昔から使われている慣用句が、現代では本来の意味と違った使い方をされていることは意外と多いです。
「浮足立つ」もその1つなのですが、どんな意味で使われる言葉だと思いますか?
ちなみに「楽しみや期待でソワソワして落ち着かない様子」は本来の意味ではありませんよ!
というわけで今回は、本来の意味とは異なる意味で使われがちな慣用句をまとめました。
①浮足立つ(うきあしだつ)
【使われがちな意味】
喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている
【本来の意味】
恐れや不安を感じ、落ち着かずそわそわしている
語感のせいなのか、なんとなく楽しい気分を表していそうな「浮足立つ」という言葉。本来の意味を意外に思った人も多いのでは?
実際に文化庁の調査によると、浮足立つの意味を「喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている」だと思っていた人は全体の60.1%で、20~30 代では73.2%にもなるということ。浮足立つは、「遠足の前の日で浮足立って眠れない」などウキウキした感情を表す時に使われがちですが、これは本来の意味ではないのです。
「浮足」は爪先立ちでかかとが地に着いていない状態のことを指していて、そこから不安や恐怖に駆られて逃げ腰になっている様子を表しているといいます。
②破天荒(はてんこう)
【使われがちな意味】
豪快で大胆な様子
【本来の意味】
だれも成し得なかったことをすること
「破天荒」は中国・宋の時代の故事に由来する言葉で、本来の意味と違った意味で使われることがとても多い慣用句のひとつです。
調査では65.4%の人が「豪華・大胆」という意味だと回答していて、本来の意味を答えた人の割合を全ての年代で上回っているそう。
字面から荒々しく掟破りな人物像を想像してしまいますが、本来はそうではなく、これまで誰もできなかった偉業を達成した時などに使われます。他にも、「未曾有」や「前代未聞」の同義語として「前例がないこと」という意味も持っています。
③敷居が高い(しきいがたかい)
【使われがちな意味】
高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい
【本来の意味】
相手に不義理などをしてしまい、行きにくい
「敷居が高い」も、56.4%の人が本来の意味とは違う意味で覚えている慣用句です。
不義理なことや面目の立たないことをしてしまったためにその人の家に入りにくい(家の敷居が高く感じる)といった状況を表す言葉で、高級さやレベルの高さにひるんで入りにくいというのは本来の意味ではありません。
ただし、現代では単に「自分にとってハードルが高い」という意味で使われることも多くなったため、新しい意味として記載している辞書もあります。
④手をこまねく(てをこまねく)
【使われがちな意味】
準備して待ち構える
【本来の意味】
何もせずに傍観している
「こまねく」は腕や手を胸の前で組むという意味で、もともと「こまぬく」という言葉でした。腕を組むと何もできなくなることから「何もせずに傍観する」といった状態を表すのに使われるようになったということ。
手をこまねくの意味を「準備して待ち構える」だと思っていた人は47.4%で、特に若い年代に多いそう。現代では聞きなれない「こまねく」という言葉の響きが、なんとなく手を色々と動かして準備しているようなイメージをわかせてしまうのかもしれませんね。
ことばの進化
新語や若者言葉が続々と生まれては消えていく現代。昔から存在している言葉であっても、時代と共に違うイメージが根付き、それが新しい意味として認知されることもあるというのは興味深いですよね。
本来の意味と違う意味で使われている場面を見て「誤りだ」と頭から否定するより、由来や最近の使われ方を調査してみると発見があって面白いかもしれませんね。
※出典:文部科学省ホームページ (https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html)
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.