PCも小さくなり、今や持ち運びすら容易になった。
だが、それはノートPCを指すのではない。ここで言う「PC」とはデスクトップPCの本体だ。
たとえば、CoCo壱番屋のカレーの普通盛りは300g、Nintendo Switch Liteは275g、iPhone 13 Proは173gである。今回レビューする『DINGDIAN S3』のそれは、何と195g。にわかには信じ難いサイズである。
その真偽を確かめるため、筆者はクラウドファンディングGREENFUNDINGに問い合わせて現物をお借りした。
ポーチにも収まるデスクトップPC
一昔前までは、「小さいもの」の比較対象としてよくタバコを用いたものだ。
90年代、携帯電話というものがどんどん小さくなっていった時も製品の横にタバコの箱を並べていた。しかし今はタバコに関するあれこれには厳しい目が向けられるようになった上、そもそも筆者はタバコを吸わない。
というわけで、筆者の自宅に届いた『DINGDIAN S3』の上にマウスを置いてみる。
見よ、この小ささ! 重量は上述の通り195g、片手で握って持ち出せる程度のサイズだ。
いざとなれば、筆者がいつも使っている革製のポーチにも収納することができる。
しかしこの筐体の中にはIntel Pentium SilverN6000と16GBのメモリ、そして最上位機種では1TBのSSDストレージが備わっている。
CPUはまあ及第点といったところだが、RAMとROMがポケットサイズPCにしては恐ろしく強力だ!
さらにBluetooth 5.2に対応し、4K/60Hz出力も可能とのこと。筆者も今までに数多くのポケットサイズPCを見てきたが、その大半は「ただ小さいだけ」の代物だった。
CPU、RAM、ROM共に貧弱で、仕事はおろかプライベートで遊ぶにも難儀するものだ。
しかし『DINGDIAN S3』のカタログデータを見る限り、そのような心配は少ない。というわけで、実際に使ってみよう。
「16GB・1TB」の安心感
筆者の自宅のテレビは、液晶で活路を見出そうとしていた頃のシャープの製品だ。購入から既に15年は経っているはずである。
しかしHDMI端子はついているから、デスクトップPCやNintendo Switchのモニターとして活用することも可能。
『DINGDIAN S3』からの映像も、綺麗に映し出してくれる。
てか、テレビ台の端にそのまま置けるデスクトップPCってのもすごいな……。
今回はこれでいろいろ遊んでみた。いや、遊ぶだけでなくいつもの物書きの仕事もしてみた。正直な感想としては、「CPUの物足りなさ」と「RAMとROMの安心感」だ。
まずは前者から。Pentium SilverN6000は最近ではミドルクラスのChromebookにも使われるようになったものだが、Windows OSの同プロセッサー搭載機種は「事務仕事での利用」がメインになるだろう。
大抵の会社員の場合はOffice、筆者の場合はGoogleドキュメント。もちろん動画再生も割とストレスなくこなせるが、「それ以上」の用途になるともう少し強力なCPUが欲しい。
そして後者。16GB・1TBの組み合わせのポケットサイズPCは、他に並ぶものがないのではないか。
つまり前者の不安を、後者が完全に補っているという具合である。
だからこそ、せめてCoreかRyzenと書いてあるプロセッサーを搭載したバージョンを……と考えてみたが、そうすると今度は発熱問題(と、それに伴う冷却問題)が出てくるのだろう。
それは巡り巡って本体重量に反映されてしまう。「強力過ぎるプロセッサーでは小型軽量を保つのが難しい」ということだ。
そのあたりを考慮すると、Pentium SilverN6000を選んだ開発陣の判断は正解かもしれない。
1TB版に注目!
GREENFUNDINGで資金調達中の『DINGDIAN S3』は、ストレージ毎に3種類用意されている。
128GB、512GB、そして1TBだ。
もしこの製品に出資するとしたら、選ぶべきは間違いなく1TB版だ。
『DINGDIAN S3』は「デスクトップPC」というよりも「Windows OS付きのフラッシュメモリ」という感覚である。
少なくとも、筆者はそう解釈してしまった。
筆者澤田真一は写真撮影もするライターである。2015年の澤田オフィス開業から現在まで撮り溜めた写真は、どこかしらの「引き出し」にしまっておかなければならない。
1TB容量のフラッシュメモリなら、全ての写真を収めてもお釣りが戻ってくるはずだ。
つまり『DINGDIAN S3』は、そのような使い方が最も性に合っているのではないか……ということだ。
ライターでなくても、テレワーク職種の人なら「重要なPDFデータ」を抱えているはず。
なら、それらを全て『DINGDIAN S3』にコピーしてしまおう。
WordやExcel、PowerPointのデータもついでに移植する。いざという時に『DINGDIAN S3』を持ち出し、外出先でそれを活用する……ということもできるだろう。
何しろ、195gだ。所有者の思惑次第でどのような使い方にも対応できる。
テレビの機能を拡張させるガジェットとして、重要データ保存用のフラッシュメモリとして、プレゼン機器として。
『DINGDIAN S3』1TB版は、GREENFUNDINGで6万6,988円(製品1台提供)の出資枠を設けている。
【参考】
スマホサイズのPC!超薄型モバイルパソコン「DINGDIAN S3」
4K/60Hz出力対応・Intel Pentium Silver N6000/16GB RAM/1TB NVMe搭載-GREENFUNDING
取材・文/澤田真一