アメリカでのラーメンブームが止まらない。
ニューヨークに3店舗展開しているのは「一風堂」だ。
金曜の夜にニューヨーク・マンハッタンにある一風堂を訪れると店内は満席で、行列ができていた。
男性客が1人で来店し、ラーメンを食べ終わるや否やすぐに店をあとにする。
そんな日本のラーメン店で見かけるシーンとは異なり、マンハッタンの一風堂では、お酒を飲みながらラーメンを食べる、デート中のカップルや、ラーメンと手巻き寿司を食べながら女子会に花を咲かせる女性達の姿を多く目にする。
一風堂の代表ラーメン「白丸」の値段は18ドル。1ドル約130円の円安が進む現在、円換算すると1杯2,340円、日本の約3倍の価格である。
これに税金、チップを入れると1杯3,000円弱。1杯1,000円未満の日本のラーメンと比較すると、かなりの「豪華ディナー」である。
これほど高価であっても、ニューヨークでラーメン人気がおさまることはない。
ニューヨークだけでなくボストンでも起こっているラーメンブーム
2022年3月末にオープンした「Bosso Ramen Tavern」
ハーバード大MBAの卒業生である日本人の方がオープンしたラーメン屋で、オープンしたばかりだが、その本格的な味わいが口コミを呼び、連日満席の人気店となっている。
寮の共同キッチンで、日本の本格的なラーメンを作って同期に振舞ったところ、皆がその味に感動する姿を見て、日本のラーメンの可能性を確信。
すぐに日本に戻り、日本のラーメンスクールでトレーニング。その後またボストンに戻り、ビジネススクールとボストンの有名ラーメン店での手伝いを両立する日々を経て、先月ハーバード大の近くに店をオープンした。
店を訪れると、ホールと厨房合わせて10名ほどのスタッフがいたが、それでも「人手が全く足りていない」と言うほどの盛況ぶりだ。
なぜアメリカで日本初のラーメンがブームなのか?
アメリカでラーメンが人気の理由は2つあると考える。
1つは「味」
「ニューヨークでラーメンブームを巻き起こした店」と言われているのが、韓国系アメリカ人 デイビット・チャンが立ち上げた「momofuku noodle Bar(モモフクヌードルバー)」である。
日本で働いていた際に訪れたラーメン店にインスパイアされたデイビッドは、2004年にマンハッタンに「モモフクヌードルバー」をオープン。
ニューヨークにラーメンブームを巻き起こし、インターナショナルマガジン「Esquire」で「21世紀の最も影響力のある人物」に選出されたり、多数のテレビ番組に出演するなど瞬く間に有名シェフになった。
モモフクヌードルバーの人気ラーメン「Garlic Chicken Ramen (ガーリックチキンラーメン)」を食べたが、淡泊な味わいで、日本のラーメンの味とは全く異なったものであった。
アメリカの味付けはとにかく「大雑把」
塩と胡椒でグリルしただけの「ステーキ」、チーズを大量にかけただけの「ピザ」など、「出汁の旨味」を引き出した味付けの料理はほぼ存在しない。
そんな中、旨味を存分に引き出した日本のラーメンの味に、アメリカ人は虜になっているのかもしれない。
2つ目は、「ラーメンから始まる日本食体験ができる」こと。
ニューヨークの「一風堂」も、ボストンの「Bosso Rmaen Tavern」も、ラーメンをメイン料理に置きながらも、おつまみ系メニューが豊富に用意されている。
一風堂では、キュウリのお漬物、Bossoでは、新鮮なシーフードを使った「手巻き寿司」や、アメリカでは珍しい「唐揚げ」などのおつまみ料理が用意されていた。
ラーメンだけでなく、日本の人気おつまみ料理を楽しむことができる。
また、常に満席にも関わらず予約のできない、これらのラーメン店では、入口にバーカウンターが用意されており、席があくまでバーカウンターでお酒とおつまみを楽しむことができる。
Bossoでは日本酒を使ったピンク色のSakuraカクテルなども用意されていて、日本文化を楽しむことができる。
薄暗い雰囲気のカウンター席しかなく、“胃袋を満たすだけ”のラーメンを提供する日本のラーメン店とは異なり、高級感溢れるお洒落な店舗で「ラーメンからはじまる日本食体験」を提供するアメリカのラーメン店は、日本の食文化に関心のあるアメリカ人の心を捉えているのではないだろうか。
文/小松佐保(Foody Style代表)