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『天狗になる』という言葉は人を批判するときに使われ、意外に使用する機会が多い言葉です。天狗は実在しない生物なので、どういう状態にある人を例えた言葉なのかよく分からない人もいるでしょう。言葉の意味や使い方などを紹介します。
「天狗になる」の意味と由来
人の態度や振る舞いに対し『天狗になる』と表現する機会があります。良い意味では使われないので、自分が言われたら行いを見直す必要があるでしょう。言葉の意味や由来を紹介します。
思い上がった態度や高慢な様子
『天狗になる』という言葉は、自分は優秀であると自負し『思い上がった態度をとっている人』に対して使用します。普段は謙虚なのに、自分が成果をあげた途端に、人を見下す態度をとる人もいるでしょう。
得意になって自慢げに語っている様子は、周囲に良い印象を与えません。慎ましさや謙虚さを美徳だと感じる人にとっては、理解できない態度でしょう。
良い意味では使用されず、『態度が見苦しいとき』に使われます。もし、周囲から「天狗になっているのでは?」と言われたら、叱られているということなので、態度を改めた方が良いでしょう。
人を戒めるために使われたのが語源
『天狗になる』は、修行を怠り思い上がった僧侶の姿を比喩したのが始まりとされており、転じて天狗そのものが高慢な様子を例える言葉になったといわれています。
天狗は想像上の怪物で、山伏姿に赤い顔、異様に高い鼻を持つとされています。
諸説ありますが、当初は鳥や獣などが天狗に変化すると考えられていたそうです。それが時代の流れとともに、堕落した僧侶も天狗になると考えられるようになりました。
言葉の成り立ちを知ると、『人としての道』を踏み外さないための戒めの言葉としても捉えられます。
ビジネスシーンでも役立つ「天狗になる」の使い方と例文
『天狗になる』は、主に非難や注意をするシーンで使われるので、間違えて使うと人を不快にさせてしまいます。使用例をチェックし、正しい使い方を覚えましょう。
自惚れて見下してくる人に使う
会話の中に度々、『自分や身内を自慢するような言葉』が出てくる人がいます。自慢話を延々と聞かされると、うんざりする人は多いはずです。自分は優れているという態度をひけらかす人に対して、『天狗になる』を使いましょう。
少しくらいの自慢話であれば気にならないでしょうが、口を開けば自慢ばかりという状態では、聞いている方は嫌気がさします。
自己評価がやたらと高いものの、周囲から見れば実はそうでもないと感じられる人は少なくありません。周りの評価や根拠が伴わない状態では、自惚れていると言われても仕方ないでしょう。
一つ成果をあげただけで、ほかの人を見下している様子は周囲からすれば見苦しいでしょう。他人に対してだけでなく、客観的に自分を批判する際にも使えます。
得意になって努力しない人に使う
周囲から高い評価を受けた途端に、努力をしなくなる人に対しても『天狗になる』を使います。
例えば、皆勤賞をもらうために規則正しい生活を送っていたのに、賞をもらった途端に堕落した生活を送るようになり、遅刻が増えた人などに使用しましょう。
評価を受けたからこそ、より自分に対して厳しくしようと考える人もいるので、褒められたからといって全ての人が即座に天狗になるわけではありません。
「褒めると天狗になるから、あまり褒めないようにしよう」と発言する人がいたら、その人が評価を受けたことで慢心し悪い方向へ向かうことを防ぎたいと考えているのです。
態度を叱ったり戒めたりするときの例文
『天狗になる』という言葉を使うときは、悪い態度を叱ったり自分の言動を振り返って戒めたりするときに使うことが一般的です。仲間内でじゃれ合うときに冗談で使うこともありますが、余程仲が良くないと批判だと思われます。
【例文】
- あなたは最近、乱暴な言動が目立つようになった。出世したから、天狗になっているのでは?
- 同世代に比べて、少しくらい収入が多いだけで天狗になるなんて恥ずかしい
- 表彰されたからといって、天狗になってはいけないよ
- 優勝したことで天狗になると、そこで成長が止まってしまう
「天狗になる」の言い換えは?類語表現
自慢げな様子を表す慣用句は多く、それぞれ違ったニュアンスを持っています。シーンに合わせた使い方をするために、『天狗になる』の言い換え表現を見ていきましょう。
鼻高々
『鼻高々』は、自慢をしたくて仕方がない様子や、得意になっている態度を表す言葉です。天狗のように鼻が高くなる様子を例えており、『天狗になる』とほぼ同じ意味で使用できるので、あわせて覚えておきましょう。
また、得意がっている人の勢いを弱めることを、『鼻を折る』といいます。自慢話に対し、矛盾を突いて相手を黙らせたときに「あいつの鼻を折ってやった」と表現するのです。
【例文】
- 優秀な成績を収めた息子を持つ母親は、鼻高々だ
- 国際弁護士になった彼は、鼻高々に出世話をした
得意満面
『得意満面』は、得意げな気持ちが顔中に表れている様子を指して使用します。得意になる気持ちが隠し切れず、嬉しそうな表情になっている人を見たときに使いましょう。
人を見下す意味はなく、誇らしそうな様子や意気揚々とした様子に対して使われます。人から褒められて喜んでいる人を見たときや、何かがうまくいったときの態度を表す際に使用することが一般的です。
【例文】
- 彼女の得意満面な様子を見て、言葉を交わさなくても計画がうまくいったのだと分かった
- 施設の設備を賞賛すると、彼は得意満面で説明を始めた
あなたは大丈夫?「すぐ天狗になる人」の特徴
最後に周囲から「あの人は天狗になっている」と思われやすい傲慢な言動の特徴を解説します。
特にビジネスシーンなど、周囲にこんな態度を取っていないか確認してみてください。
(1)自己中心的な行動
天狗になる人は、自分の意見や感情を最優先し、他人の意見や感情を軽視する傾向があります。
これにより、周囲の人々との関係が疎遠になりがち。また、他人の助言やフィードバックを受け入れることが難しくなり、自分の視点だけで物事を判断してしまいます。
(2)過度な自信と自己評価
さらに、自分の能力や成果を過大評価しがちな傾向も。これは、自分が他人よりも優れていると感じているから。
その結果、他人の努力や功績を軽んじ、自分だけが特別だと思い込みます。このような態度は、周囲からの反感を招くことが多いです。
(3)批判に対する過敏な態度
天狗になる人は、他人からの批判や反対意見を受け入れるのが苦手。だからこそ過剰に反応します。
批判を受けると、自分が攻撃されたと感じ、防御的になったり攻撃的になったりします。
これにより、建設的なフィードバックを受け入れることができず、成長の機会を逃すことがあるでしょう。
構成/編集部