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ひかり味噌󠄀がオーガニック味噌󠄀市場で海外シェアNo.1を獲得し続ける理由

2022.04.28

日本の伝統食品のひとつである味噌󠄀。近年、海外でも需要は増しており、特に北米を中心とした健康志向もあいまって、日本からの味噌󠄀輸出は金額・数量ともに増加傾向にあるという。その中核を担うのが、日本の味噌󠄀メーカー「ひかり味噌󠄀」だ。特にオーガニック味噌󠄀においては海外シェアNo.1の座を獲得している。

かつてセイコーエプソン(現エプソン)に勤め、海外志向があったという同社の林善博社長。海外向け味噌󠄀開発の取り組みや、サステナブル・SDGsに関連した商品などについてインタビューを行った。

味噌󠄀の現在の国内動向と海外需要

海外進出というと、国内需要の低迷もしくは競争の激しい国内市場に起因しての選択というイメージがあるが、ひかり味噌󠄀の場合はそうではないらしい。

日本では米飯を中心とした和食離れから消費が低迷してきた味噌󠄀だが、近年は幾分、明るい光が差し込んでいると林氏は述べる。

【取材協力】

林 善博氏
ひかり味噌󠄀株式会社 代表取締役社長
1960年長野県生まれ。1982年慶應義塾大学法学部卒業後、信州精器株式会社(現セイコーエプソン株式会社)入社。1994年に同社を退職、ひかり味噌󠄀株式会社に入社。常務取締役特販営業部長、専務取締役経営管理本部長を経て、2000年4月に代表取締役社長に就任。伝統を継承しながらも新しい事業への挑戦を積極的に続けている。https://www.hikarimiso.co.jp/

「日本では、少子高齢化と米を主食とする和食離れが過去20年以上にわたり持続しています。その結果、味噌󠄀の需要も残念ながら毎年1%弱のマイナス成長を繰り返してきました。しかし、ここ3年ほどは、下げ止まり傾向にあります。発酵食品としての良さが広く認識されるようになったこと、及び、コロナ禍により家庭内調理の機運が芽生えたことなどで、食材としての汎用性と健康訴求の視点から、味噌󠄀の需要は盛り返しつつあります」

味噌󠄀の健康的なイメージは、海外にもすでに浸透しているという。

「海外に目を向けると、味噌󠄀需要は毎年、確実に二桁増加を維持し、なおかつ、和食は最も健康的な食であることが広く認識されています。さらに味噌󠄀がその和食の中核の位置を占めているという極めて恵まれた市場環境にあります。

当社は持続的な成長戦略をコミットしており、戦略的に味噌󠄀の海外販売を重視しているのは、ごく当たり前の選択なのです」

ひかり味噌󠄀の海外向け商品のラインアップ

2004年に海外向けに味噌󠄀商品の販売を開始して以来、同社の海外事業の売上は、年々順調に伸びており、2013年度から前年比+15%前後で伸長し続け、2021年度は+24.5%と大きな伸びを見せた。

2021年時点の輸出国数は 50か国で、主要国は、ほぼすべてカバー。エリア毎の売上の割合は、北米が約40%、ヨーロッパが約30%、アジアが約20%で、その他、オセアニア、中東、中南米、アフリカへも輸出を行っている。

ひかり味噌󠄀の海外味噌󠄀展開は、まさに「戦略的」だ。単に日本向け製品を英語ラベルに貼り替えて輸出するだけでなく、現地に適したさまざまなラインアップを海外向けに開発して輸出をしている。

●オーガニック味噌󠄀

ひかり味噌󠄀のオーガニック味噌󠄀は、日本のオーガニック味噌󠄀市場の約70%を占める。

同社は、日本における有機認証制度が確立される前から20年以上にわたりオーガニック・有機味噌󠄀に取り組んできた。味噌󠄀になじみのない海外消費者が味噌󠄀をより安心して使えるよう、日本の有機JAS認証のみならず、米国のUSDAオーガニック認証、及びEUの有機認証も取得している。

日本語ラベルのオーガニック味噌󠄀商品を輸出しているほか、海外向けに開発したものもある。海外向けカップ型生味噌󠄀は8フレーバー。即席味噌󠄀汁2品と液状味噌󠄀1品、また業務用の10kg・20kgダンボールの商品も5品と幅広い。

●生味噌󠄀

「Organic Miso Red」(ヨーロッパ向け)

アメリカでは日本とは異なり、即席味噌󠄀汁より「生味噌󠄀」が圧倒的に売れるという。即席味噌󠄀汁は、味噌󠄀以外の添加物が入っているという理由で避けるアメリカ人が多いそうだ。

500gの生味噌󠄀「Organic Miso Red」が、アメリカの大手スーパーマーケットに採用されているが、9.99ドル(約1,250円)という高価格帯の小売価格であるにも関わらず、売れ行きは好調という。

●液状味噌󠄀

「M1nute Miso」

簡便性を追及したアイテムとして、液状味噌󠄀商品「M1nute Miso」がアメリカの大手スーパーマーケットにも採用されている。ボトルタイプという利便性だけでなく、溶けやすく、使いやすい性状で、アメリカにおいてニーズの高いオーガニック、グルテンフリーとヴィーガンにも対応している。

●海外専用の即席味噌󠄀汁

即席味噌󠄀汁は海外向け専用に作っている。日本でロングセラーの生味噌󠄀「無添加 円熟こうじみそ」を使用した、海外専用の即席味噌󠄀汁「ENJUKU KOJI MISO SOUP」は、油揚げ入りなど、全4種を展開している。海外向けとあり、「無添加」にこだわる。

●ドライミソ

「Dry Miso」

アメリカをはじめ、世界18ヵ国に展開するレストラン「NOBU」の松久信幸シェフ監修で開発したという、味噌󠄀を乾燥させてパッケージングした商品「ドライミソ」。赤味噌󠄀と白味噌󠄀をブレンドし、フリーズドライして顆粒状にした味噌󠄀で、料理にふりかけると、味噌󠄀の香味がプラスされ豊かな味わいを楽しめる。NOBUで採用されているほか、国内外で市販もしている。

●ソイフリー味噌󠄀

アメリカでは、植物性たんぱく質へのニーズが高いと同時に、「フリーフロム志向」つまりGMO(遺伝子組み換え作物)フリー、グルテンフリー、ソイフリーなども求める傾向があることが分かり、味噌󠄀でありながら大豆を使わない「ソイフリー味噌󠄀」も開発した。

●PEA味噌󠄀

2021年には、大豆の代わりにPEA(黄えんどう)を使った「PEA味噌󠄀」を開発。現在、アメリカの植物性チーズ加工業者などへ販売しており、売上を伸ばしつつある。2022年3月開催のNatural product Expo(西海岸)でも多くの問い合わせがあったという。

ちなみに近年、アメリカでは豆腐とセットで味噌󠄀を食べるのがトレンドだそうだ。

「Tofu Steak Sweet Miso Yaki」

「欧米市場では、日本の木綿豆腐よりも固い豆腐が肉の代替として好まれています。豆腐に、甘口の味噌󠄀ソースを添えると、ビーガンステーキとなり、グルテンフリー、コレステロールフリーの健康メニューに。さらに最近のトレンドは『Not Fried, But Baked(揚げずに焼く)』の調理で、低カロリー化が進行しています」

現地人の嗜好に合わせた商品開発・レシピを提案

ひかり味噌󠄀の海外向け商品開発の特徴は、現地の食文化を学び、味や食べ方を体感した上で、現地の方の嗜好に合わせた味やレシピを提案しているところにある。林氏は、海外向け商品開発について、次のように述べる。

「実際の現地の消費者や流通ニーズの聞き込みを一番に心がけ、実施しています。日本では当たり前だと思っていることが、海外の人には受け入れられなかったり、日本人には分からないことが逆にアメリカでは当たり前であったりするからです。

また開発のスピードを心がけています。アメリカでのニーズやトレンドは変わりやすいので、現地で情報を得てから、すぐに社内で検討開始。検討から最短半年で現地のスーパーマーケットに商品が並ぶこともあります」

味噌󠄀は、日本の伝統食品。その味噌󠄀業界において、海外向けにイノベーションを意識した開発に、むずかしさはないのだろうか。

「まず、味噌󠄀に限らずですが、伝統食品の業界に従事する立場として感じることは、『伝統食品だから変えてはならない』という考え方が非常に根強いことです。それは、味しかり、製法しかり、さらには、ビジネスの在り方もそうです。

一方で、お客様の嗜好とライフスタイルは確実に変わっていきます。そこに『作り手』と『お客様』とのギャップがあると感じています。私はそのギャップを埋めるためにも、マーケットのトレンドには絶えずアンテナを張り、自ら現地を訪問し、身をもって現地のお客様インサイトをとらえてきました」

ひかり味噌󠄀の海外進出の背景

ひかり味噌󠄀が海外進出を決めたのには、どのような背景があったのだろうか。林氏は次のように述べる。

「そもそも、私は学生時代から強烈な海外志向の持ち主でした。ですから、異文化交流を深く経験したいとの思いが在学中に芽生え、英語と世界史は徹底的に勉強しました。セイコーエプソン(当時の社名は信州精器株式会社)に入社したのも、海外関係の業務に従事したいとの思いからです。私が入社した当時、海外売り上げ比率は85%でした。

海外と深く関わりたいとの思いは、ひかり味噌󠄀に入社してからも変わることがありませんでした。入社間もなく、大豆の海外調達に乗り出しました。自分でアメリカ国内を飛行機とレンタカーで隈なく駆け回り、新たな仕入れ先の数々を確保しました。それと同時に、海外にも味噌󠄀を販売したい、味噌󠄀を海外の人にも楽しんでもらいたい、という強い動機が芽生え、特にアメリカと欧州では毎月、味噌󠄀の売り込みに奔走しました。通訳を同席しての商談はありませんでした。楽ではないものの、やりがい、充実感にあふれた海外市場開拓でした。

私は、和食は世界に誇る非常に優れた食文化であり、なおかつ、世界の食ビジネスの中で最も競争力と将来性を有しているビジネスであると考えています」

セイコーエプソンでの経験は、現在の海外戦略に対して、どのように活きているのだろうか。

「セイコーエプソン在籍中は多くのことを学び、経験する機会をいただきました。30年以上前から、海外駐在員は日本からの出張者の通訳ではない、会議も商談も自身の英語で対応せよ、という社風でした。また、私の赴任先であるイギリスでは、現地の人が社長、マーケティングは徹底的に現地のニーズに対応した現地の人たちの組織にて運営されていました。マーケティングとは、日本にある本社の論理を主張するのでなく、現地の市場、現場を見て、ローカル対応することが肝要である、が私の結論であり、それをそのまま、現在のひかり味噌󠄀の海外戦略に活かしています」

サステナブルやSDGsに関連した商品

海外向け商品で、近年、世界的に興味関心の高まるサステナブルやSDGsに関連したものといえば、無添加味噌󠄀とオーガニック味噌󠄀がある。

「無添加味噌󠄀とオーガニック味噌󠄀を元来、国内販売の主力としてきたことは、海外市場への展開において、即効的な効果がありました。

無添加味噌󠄀は、原料に『なくてもよいものは使用しない』という発想からの味噌󠄀醸造法です。その延長は、海外市場向け商品の設計に応用しており、やがて化学調味料不使用は当たり前、工業生産される各種うま味調味料も極力控える商品設計にシフトしてきました。特に、オーガニック味噌󠄀の拡販は当社SDGs実行計画の中でも、2030年までに5,000トンの販売を目標に設定しました。この壮大な目標達成の牽引役は、海外販売です」

今後の海外展開への展望

今後も、ひかり味噌󠄀は海外への味噌󠄀普及に力を注いでいくという。

「和食は優れた文化であるとともに、優れたビジネスシーズであることを念頭に、『和魂洋才』の精神に則って、積極的に世界中くまなく味噌󠄀の普及に努めます。

具体的には、『コロナ禍を経験した上での脆弱なサプライチェーンの強靭化』、『積極的に現場・現地・現物の三現主義を実践すること』、『海外事業組織の多国籍化』の3点を骨子として推進していきます」

海外向け味噌󠄀は、林氏の持ち前の強い海外志向により、日本の既存文化としての「味噌󠄀」の単なる押し付けではない、現地に受け入れられる食品として進化した「MISO」として発展していることがわかった。海外トレンドが変化すれば、また新たな「MISO」商品が生まれていくだろう。

取材・文/石原亜香利

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