太田ポーシャ