スマートフォンのカメラ性能は年々向上しており、2021年には、デジタルカメラに近い、大型イメージセンサーを搭載した「AQUOS R6」「Xperia Pro-I」といった製品も登場しています。
一方、日本国内で最もユーザーが多い「iPhone」シリーズや、世界シェアNo.1の「Galaxy」シリーズは、AIの力を使って写真の処理を行う「コンピュテーショナルフォトグラフィー」を強化。大型イメージセンサーを使った、リアルな写真と比べ、実際に目で見るよりも鮮やかな写真を収めることに注力しています。
本記事では、新発売の「Galaxy S22 Ultra」と、「iPhone 13 Pro」を使い、写真の撮り比べを行っていきます。双方、比較的強い画像処理が特徴的な端末ですが、画像処理の方向性には違いが見て取れるので、じっくり確認していきましょう。
「Galaxy S22 Ultra」「iPhone 13 Pro」のカメラスペックを確認
まずは簡単に、Galaxy S22 Ultra、iPhone 13 Proのカメラスペックをそれぞれ確認していきましょう。
Galaxy S22 Ultraは、108MP広角、12MP超広角、10MP望遠×2の4眼構成、iPhone 13 Proは12MP広角、12MP超広角、12MP望遠の3眼構成となっています。
Galaxy S22 Ultraは、それぞれ3倍、10倍の光学ズームが可能な2つの望遠レンズを搭載。デジタルズームは最大100倍にまで対応するなど、遠方の撮影にも強い製品です。
一方、iPhone 13 Proは光学ズームこそ3倍までですが、レーザー光を使って、離れた物体との距離を測る「LiDARスキャナ」を活用した、ポートレート撮影などが強み。では、2機種のカメラ性能をじっくり確認していきましょう。
なお、今回紹介する画像は、すべて掲載用にサイズを調整したのみで、色味の補正などは行っていません。
広角カメラ
まずは、カメラアプリを起動してそのまま、広角レンズで撮影した写真です。
画像からもわかる通り、逆光の位置から桜の木を撮影した写真ですが、Galaxy S22 Ultra、iPhone 13 Proのどちらも比較的明るい写真が撮影できているのが特徴。この色味の補正こそが、コンピュテーショナルフォトグラフィーの強みともいえます。
細かい部分を見比べていくと、Galaxy S22 Ultraのほうが比較的明るく、桜のピンクや空の青といった色味を、はっきりと強調した写真に仕上がっていることがわかります。iPhone 13 Proも比較的明るい写真になっていますが、Galaxy S22 Ultraほどではなく、下部に逆光ならではのノイズが入ってしまっているのも気になるところです。
料理の写真を撮影したシーンでは、明確に色補正の違いが感じられます。
Galaxy S22 Ultraは、暖色系の色味を強く補正している印象で、チリソースの赤さを色濃く表現しています。撮影した店内の照明が暖色系の蛍光灯だった影響も受けているかもしれません。
iPhone 13 Proでは、寒色系の色味を強く補正した写真になりました。エビのプリっとした質感をうまく表現しながら、全体的にシャープな色に仕上げられています。
超広角カメラ
続いては、より広い画角での写真が撮影できる、超広角カメラを試していきます。広角カメラとの画角の違いも含めて、見比べていきましょう。
両端末ともに、広い画角でも歪みが少なく、キレイな写真が撮れている印象。色味の補正に関しては、やはりGalaxy S22 Ultraのほうが若干強い印象もありますが、大きな違いではありません。
ポートレート撮影
続いてのポートレート撮影は、人物といった被写体以外の背景を自動的にぼかす撮影方法。被写体を認識するスピードや精度に、AIの力が大きく関わっています。
被写体はお馴染みの渋谷・ハチ公。ご存じの通り、人通りの多い場所ですが、背景をしっかりとぼかし、パキっとした写真が撮影できました。
気になるのは、Galaxy S22 Ultraの場合、色味を補正するあまり、銅像の独特な質感が、キレイになりすぎている印象を受ける点。iPhone 13 Proのほうが、銅像ならではのゴツゴツとした質感がうまく表現できています。
ズーム撮影
ズーム撮影はGalaxy S22 Ultraが光学3倍、10倍に対応。iPhone 13 Proは光学3倍対応となっています。
ここでも、暖色系に鮮やかな色補正をかけるGalaxy S22 Ultraと、比較的寒色よりにパキっと色補正をかけるiPhone 13 Proの色味の違いがよくわかります。花びらのピンクはもちろん、葉っぱの発色から顕著な違いが見れますね。
等倍、3倍ズームはいずれも鮮やかな写真になっていますが、10倍ズームではやはり、明らかな違いが出ています。光学ズームとデジタルズームを比較しているので当然ではありますが、Galaxy S22 Ultraのほうが、輪郭が鮮明に写し出せています。
とはいえ、iPhone 13 Proのデジタルズームも、ここまできれいな写真が撮れれば十分と感じる人は多いはず。コンピュテーショナルフォトグラフィーの力をひしひしと感じる結果となりました。
ナイト(夜景)モード
最後はナイトモードで撮影した写真を比較していきましょう。
これまでの写真と違い、iPhone 13 Proが温かい光をたっぷりと取り込んだ、暖色系の写真になったのに対し、Galaxy S22 Ultraでは、街灯の白い光を取り込み、そのまま明るく仕上げている印象に。
いずれも深夜0時付近に、周囲には街灯以外の明かりがない状態で撮影した写真です。両端末ともに、これだけ明るく鮮明な写真が撮影できるとは、驚きです。
「Galaxy S22 Ultra」「iPhone 13 Pro」から見るスマートフォンカメラの進化
Galaxy S22 Ultra、iPhone 13 Proでは、それぞれチューニングの方向性に違いこそ見られるものの、AIの力を使って、被写体を鮮明に収めることができます。特に逆光のシーンやナイトモードでは、実際に目で見るよりも鮮やかな写真が撮影できているともいえるでしょう。
両端末とも、使っていて特に感心するのが、これらの写真がとにかく簡単に撮影できる点。今回掲載している写真もすべて、レンズの切り替えやズームといった簡単な操作のみで撮影できています。フォーカス速度やシャッタースピードも、ストレスに感じるシーンはありませんでした。この手軽さこそが、スマートフォンカメラ最大の強みかもしれません。
カメラを趣味・仕事にしている人からすれば、まだまだな部分もあるのかもしれませんが、筆者のようにカメラ初心者で、難しい設定はわからないというユーザーにとっては、スマートフォンこそ、何よりも簡単で映える写真が撮れるデバイスかもしれません。
取材・文/佐藤文彦