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仕事の折衝や交渉の場で求められるビジネススキルの磨き方

2022.05.11

国籍も背景も考え方も立場も異なる、多様な人々と共に働く現代において、コミュニケーションは特に重要なスキルとなる。特にビジネスにおいては「折衝」や「交渉」などのコミュニケーション力を持つことは大きな武器となると考えられる。

そこで今回は、ビジネスパーソンのために折衝力と交渉力を高めるためのメソッドを紹介したい。現在活躍中のスタートアップ企業の社長や、国内外で交渉と折衝を行う専門家、経営コンサルタントが実際に折衝などの際に意識していることやスキルの磨き方について聞いてみた。

スタートアップ企業の社長~メリットを感じてもらう・譲れない条件を伝える

「折衝」も「交渉」も、どちらも駆け引きや問題解決のための話し合いではあるが、折衝が互いの折り合いや妥協点を見つけることをゴールとしている一方で、交渉はお互いが納得できる答えを見つけることをゴールとしているところに違いがあるといわれる。

スタートアップやベンチャー企業の社長は、常に大きな目標を掲げ、新たな事業を生み出すために日々、闘いの日々を送っている。そのため、時には大企業や重要人物と直接、折衝や交渉を行うシーンも多い。

株式会社シティーデジタル 代表取締役の杉野寛樹氏は、ITソリューションサービス開発や提供事業を法人向けに展開しているほか、スニーカー取引サービス「KCKC」のスニーカー博物館のようなポップアップイベントを、阪急メンズ東京で開催するなど多岐に渡る活動を行っている。

そんな杉野氏は普段、さまざまな立場の人と関わり、折衝や交渉を行う際、どのようなことを意識しているのだろうか。

【取材協力】

杉野 寛樹氏
株式会社シティーデジタル 代表取締役

広告代理店、海外勤務、外資コンサルティング企業を経て、IT商社シティーデジタルを創業。リモートワーク推進企業向けカジュアルコミュニケーション研修サービス「リモア」など複数の自社サービスを開発・運営し、法人の新規事業開発支援から共同事業推進まで行う。https://city-digital.jp

折衝や交渉の際に意識していること

「折衝や交渉について、私はそこまで上手なほうではないため、日々苦労しているのですが、2点ほど相手とコミュニケーションをする際に気をつけていることがあります。

1点目は『相手にメリットを感じてもらうこと』です。自分にとっては良くても、相手にとってはイマイチ、ということは往々にしてあります。まったく興味のない商品を、流行っているからといって押し売りされても買わないのと同じで、外部の人や会社と協業するときは必ず相手にメリットを感じてもらうことが必要です。また、相手のメリットが時間の経過で変わることもあります。競合の変化、経営方針の刷新、世間の流行り廃(すた)りなど、メリットを更新する努力も必要と考えています。

2点目は『こちらが譲れない条件を具体的に伝えること』です。例えば1点目を実現させるために無料・徹夜で尽力します、ということはありえます。しかし、それはビジネスではないですし、結果として仕事の質が悪くなって1点目から遠ざかってしまいます。そして、自分の考えというものは、なかなか伝わりません。相手が理解してくれるとか、気を遣ってくれるのではないかと期待せず、言い方を変えて何度も説明したり、イメージを描いて見せるなど、具体性が増すように伝えるとより良いと思います」

「論理的思考力」に加えて「共感力」「創造的発想力」が大事

「よく交渉の際には『論理的思考力』が必要、などと言われます。実際とても大事なのですが、たいていの場合、これだけを持っていくと相手と喧嘩になります。そこで必要なのが『共感力』です。しかしそれだけでは話し合いが前に進まなくなってしまうので『創造的発想力』で折り合いをつける打開案を考案することが求められます」

折衝・交渉の成功事例

実際、杉野氏にはこんな成功事例があるという。

「コロナ禍の初期に『オープンイノベーション』と呼ばれる取り組みを、ある企業様とスタートしました。ところが、こちらは色々進めているのに、先方は懸念ばかりが出てきて先に進まない、といった印象が続き、しばらくは先方の改善を期待しながら様子を見ていました。

しかし当社は当時余裕がなかったこともあり、我慢の末に、あるミーティングの機会に『こういった理由で改善して欲しい』と具体的にお伝えしました。そこで初めて双方の認識齟齬があったことが互いに分かり、調整の結果、今でも良い関係を続けさせていただくことができています。先ほど述べたコツの2点目『こちらが譲れない条件を具体的に伝えること』に気付いたのは、この経験があったからです」

折衝力や交渉力を磨く方法

杉野氏が考える、折衝力や交渉力を磨くためにおすすめの方法とは?

「『日頃からアンテナを張って様々な情報を収集すること』だと思います。相手が何をしたいか、困っているかを詳しく聞くことで『相手のメリットが何かを知る』ことができるだけでなく、外部の事例を仕入れ、有識者からしみじみした実体験を聞くことで、『具体的な例え話を通じて実感してもらいやすくなる』ことにつながり、一石二鳥です」

国内外で交渉・折衝の日々!イノベーター育成専門家~「対話・仮説構築」「訊く」スキル

続いては、企業のイノベーションを支援するイノベーター育成専門家として活躍している大岡明氏。デジタルツールを展開するために、営業活動として時には海外での交渉と折衝を行っているという。

そんな大岡氏に、まず折衝と交渉に求められるスキルを聞いた。

【取材協力】

大岡 明氏
イノベーター育成専門家

産業技術大学院大学 経営倫理研究所(ERISE)上席研究員、合同会社五方よし 五方総合研究所所長。キャリアスタートは自衛官。退官後はIT企業に勤務し日本の製造業が得意な現場改善活動をデジタル化したツールを開発し国際特許を取得。またマーケティングを一新し、自ら大学院にてツールの科学的研究に取り組み、商いの場を国内から世界へチェンジし展開を開始。営業チームを組成し国内外にて交渉と折衝の日々を送る。導入実績は世界20カ国、6000現場以上。2020年より製造業エンジニアを支援する国内最大級のソリューションサイト「ものづくり.com」を運営する株式会社産業革新研究所取締役に就任。企業のイノベーションを支援している。https://www.fivewin.co.jp/

折衝と交渉に必要なスキルとは?

「私は交渉力の中に折衝力があると思っています。交渉力に必要なのは『対話・仮説構築』スキル、折衝力に必要なのは『訊く』スキルだと考えます。

ビジネスでの交渉は相手との合意形成だと言えます。またその相手が複数人になることもめずらしくありません。そのため、交渉で必要なスキルは、相手と短い時間で合意できるような仮説を、目に見える形で提示することが重要です。その際、対話を通じて仮説構築することで、意見のすれ違いやバランスを欠いた仮説になることを未然に防ぐことができるので、ムダな時間を省くことができます。

交渉がまとまらないときには、多くの場合、折衝に移ります。交渉がまとまらなかった後ですので、相手が合意できない理由、合意のために妥協できる点を駆け引きで見つけます。ここで重要なのが訊くスキルです。交渉と異なる点は、すでに対話が終わっていることです。

ゆえに交渉で確認した合意点ではない落としどころを見つける必要があるので、訊くスキルが重要になります。これは『ask・listen・hear』の『きく』とは違う点に留意してください。交渉時の相手の発言や提示条件の変化、矛盾点や不整合な点の情報を活かして、訊くことで合意獲得を目指します」

折衝と交渉の成功事例

大岡氏には、折衝や交渉で、実際に成功した事例として次の経験があるという。

・折衝

「大手自動車メーカーへ、自社のサービスを提案する機会をいただけるよう、複数工場の担当者に交渉した際に、キーパーソンとの合意形成ができませんでしたが、個別にキーパーソンに対して折衝を行い、合意を獲得しました。それを機に全体の合意形成ができ、本社役員室にてまったく面識のなかった複数の役員へ、直接提案できる機会を得ることができました。結果、提案は採用されグローバルでの商いにつながりました」

・交渉

「設立3カ月のスタートアップ企業にて、自社サービスの研究開発を公立大学、上場企業、自治体で行う提案を行いました。研究は大学に、資金は上場企業に、実証の場を自治体に求めるもので、当社はそれらの知見をサービスとして具体化するというものでした。一見、当方の得が最も多いように感じるかもしれませんが、交渉を重ね、すべての参加者がWinになる合意形成ができました。結果、新サービスを創出でき、業務実績となりました」

折衝力や交渉力を磨く方法

大岡氏が考える、折衝力や交渉力を磨くためにおすすめの方法とは?

・【折衝力・交渉力共通】相手の立場を理解すること

「折衝力と交渉力を磨くのに共通する重要な点は、相手の立場を理解することです。それには、自分についての自己認識と、他人から認識されている自分との違いを知ることが重要です。相手の立場を理解するには、相手が見ている自分を知ることが近道です。

相手が見ている自分は、自分が考える自分ではないのです。自分の考える長所、短所は他人から見てその通りでないことも多いです。自己認識と他己認識の違いを知ることは、他人とのコミュニケーションをスムーズにし、相手の立場を理解する力を磨きます」

・【折衝力】ディベート

「折衝力を磨くには、ディベートが役に立ちます。ご存知の方も多いと思いますが、ディベートは、自分の立場が相手と入れ替わる、発言をロジカルに評価するなどの特徴があります。ビジネスに必要な相手の立場に立つことのむずかしさ、訊くことの効果を実感できるディベートは、折衝力を磨くトレーニングに適しています」

・【交渉力】異業種、異文化の人々との交流

「交渉力を磨くには、異業種、異文化の人々との交流が役に立ちます。私たちは普段、気心が知れた仲間や同僚、家族などとの間には明示化されていない『ふつう』が存在すると思います。『卵焼きはふつう甘い味付け』『うどんの汁はふつう透明でしょ』など。

この自分が属するグループやコミュニティー由来の『ふつう』を自分自身でどれだけ認識できるか、他人に存在する『ふつう』にはどんなものがあるかに興味を持ち、知り、対話し、尊重することが、自分軸ではなく相手軸での交渉力を磨くことにつながります」

M&A支援も行う経営コンサルタント~「相手の立場を理解・尊重」等

続いては、経営コンサルタントとして活躍する水戸脩平氏。株式会社MITOSの代表として、法人向けに経営コンサルティングを行う。時にはM&A支援など、折衝や交渉が重要になる分野でも助言をしている。

折衝と交渉にはどのようなスキルが必要だろうか。

【取材協力】

水戸 脩平氏
中小企業診断士/経営コンサルタント

1984年、兵庫県出身。早稲田大学卒業後、信金中央金庫・富士通・リクルートを経て、2019年7月株式会社MITOSを起業・独立。経営管理・新規事業立ち上げ・M&A支援を中心に活動中。https://www.mito-s.co.jp/

折衝と交渉に必要なスキルとは?

「折衝と交渉において、意識すべきポイントには多くの共通点があります。その共通点をつかめていれば、おおむね、どちらも対応することが可能と考えます。私が考える共通点とは、以下の3点です」

(1)相手の立場を理解・尊重した上で話を進める。
(2)相手と自らのそれぞれの立場で論点をまとめ、事前に着地点の仮説を立てる。
(3)相手に受け入れられるよう、配慮しながら冷静に議論を行う。

「一方、折衝と交渉の最大の違いは、利害関係の有無です。交渉ではお互いが納得できる着地点を目指すのに対し、折衝はそもそも利害関係が一致しない相手とのやり取りになります。よって、いかに妥協点に辿り着けるか、妥協点に辿り着くまでのやり取りをいかにスムーズに行えるかが重要だと考えます」

折衝と交渉の成功事例

水戸氏には、折衝や交渉で、実際に成功した事例として次の経験があるという。

・折衝

「経営コンサルタントとしてお客様の経営支援を行う上で、当社が提示する価格がお客様の予算に収まらないケースも出てきます。その場合、当社が提供するサービスの一部を対象外とすることをお客様にあらかじめ説明し、納得いただいた前提で、お客様の予算に収めることもあります。ただし、それは毎回ではなく、お客様をどうしても支援したいという場合に限定しています」

・交渉

「お客様の経営計画策定を支援することがありますが、これも交渉と言えます。お客様も私もお客様自身の利益・成果最大化を目指していますが、目標への手段について意見が相違するケースも多々あります。その場合、お客様の目標や、やりたいことを実現することを第一にしつつ、より効果的・効率的な手段としての施策を提案し、合意いただくことで、より具体的な経営計画の策定につなげています」

折衝力や交渉力を磨く方法

水戸氏が考える、折衝力や交渉力を磨くためにおすすめの方法とは?

「日頃より以下の5点を心がけることで、折衝力・交渉力を両方磨くことができると考えています」

(1)お客様のホームページ等の公開情報から、お客様について事前に調べる。
(2)(1)で事前に得た情報から、お客様の課題やニーズ・ゴールについての仮説を立てる。
(3)お客様の担当者の話し方や表情から、『どうすれば良い形で伝えられるか』を考える。
(4)提案を可能な限り3パターン以上準備する。
(5)折衝・交渉の過程を事前にシミュレーションし、あり得る可能性に対して事前に準備しておく。

「折衝の場合は、利害関係が一致しない相手との妥協点を探る必要がありますので、妥協点を探るために、相手が『ここは絶対に譲れない』と考える点を引き出す力が必要です。私が参考にしているのは、織田信長が清州(現在の愛知県清須市)から小牧山(現在の愛知県小牧市)に本拠を移したときのエピソードです。あえて相手が受け入れるとは思えない提案や選択肢を伝え、相手の『譲れない点』を引き出した上で妥結策を提案し、了承に持ち込んだお話です」

【参考】織田信長のエピソードとは

「当初、信長は交通の便の悪い二宮山(現在の愛知県犬山市)に本拠を移すと宣言しました。しかし、家臣団は交通の便の良い、清州からの移転に猛反対します。そこで信長は前言を撤回し、『移転先は小牧山にする』と伝えます。反対していた家臣団は、自身の意見が通ったこと、および小牧山が二宮山よりも交通の便が良いことで、小牧山移転に賛成せざるを得なくなり、本拠移転が実現しました。

信長は初めから本拠を二宮山に移す気はありませんでしたが、本拠移転を実現させるため、あえてより人気のない二宮山を引き合いに出すことで、小牧山への移転をスムーズに進めることに成功した実話です」

☆☆☆

折衝と交渉は、今後、国内外において多様な人々とビジネスを行っていく時代において欠かせないスキルと言える。3名のスキルの磨き方や考え方をヒントに、ぜひ自らのスキルを高めていこう。

取材・文/石原亜香利

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